第34話


「うぅ…ここは……僕の部屋?」


目を覚ますとレイルは自分の部屋のベットに運ばれていた。


(あぁ、そっか…弦爺から一本取れなかったかぁ。

最後の一撃…届いたと思ったんだけどなぁ。

僕の眼でも見えなかったし。)


「おっ!気付いたか!

千夜さんや!レイルが目を覚ましたぞー!」


「はいはい、そんな大声出さなくても聞こえてますよ。大丈夫?レイルちゃん気分はどう?」


「うん。大丈夫だよ。千夜さん。

弦爺…どうだったかな?

僕、弦爺にちょっとでも近づけてるかな?」


「そうじゃのう、正直儂の予想を超えておったぞ。

特に闘気の質が変化したのはなんじゃ?

蒼い闘気は儂も似たような事が出来るからの、

何となくわかるんじゃが、銀の闘気…

アレは全く分からなかったわい。」


「…え?!弦爺も魔闘気が出来るの?

アレは魔力が必要なんだよ?

あと、銀の闘気は実は僕もよく分かってないんだ。

弦爺も僕に魔力と闘気があるのは知ってると思うけど、何故かもう一つ知らない力があってそれを

魔闘気と融合させたんだよ。出来るかどうかは賭けだったけど…」



「まぁ、正確には儂が扱うのは魔力と闘気の融合ではないんじゃよ。

儂が出来るのは闘気と陰陽術で使う霊気の融合…

仙気じゃよ。

これは気を扱う者の終着点とも言えるの。

それにしても知らない力か…

どれ、、、その力を見せてもらう事は出来るかの?」



「うん、大丈夫。でもあんまり長く出せないからね?」


「よいよい、儂もその力には興味があるでの。」


「わかった。じゃあ、出すね。」


そう言うとレイルは謎の力の源を掌から球体の様に出した。

その瞬間、龍弦はえも知れぬ悪寒に囚われ思わず身構えてしまった。

その力の根源に身に覚えがあった。

そして、自分の勘が正ければ、

決して人の身で宿せる代物では無いと感じ、

レイルに力の正体を伝える。


「……レイルや、心して聞きなさい。

その力はの…儂の間違いではなければ、

混沌と秩序…破壊と創造…万物を司る神の力によく似ておる…規模は月とスッポンじゃがの。」


レイルはいきなり神の力と言われて動揺していた。


「……え?え!? 

神?な、なんで?

あっ!わかった!いつもの冗談なんでしょ?」


そう言うが、龍弦の目は真剣そのものだった。


「…ほ、ほんとに?

僕の両親はただの人だよ?」


「…一度だけじゃが…

ダンジョンが出来て儂が初めての攻略者として、

若い頃に神に遇った事があるのじゃ。

レイルが今見せたその力…

あの時に感じた神の力の奔流そのものじゃった。

…儂の予想なんじゃが、

おそらくレイルの家系の誰かが、

神の系譜に連なる者ではないかと思うとる。

無論、正体は隠しておるんじゃろうがの…」


「…僕の一族にそんな人が居たんだ…」


「まぁ…あくまで、推測じゃがの。

何にせよ、その力…

そうじゃの、神気は鍛えた方が良いじゃろう。

今のままでは満足に力の行使も出来てないでの。

……ところで、千夜さん…?

何故ずっと黙っておるのじゃ?」


何も喋らずに、

龍弦の横に居た千夜の事がふと気になり、

顔を覗き込むと目が虚になっており明らかに意識がなかった。


「こりゃしまった!レイルの神気に当てられて意識が混濁しとる!

千夜さんの事をすっかり忘れてしまってたわい!

おい!千夜さん!しっかりするんじゃ!

……これは…意識が戻った時が怖いのう。

また怒られるわい…。」


千夜に怒られる事を想像した2人は、

だらだらと額から冷や汗を流し、何とか怒られないように画策する。


「レ、レイル…千夜さんは、

いつの間にか眠っていた…。そうじゃな?!

決して千夜さんの存在を忘れ、

無作為に力を見せろと言ってない…

そう言う事するんじゃ!」


「う、うん……わかったよ。


って言いたいんだけど、…弦爺…うしろ…。」



そこには鬼がいた。

それもとびきりに怒り狂った鬼だった。


「あ〜な〜た〜?今のはどういう事ですか?

いつの間にか眠ってた?

存在を忘れていた?

あまつさえそれを誤魔化そうとした?

…これはお仕置きですね。


それとレイルちゃん…貴方もですよ?

力の制御もまだ出来ていないのに、

こんなジジイに

言われるがまま力を出してはいけません!

わかりましたか?」


レイルは千夜のあまりの剣幕にビビりまくっていた。


「は、はい、ごめんなさい。

今度からは気を付けます…。」


「よろしい。レイルちゃんは物分かりの良い子で

千夜は嬉しいですよ。


さて、龍弦…貴方はこちらに来なさい!

貴方って人はいつもいつも!!」


「い、痛いっ!痛い!千夜さん!痛いのじゃ!

ごめんなさいなのじゃぁー!」


千夜は龍弦の耳を引っ張り、説教をしながら家に帰るのだった。

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