第22話
困ったのう……ひじょーに困った…。)
レイルが鍛錬を開始して半年が経った。
鍛錬自体は問題なく進んでいたのだが……
今龍弦は悩んでいた。
このまま修行漬けの生活をしていると、
いざ街中に出る時、世間への常識の無さが露見してしまう。
レイルはまだ6歳を迎えたばかりだった。
この世界で言うと小学生1年生になる年だ。
それはつまり、義務教育をどうするかと言う事だった。
この世界の一般常識も教えなければならない。
悩みに悩み、困った末に龍弦は一つの答えを導き出し唐突に走り出した……
「千夜さんやぁぁい!たすけておくれぇぇー!!」
千夜はいつもの如く、リビングでお茶を飲みながら寛いでいた。
「どうしたんですか?あなた…?」
そう!困った時の千夜だった。
龍弦が「実は…斯々然々(かくかくしかじか)
でのう…」と言うと、
千夜は呆れた目で
「あなた…レイルちゃんが来てから半年も経っているんですよ?何故今頃になって言うのですか!」
「じゃ、じゃって…レイルの鍛錬が楽しくてつい忘れてたんじゃもん…」
「じゃっても、じゃもんもありません!
貴方って人はホント、武術以外からっきしでダメダメなんですから。
……はぁっ、レイルちゃんの一般教養や教養は私も考えていました。」
龍弦は千夜に任せて良かったと思った。
千夜に任せれば万事解決してくれるだろうと
「…しかし!小学校に行かせようにも、
この世界の常識もなく、
何故か少しずつ貴方に似て来てるので
今はまだ行かせられません!
ですので、取り敢えず近くの小学校には名前だけ在籍させて、中学の歳になるまでは私が教えます!
小学校に在籍させる手続きは既に終わらせてますので。」
「…え?えぇ?やる事早くないかの?
それに千夜さんや…大丈夫なのかの?」
それを聞いた千夜が龍弦に向かってキッ!と睨み付けた。
「貴方が不甲斐ないからでしょ?
それに、私は一応教員免許も持ってますので心配ありませんよ。
無理なら最高の家庭教師でも雇います!」
「そ、そうですか…なのじゃ。
……お茶入りますかのう?」
龍弦はシュンっとなりながら、
千夜のご機嫌を伺う羽目になったのだった。
その日の夜の食事中
料亭に出てくる様な懐石料理にレイルは舌鼓を打ちながら
「千夜さん、いつも美味しいご飯を作ってくれてありがとうございます!口の中が蕩けそうです!」
「ふふっ。そんなに褒めても何も出ないですよ。
まだまだあるからたんとお食べなさい。
……それからね、レイルちゃん、貴方にお話をしないといけない事があるの。
ご飯を食べ終わってからで良いから聞いてくれるかしら?」
千夜さんから話なんて珍しく何だろう?と思いながらも返事をする。
「はい、わかりました!」
食事後、千夜から話が切り出された。
「あのね、レイルちゃん。
レイルちゃんは今年6歳よね?」
「はい、そうですけど、どうかしたんですか?」
「えっとね、この世界…つまり地球、ここ日本ではね、7歳になったら小学校と言う教育機関に行かないと行けないのね。
…本来ならレイルちゃんも小学校に行かせないと行けないんだけど、
貴方はこの世界の常識をまだ知らないでしょ?
このまま貴方を行かせてしまうと色々不味いことが起こりかねないのよ。」
レイルはそう言われると、
確かに日本の事やこの世界の事は
何一つわからないままだったと思い出した。
「…はい、このまま学校に行けば確かに周りから浮いちゃうかも知れないです…」
「と、言う事で、レイルちゃんには小学校に在籍だけして貰って、家庭教師を付けようと思いますっ!
そして……なんと!
家庭教師はこの千夜婆ですよ!」
「え?えぇ!?
千夜さんが教えてくれるんですか!?」
「そうですよ?
こう見えて教えるのは上手ですよ?
世界情勢から一般教養…、学校の履修課程や日本のサブカルチャーまで全て網羅してますからね!
朝9時から昼3時までお勉強で、
夜から武術の鍛錬をして貰います。
頑張るのですよ?」
(……ハハハハ。
千夜さんって結構厳しかったんだ。)
結構ハードなスケジュールに頬が引き攣っている
レイルを尻目に千夜はやる気に満ち溢れているのだった。
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