第13話

ドンドンドンドンッ!

2階の書斎に扉を叩く音が響き渡る


「お父様!いらっしゃいますか!?

至急お聞きしたい事がありますのっ!!

開けますわよ!」



ナナリーは半ば強引に扉を開ける。


そこには驚いた顔をしたダグラスが居た。


「なんだ、ナナリーか、びっくりしたぞ?

家では良いが外に出る時はもっとお淑やかにだなぁ…「そんな事今はどうでも良いですわ!レイルが死んだと聞きました!いったいどういう事ですの!?」




「……どこでその話を聞いたんだ?」


「使用人の休憩室からメイド達の話し声が聞こえて来ましたの……その話にレイルが死んだと出ていましたの…」



ダグラスはレイルの事は知っていたが、

ナナリーには知らせずにいた。知らない方が幸せという事もあるのだ。

しかし、ここまで来れば時間の問題だったので

悩んだ末に、ナナリーに尋ねた。


「人の口に戸は立てられんという事か……

…これから話す事はナナリーにとって辛い事になるかもしれん。

……それでも聞くか?」



その言葉にナナリーは酷くショックを受けた。

涙が出るのを必死に堪えながら答えた。


「……はい、、教えて下さいまし。」




「……最初は貴族同士の噂話から耳に入った。

リッツオール家の三男がグランシェルトの森に1人入って事故死したと…

その時、俺は我が家の子飼いの調査隊を使ってレイルの身辺調査、そして行方も捜査した。

その結果、確かにあの子はグランシェルトの森に入って行った。そして未だ戻って来ていない。

リッツオール伯爵は事故死という事にして、自殺を隠したがっているがな。

これは貴族としての面子、周りの貴族への体裁だな。まったく愚かな…」


その時ナナリーが涙を流しながらフッと眼から光が消えた。

そして倒れ込むように気絶したのだ。


それに気付いたダグラスは机から飛び出し、ナナリーを受け止める。



「っ!ナナリーっ!くそっ!

やはりまだ早かったか!ナナリー!大丈夫か!?

返事をしなさい!」



「誰か!誰かいないか!?」




ナナリーはショックのあまり2日間、目を覚さなかった。





「……うっ…ん、レ、イル、いかないで、、、」


ナナリーが目を覚ました。


「………ここは?どうしてベットに?

確かわたくしはお父様に………。っ?!

いやぁぁぁぁぁっ!どうして!?レイル!レイルーー!!」


叫び声が聞こえた瞬間、扉が勢いよく開く


バタンッ!

「ナナリー!大丈夫か!?しっかりしなさい!

気をしっかり保つんだ!」


「いやぁ、いやぁぁぁぁぁぁーっ!!」


そしてまたナナリーは気を失った。


ダグラスはナナリーにレイルの死を伝えた事を後悔していた。


(クソっ!レイルめっ!お前は天才なのだろう!?

なぜ死などと安易な道を選んだっ!

ナナリーの心を傷つけおって!

生きておるなら早く戻って来い!俺も死んだなどとふざけた事、信じておらんからな!)


この日からナナリーから笑顔が消え、毎日夜になると部屋から啜り泣く声が聞こえるようになった。



この事態に困り果てたダグラスは妻のアメリアに相談した。


「……アメリアよ、俺はどうすれば良い?どうすれば良かったのだろうか?

早くあの子に笑顔が戻るようにしたいのだが、一向に良くならん。」


「あなた……私もナナリーに話をしたのですが、

レイル君の存在があまりに大きすぎたようです。

あの子の心の傷を癒すには、よほどの事がないと難しいようですね。

時間がナナリーを癒すのを待つしかありません。」


「やはりそうなるか……」





この日の晩もナナリーは1人部屋でレイルの事を想いながら泣いていた。



「…ぐすっ……ぐすっ……

レイル…どこに行ってしまったの?本当に死んでしまったの?わたくしレイルが居ない生活なんて考えられませんのよ?

戻って、戻ってきてよ!レイル……」



その時、寝室の窓の向かいにある樹の枝に人影があるのに気が付いた。


「……だれっ!?」


音もなく自動的に窓が開かれる、そして急な突風にナナリーは目を瞑ってしまった。

目を開けると、額縁に見知った人物が座っていた。



「こんばんわ、ナナリー様。こんな夜更けに

ごめんなさいね。」



「あ、貴方はミザリー義母様!?どうして!?

失踪したと聞いてましたのに…」



そこにはナナリーの想い人レイルの母、ミザリーが居た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る