第26話 知識 × やるべきこと

eightersは順調に認知度を拡めた。


リンとエミリオは、大学も真面目に通った。


彼らはスタイルもよく、東洋の趣のある顔立ちと、イタリアの彫りが深くはっきりとした顔立ちで、女性たちを虜にし何度も言い寄られたりした。


恋愛は、将来に向かって邁進する彼らには不必要なことだった。


でも、彼らも男性なのだから、あんなことやこんなことぐらいはあった。


あったと思いたいのだけれども、正直に言うと踏み込めてはいなかった。



……



そして、大学内で仲の良い友達もできた。


リンは政治学・経済学を主に専攻した。


エミリオはコンピュータ・サイエンスを主に専攻した。


~遡ること受験前~


「今の楽しさを考えると、リンと同じ専攻にしたら大学も楽しそうだよね」

勉強中にエミリオが何気なく話し出す。


「今の楽しさだけでいいならね」

リンが顔をあげて、遠くを見ている。


「え、どういうこと?」


「将来に僕たちにはやるべきことがあるよね」


「あ、そうだね」


「エミリオは何を学びたいとかあるの?」


「僕は父の仕事ってのもあるし、動画もあるから、webとかプログラミングとかのコンピュータ系かなあ」


「なら、エミリオはそれを専攻するといいよ」


「リンはどうするの?」


「僕は、世界を変えれる力が欲しいからその知識のために経済学とかを専攻しようと思う」


「じゃあ、一緒にいれないの?」


「そんなことないよ。同じ大学に通って、登下校は一緒にしよう」


「うん。でもそれじゃあ、お互い知識が片寄らない?」


「そうだね。だから、毎日下校時には、今日学んだことで一番大事だと思うとこを知識交換しようよ。

内容によっては、みんなにも還元するために、帰宅したら2時間ぐらいは情報共有しよう」


「それはいいね」


「うん。別々に友達が出来たら紹介しあえばいいし、僕たちの関係より友情を築ける人も出来るかもしれないしね」


「申し訳ないけど、それはないよ」

エミリオは言いきった。


「まあ、そうだね」

リンはエミリオに優しく笑いかける。


……


結果。


やはり、2人の仲以上の友達はできなかった。


ただ、同じ知識レベルで議論できる友達は1人ずつできた。


リンには、政治家の息子であるリアム。

エミリオには、映画監督の息子であるルーカス。

この2人が心を許し、議論できる関係になった。


リアムとルーカスには、2人が【u-tube】をしていることも話したし、他の6人にも紹介した。


リアムは動画のネタを提案してくれたし、ルーカスは画角や、編集のより良い提案をしてくれた。


リアムはタラータとも意気投合し、個人的にやり取りをはじめた。


ルーカスはオイトとも気があったようだ。


そんなこんなで、アップロード動画のレベルもあがり、順調に登録者数を増やしていった。


エミリオは勉強した知識を駆使して、20歳のときに、フルスペックPCと、動画撮影用の小型カメラを開発した。


それは手ぶれがほとんどなく、防水機能もあり、倍速再生しても耐えうる解像度の良いカメラだった。


それで

「ナイアガラの滝で滝下りしてみた」

「自由の女神に本当の松明を持たせてみた」

「捕まって連邦刑務所に護送された」

等を撮影した。


「ナイアガラの滝~」では、8万ドルの罰金を払った。


「自由の女神~」はエミリオの持つ技術「CG」を駆使した。


もちろん、ルーカスもそれを手伝った。


それこそ本当にしていたら、世界NEWSになってしまう。


だが、エミリオの技術は凄かった。この動画で視聴者は、現実と空想の境界線がなくなった。


「連邦刑務所は~」は、リアムが提案してくれた案で、政治家の父に口利きしてくれて実現した。


刑務所の1日体験をさせてもらえたので、そこで撮影を行った。


こうしてリアムとルーカスは、撮影係や編集係として、彼らの影となった。


「夏休みは世界旅行をしよう!」


リンがニヤリと笑った。

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