第11話


龍弦は非常に困っていた。

何に困っているかと言うと目の前に居る子供が明らかに日本人ではないからだった。


銀髪で瞳の色は右が銀、左が金の、

オッドアイの不思議な雰囲気のする外国人の

この少年にどう声を掛ければいいか分からず、

暫く動けないでいた。



龍弦は驚き戸惑っている少年になるべく怖がらせないよう細心の注意を払いながら尋ねた。


「のう、おぬし日本語は分かるかの?

あーゆー、すぴーく、じゃぱにーずじゃて。

どうじゃ?わかるかの?」





レイルは酷く困惑していた。


(な、なに、この変な服のお爺さん…

それにこのお爺さんの喋ってる言葉、僕の知らない言語なのに何故かわかるんだけど。

いや、あーゆーすぴーくじゃぱにーずとかの意味はわからないけど。)



取り敢えずコミュニケーションを取らなければここが何処かも分からないと思い返事をしてみた。


「あ、はい。言葉はわかります。ここが何処か分からず困っていました。気が付いたらここに居たんです。」



この小さな少年に龍弦は驚いていた。

なんと冷静で賢く礼儀正しい少年なのだと

見た限り5、6歳といったところか。

それにこの子供から発せられるオーラとも呼べる物が凄まじい事に気付いた。


「なんじゃ、日本語がわかるんじゃな。それなら話は早いの。ここは高尾山の山頂じゃ。


…しかし、気付いたらここに居たとはどういう事かの?」



「日本語…ですか?ここは何という国なのですか?えっと…僕はミリザリア皇国の森からなぜか転移して来たみたいなのですが。」



「ここは日本と言う国じゃよ。

それにしても転移とな?珍しいこともあるのぅ。

ふむ…、転移はまぁ、この国にもダンジョンや迷宮などがあるからあり得るんじゃが…

ミリザリアと言ったか??


………そんな国は存在せんぞ?」



レイルは龍弦の言葉に衝撃を受けた。


(えっ!?うそっ?ミリザリア皇国が存在しない?

どう言う事!?)


動揺したままの頭で考えていると1つだけ思い当たる事象の文献を思い出し、更に焦っていた。


「ま、まさか、異世界に転移…した?」




その姿を見て龍弦はこの子は嘘をついているわけではなさそうだと思った。


「まぁ、ここでいつまでも立ち話もなんじゃ、儂の家に来なさい。そこで話を聞こう。

込み入った話もあるじゃろうてな?

…ついて来なさい」



レイルは大人しく龍弦に付いて行く事にした。







    ー龍雲寺ー 源 龍弦邸



「さて、ここが儂の家じゃ!中々に大きいじゃろ?

さ、入りなさい。」


(うわぁ、見たことのない造りの家だなぁ。

凄い広い……)



そこには広大な敷地に灯籠や東屋。

枯山水や茶室などがある日本庭園。

道場があり、その奥に広々とした日本家屋が建っていた。



レイルは初めて見た日本の家に驚きそして何より緊張していた。


(こんな凄い家に住んでるお爺さんなんだ。

きっと偉い人に違いない。

佇まいもどこかリンドブルム公爵様に似ている

…怒らせないよう気をつけないと)



「…失礼致します。」


「そんな緊張せんでよいよ。

自分の家だと思って気楽にしなさい。

ほっほっ。」


「こちらに座りなさい。」


そう案内されたのは掘り炬燵のある和室だった。


「どこから話したもんかのぅ……

うむ、まずは自己紹介からじゃの!わしは源龍弦じゃ。この家の主人でしがない御寺の住職じゃよ。

さて、おぬしの事を聞かせてくれんか?名は何という?

確か…ミリザリア皇国という場所から来たと言っていたのぅ。」



レイルは悩んだ。

自分の中では異世界に来たという事はほぼ確定していたが、それをこのお爺さんに教えて

「はい、そうですか。」と信じて貰えるとは思えなかったのだ。


しかし、話をしなければ何も始まらないし、どうしていけば良いかもわからない。


だからこそ、レイルは正直に話した。

どうやって自分が転移したのか、なぜ転移した森に行く事になったのかを全て話した。

「はい、僕はレイルと申します。家名は……ありませんただのレイルです。元々はあったのですが…

……………

………

……

…」



「そうか…おぬし辛かったのぅ。

よぉここまで我慢し、生きてきたの。」



龍弦は愕然とした。

レイルの境遇に悲しみ、父親と義母、兄達に怒りすら湧いた。



「それにしても、びっくりじゃわい!

異世界から子供が転移してくるなんてのぅ。

人生長生きしてみるもんじゃの!」



「さぞ疲れたじゃろう?

今日はここでゆっくりして行きなさい。砂埃や汚れでボロボロじゃろ。風呂でも入って来なさい。」



そうして龍弦はレイルのこれからを考えるのだった。


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