第4話

リッツオール家応接間


「レイル、お前は何故あれほどの魔力を持ちながら初級魔法しか使えんのだ!それではただの宝の持ち腐れではないかっ!」


グランの声が部屋中に響き渡る。


レイルは悲痛な顔で


「申し訳ありません父上…ですが!勉強して魔法が使えない分を補いますのでどうか考え直して頂けませんかっ!?」


グランはこめかみに手を当て「はぁ…」とため息をつきながら


「先ほど、リンドブルム公爵様からお前の婚約は白紙にする事を告げられた。そして、このままいけばお前の兄、ロイドとエルのどちらかがナナリー様の婚約者という事なる。もはやレイルお前でなくても良くなったのだ。」


(そ、そんなっ!やっぱり僕が魔法を使えないからなのか…)


レイルが絶望に打ちひしがれている間にグランが更に


「もうよい。お前にはほとほと愛想が尽きた。これからは何も期待ないでおく。

ただ成人する16歳迄は面倒を見てやるからそこからは好きに生きるが良い。どちらにせよ三男は家を出なければならんからな。」


「そして、これからはリッツオールを名乗ってはならんぞ!魔法の名門リッツオール家から初級魔法しか使えん落ちこぼれが居ると知られれば他の貴族どもに何を言われるか……」


グランのその蔑んだ目を見た瞬間レイルの心が軋んで行くのが自分で分かった。

そして涙がポロポロと出て来るのを必死で止めようと下を俯きながら唇を血が滲むまで噛み締め


「……わ、わかりました…それでは失礼致します。」


と、この一言を振り絞って言うのが精一杯だった。




ギィッ。バタンッ。応接間の扉が閉まりレイルは1人自分の部屋までの廊下を歩いて行く。

その足取りは鉛のように重く、頭がフラフラし、ボーッと、そして不意に涙が止まらなくなった。


(…うぅっ!なんで、なんで僕は魔法が使えないんだ!こんなに勉強して、家にある魔導書は全て覚え構築出来るのに幾らやっても発動しない…。

兄上達は僕の歳の頃には中級以上使えたというのに…)


そんな事を考えながら歩いて居ると自室の前にロイドとエルが居た。


「よぉ、落ちこぼれの弟よ!」

「ちょっと兄さん正直すぎだよ?もうちょっと包んで言わないと!ねぇ?レイル?」


「あ、兄上、どうしてこちらに?」


レアルが戸惑いながら訊ねるとロイドが


「あぁ、落ちこぼれのレイルとナナリー様との婚約破棄を聞かされてな!そして新たに俺たち2人が婚約者候補になったから哀れな弟を励ましに来てやったんだよっ」


「ぷふっ!だからロイド兄さん正直すぎ!お腹痛いよ!」


「おぉ!すまないな!俺たちにもこんなチャンスが回って来たんだ!少し興奮してしまってな?」


それを聞いたレイルは悔しそうな顔で


「そうですか、態々ありがとう御座います。お気持ちはありがたく受け取っておきます。では、失礼します…」


レイルは自室にスッと入っていった。

それを見た兄2人はというと


「おい、エルあの顔見たかよ?悔しそうだったな!」


「そうだねぇ、ロイド兄さん。僕笑いが堪えられなかったよ!」


「だな!レイルが生まれてからこれまでずっとアイツばっかり優遇されて、おまけに公爵家令嬢の婚約者だせ?アイツが初級魔法しか使えないって分かった時の嬉しさったらなかったぜ!ざまぁねぇな!」


「だね!でも婚約者は1人だけ…ロイド兄さん負けないよ??」


「あぁ?こっちこそ負けるかよ!ナナリー様は、いや、ナナリーは俺のもんだ!」


2人は公爵家令嬢を手に入れる為に闘志を燃やすのだった。

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