錆

僕らは、無意識に裏切り合っている。

2019年、平成が終わろうとしていた頃の日本。時代の大きなうねりのなかで、この時も人々は各々の勝手を生きていた。たとえ誰かの人生が恵まれていても、あるいはまた別の誰かの人生が悲惨なものであっても、ありふれた物語の一つに過ぎない。
己の快楽を求め、『善意』を盾に無意識の裏切り合いを演じる。
誰しもが、ただただ同じ閉塞感の中でもがいていた。
幼少期の愛情不足に大人になっても苦しむ能勢、彼を育てた古都子。有能な能勢に嫉妬する先輩の近藤、能勢に亡き弟の面影を求める馬場。能勢の友人にして性別違和に苦しむ愁士朗。
彼らが関わった時、物語は最悪の結末を迎える。
だが、しかし。
彼らの中で誰が、悪人だと言えるのだろうか。

　＜注意＞
※舞台は警察署ですが刑事モノではあ…続きを読む