第35話
レイルが神力を発現させてから、
ある程度のコントロールが
出来るまで約1年ほど経ったある日、
いつもの様に地下シェルターで座禅を組みながら
魔闘気と神力の融合に勤しんでいた。
1年間、この力の融合ー発現ー維持には途方もなく苦労した。
それもその筈、
唯でさえ繊細な気のコントロールを必要とする
闘気を魔力と混ぜ合わせて使う魔闘気に
神の力を更に融合するなど本来不可能に近かった。
しかし、レイルの天賦の才と類い稀なる努力のお陰で何とか形になる様になって来た。
周囲の大気は軋みを上げ、レイルの身体を纏う様に銀のオーラがバチッと鳴り、
その衝撃で浮き上がった小石が
オーラにぶつかっては消滅していく。
レイルの額には玉のような汗が流れていた。
そうする事、約1時間…
限界が来たのかオーラが次第に消えていく。
「ふうっ。やっと1時間かぁ…
まだまだ神装闘衣の持続時間が短いなぁ。
動きながらだと10分が限界だし、身体の負担が半端ないから無茶は出来ないし…」
そう1人で休憩しながらブツブツ呟いていると、
突然目の前が真っ暗になり、背後から声が掛かる。
「だーれだっ?」
「………楓でしょ?
って言うかこんな事するの楓しか居ないし!
ホント、楓って気配消すの上手だよね?
僕の感知が一切反応しなかったし…」
そう言うと、楓は目をパチクリさせて首を傾げる。
出会ってから約5年、
楓は16歳になっており、身長も伸び、
出る所は出ており、所謂モデル体型になっていた。
レイルはその姿にドキドキさせられるのだった。
「むうっ…!レイルをびっくりさせようと日々、
隠密に磨きを掛けてるのに!」
「あのね、楓?
その間違った方向の努力…やめよう?
盛大な才能の無駄遣いだし。
薙刀を振り回す暗殺者にでもなるつもりなの?」
「ふん!別に間違ってないもん!
ちゃんと千夜師匠から教えて貰ってるから
意味はあるのよ!
それにこれをマスターすれば、
飛躍的に強くなれるって言われたし!」
「そ、そうなんだ…。」
(楓ってどこまで強くなるつもりなんだろう?
このまま行くと、
いずれ千夜さんみたいになるのかな?)
レイルが楓の将来を想像していると楓からダンジョンに誘われた。
「ねぇ、レイル!久しぶりにダンジョンに行ってみない?」
「え?なんで??」
「良いじゃない!
デートよ!デート!ダンジョンデート!
それとも何?私とじゃ嫌なの?」
一瞬、楓の背後に般若が現れ慌てて頷く。
「いえっ!嫌ではありません!
こ、光栄であります!」
「ふふ、よろしいっ!
じゃあ、用意をして出発よ!
1時間後にダンジョン前に集合ね!
…遅れたら承知しないわよ?」
「は、はいぃぃ!
では、用意して参りますっ!」
そう言うとレイルはダッシュで用意をしに行くのだった。
それを楓は顔を赤らめながら見送った。
「…勢いでデートとか言っちゃった…
あぁ〜っ!ちょー恥ずかしいっ!
でもレイルってば、全然気付かないし…
ホント鈍感なんだから!」
そう、楓はいつの間にかレイルの事を好きになっていた。
キッカケは幾らでもあった。
初めて会った日から綺麗な顔立ちをしていると思っていたし、鈍感だけど真面目で純粋。
家族や周りにいつも笑顔でとても優しい。
それでいて、ふとした時に見せる
瞳の奥にある確かな闇…。
そのギャップに楓はやられていた。
「今は可愛いけど、あと2、3年もすればレイルは
すっごいイケメンになるんだろうなぁ…
…頑張って落とさないと!
幸い、千夜師匠には許可をもらってるしねーっ!
…それに……負けないから。」
楓にはまだ見ぬライバルがいる事を知っていた。
鍛錬終わりに疲れて眠っていたレイルが
寝言を呟いていたのだ。
「ナナリー、待ってて」と。
楓は顔も知らないライバルに密かな闘志を燃やすのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます