第32話

レイルは龍弦と共に道場に来ていた。


「弦爺ーっ!そんなゆっくり歩いてないで、

早く来てよー!

特訓の成果を早く見せたいんだっ!」


久しぶりに帰って来た龍弦は仔犬のように走り回るレイルにホッコリしていた。

そして、2週間前とは明らかに違う気配に

期待を膨らませていた。


(こりゃあ、楽しみじゃのう!)


「…レイルや。今からお主の成長を見せてもらうわけじゃが…ここではちと狭いでの。

場所を移動しよう。ついて来なさい。」



龍弦は上座まで向かいそこで立ち止まると、

横にある掛け軸に手を伸ばし裏のボタンを

カコッと押した。

すると、道場全体にカコカコカコカコカコと

何かが回る音が聞こえて来た。

そして、掛け軸の下の床が開いていき

下に続く階段が現れた。


「この下にはエレベーターがあっての。

地下シェルターがあるのじゃよ!

どうじゃ?

びっくりしたかの?

そして、そこは儂の戦闘に耐えれる構造にしてあるんじゃ!

じゃから、レイルも思う存分力を出すとよいぞ!」


「本当に?!凄いっ!

エレベーターってあれでしょ?

あの機械の箱で上り下りする乗り物でしょ?!

初めて見るなぁ!

それに試したい事がいっぱいあったんだよ!

道場じゃどうしても建物が壊れちゃう気がして、

出来なかったんだ。」


「よいよい。レイルとの試合は久々じゃからな!

全力を出し切るのじゃぞ!

…では参ろうか!」




      道場地下シェルター


「うわぁ!すごく広いね!

地下があったのも驚いたけど広さもびっくりだよ!」


「ほっほっ。

広さ的にはうちの敷地の半分くらいかの?

まぁ、もしもの時の備えじゃよ。

それよりも…準備は出来たかの?」



「うん!大丈夫だよっ!絶対弦爺を驚かせるよ!」



そして、レイルが戦闘態勢に入った瞬間…

雰囲気がガラリと変わる。


(ほう。これはこれは…

なんと静かな気の流れじゃ。

「男子3日会わざれば刮目してみよ」

とは良く言ったものじゃな。)



「まずは、闘気解放っと。弦爺…行くよ?」


レイルが地面を踏み締めた刹那、

その姿が掻き消えた。


(なんと!瞬歩が出来る様になったか!)


龍弦が驚いていると、

何処からともなく頭部に鋭い蹴りが飛んでくる。


それを事もなげに、いなしていく。


「ほっほ!なんの!」


「あー、やっぱり当たんないか!なら次っ!」


レイルは瞬歩を使い龍弦に接近する。

そして、レイルが2人に分かれた。


「ほっ!それも出来るか!まぁ当然じゃな!

しかし、甘い!」


同じく龍弦も2人に分かれてレイルの攻撃を防いでしまう。


「むう!弦爺ズルい!

同じ技されたら勝てないじゃん!」


「そこはほれ、知恵を絞ってなんとかするのも

武術家じゃよ。」


「くそーっ!なら!フィジカルアップ!!」


レイルは最近出来るようになった詠唱破棄を使っていく。

そして先程の瞬歩よりも1段階速度を上げた。


「…魔法を使っての身体能力の底上げか…

速さは申し分ないが、

動きが単調であくびが出るわい。」


「くっ!これなら!双狼脚!」


左右同時の蹴りが上下に打ち分けて龍弦に迫る。

決まったと思った瞬間、

ガンッと岩を蹴ったような衝撃が伝わってくる。


「〜っ!痛ってぇー!弦爺硬すぎ!

何しれっと金剛を使ってるのさ!」


「流石に能力を底上げされた蹴りは

輪ゴムのパッチンくらいには痛いからのう。」


「くそぉー!

僕の蹴りはゴムパッチンじゃないやい!」


その後何度も工夫を凝らし仕掛けていくが、

悉く弾かれ流される。


(やっぱり弦爺の知ってる技じゃ絶対当たんない!

まだちゃんと扱えるか分からないけど、

アレを使うしかないか…)



レイルはこのままじゃ一本取るどころか当てるのも難しいと思い、今出来る最高の技を出そうと決めたのだった。

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