第15話
日本 東京都 高尾山龍雲寺
源邸
寺院の朝は早かった。
まず龍弦の挨拶から始まり、坊主達が寺全体の掃除、道場、庭園の掃除が始まる。
そんな日常の音が聞こえて来てレイルは起きた。
「ん、んんっー……、あれ…?ここは……そうか、僕異世界に転移して来たんだった。」
窓を眺めていると部屋の襖が開く。
「おお、レイルや、起きておったか。
身体の調子はどうじゃ?どこも痛くないかの?
昨日はボロボロだったからのう」
「はい、ありがとうございます。
すっかり元気になりました。お爺さんのおかげです。」
レイルは身なりを正し、龍弦に向かって深々とお辞儀し、感謝を伝えた。
「そんな畏まらんで良い良い。
儂の事は…そうじゃの!龍弦爺ちゃんでも、弦爺でも好きに呼んどくれ。その方がお主も楽じゃろ?」
いきなり好きに呼べと言われたレイルは困り、やんわりと断ろうと思い
「あ、いや、でもそんな失礼な事「あぁ、いい!
いい!儂が良いと言っておるんじゃ!
そんな事気にするでない!」
……わかりました。……弦爺?」
龍弦に押し切られるのだった。
「そうじゃ、それでよいよい。
それでじゃ……レイルよ、お主これからどうするつもりじゃ?行く当ても無いんじゃろ?」
少し考えた結果、元々死ぬつもりだったし、元の世界には戻りたく無いと…むしろ憎悪に近い感情を抱いているのに気付き、思いを正直に伝える。
「……はい。行く当てはありません。それに今は元の場所に戻りたいと思えないです。」
「そうか……ならここに住んでみるかの?」
「え?い、良いのですか??
どこの誰かもわからない僕をそんな簡単に…」
「良いんじゃよ!それにお主はこの世界の事はまだ何も知らないんじゃろ?
こーんな、小さい坊主を1人にさせる訳ないのじゃろう!
幸い我が家にも色んな教材もあるでな、勉強すると良い。」
レイルはこんなに優しくされた記憶が母とナナリーだけで他は殆どなく、
人の温かさを忘れかけていた
そして、その温もりを感じ涙が溢れていた。
「……ぐすっ、ぐすっ…あ、ありがどゔごじゃ、ございまずっ、」
「ふははっ。レイルや、そう簡単に泣くでない。
立派なおのこになれぬぞ?
しかし、そうなってくると戸籍が必要じゃな……
ど、う、す、る、か……うーむ。
…………よし!レイルや!儂の養子にならんか?
儂には婆さんの他に家族は居らんしの。」
「…ぐすっ、…養子ですか??でも、良いんですか?会って間もないし、弦爺の事も全然知らないし…」
「かまわんよ。
いつ元の世界に戻れるかわからんし、戻ろうとも思っておらんのじゃろ?
それに何をするにも戸籍は必要じゃしの!
すぐに用意するからの!少々待っておれー!」
「あ、あの…弦爺どこに!…………行ってしまった。」
龍弦はレイルの返事も聞かずに走り去っていった。
「僕…どうしてたら良いの?
んー、…せっかくだからこの敷地を見て回ろうかな?興味のある建物がいっぱいだし。」
レイルは龍弦が帰ってくるまでの間、色々見ようと思った。
………
……
…
「へぇぇぇー、うぉぉぉー!ここが道場かぁー!
凄いなぁ、、うわっ!見た事ない武器がいっぱい立てかけてある!これどうやって使うんだろ?」
レイルが見知らぬ異世界の武器に目を輝かせていると背後から不意に声がかかる。
「あら?貴方どこから入って来たの?
侵入者って訳じゃなさそうだし、迷子?お母さんとお父さんは?」
そこには黒髪のポニーテールで袴を着たレイルよりも少し歳上の女の子が居た。
「え?あ、すいません。弦爺…いえ、龍弦さんに待ってろと言われたのですが、
興味があってちょっと見て回ってました。」
これが柊木 楓との出会いであった。
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