第26話


龍弦が海外出張に出て2日、今日はダンジョンに初めて入る日。レイルは緊張していた。


(どうしよう!ドキドキして来た!やばい!

初のダンジョン!)


そして玄関先には、

楓が仁王立ちで今か今かと待ち構えていた。


「レイル!遅いよ!早くしないと先にダンジョン行っちゃうよー?」


「ま、待ってよ!僕にも色々と用意があるんだよ?」



そう言ってレイルの背中には、

これでもかと言うくらいでパンパンに膨らんだリュックが背負われていた。


これには楓も呆れた目で


「あのねぇ…レイル?そんなに荷物を持ってどうするつもりなの?」


「だってモンスターが跳梁跋扈するあのダンジョンだよ?

何があるか分からないじゃないか!

罠だって縦横無尽に張り巡らされてるかもしれないし、これぐらいは用心しないと!!」


「……今日は別に泊まりがけで行くわけじゃないのよ?

それにレイルは最初だから二層までしか降りないの!

罠もないし、モンスターも雑魚しか居ないわよ!」



「…え?ミノタウロスやリザードマンみたいなモンスターと命を賭けた戦いとかは?」


「ありません。」



「壁のボタンを間違って押して罠が発動して

危機一髪は?」


「ありません。」


「色々あってボスに挑んだら死にかけて覚醒とかは??」


「…ボスは10階層ごとでしか出てこないわよ!

って言うか、レイルはアニメの見過ぎ!

そんな都合よく覚醒するわけないでしょ!もうっ!」


「僕がアニメ見てるのなんでバレたの?!」


「誰でもわかるわよ!良いから行くわよ!」


「…わかったよ!はぁ…。…よぉーし!行くぞー!」





高尾山中腹にある祠に龍弦が個人保有しているダンジョンがあった。


「おーっ!なんか凄いね!

こう、なんか神聖な雰囲気が凄いするね…

…あの鳥居の所が入り口??」



「そうよ。本来なら神社があったんだけど、

ここにダンジョンが出来きて無くなってしまったのよ。

この高尾山には龍脈があってね、

ダンジョンは基本的に龍脈の付近に出来るらしいわ。」


「へぇー、そうだったんだ。初めて知ったよ。」


「…さっ、そろそろ行きましょう。」


2人はダンジョンの中に入っていくのだった。



      一階層


薄暗く巨大な鍾乳洞のような洞窟が目の前に広がっていた。



「ここはスライムやホーンラビットとかのモンスターが出るわ。

…ほら、早速スライムが来たわよ?

大丈夫?出来そう?」



「大丈夫だよ!鍛錬の成果を見せるからそこで見ててね!」


レイルは意気揚々とスライムに向かっていき、

ポケットから紙を取り出した。



「…陰陽術、刀符、解っ!」


紙を持っていたその手にはいつの間にか一振りの刀が握られていた。


スライムは知能があるのかないのか、その場でポヨンポヨンと跳ねているだけだった。



「来ないなら試すにはちょうどいいかな、

とりあえず一撃入れてみようか!

摩利支天流…刀術一ノ型、剛力一刀!」



レイルが上段から刀を振り落とすと風が巻き起こり、目の前のスライムが魔石ごと消し飛んでいた。



楓は目の前で起きた事が信じられず少しの間唖然としていた。

そして心中でちょうどここには居ない、

海外に居るであろう龍弦に叫んでいた。


(…ちょ、ちょっと龍弦老師!!!

なんて化け物育ててるんですか!

基本の型であの威力はあり得ないでしょ!?)



「楓!!どうだった??上手く出来たかな?

ちょっと緊張して力んじゃった…。」



楓は平静を装いながらツッコんだ。


「あのね、スライムを倒したのは良いけど、魔石ごと消し飛ばしたりしたらダメでしょ!

魔石は売れるのよ?

魔石が残るようにちゃんと手加減しなさい。」



「うぅ。…はぁーい、そういえば魔石は売れるんだった。気をつけるよ…」



「とりあえず、この階層では手加減を覚える事!

それが出来たら次に進むわよ?」



「わかったよー…手加減かぁ、、、

頑張ろ。……はぁっ」



レイルはスライムの核を消し飛ばさないように狩りまくるのだった。

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