第43話 理想 × 想いの重さ

『なんとなくだが、みんな圧がすごいなっ!』


英人はそう思いながら、みんなの話を聞き続ける。


次は『狼男ドゥーエ』が英人に話す。

「僕とワンは幼馴染みなんだよ。ワンはアメリカと中国の混血で、僕はアメリカとイタリアの混血さ。だから、幼少期に色々あってね。僕たちと同じ気持ちをしている人を救いたいと思って世界旅行をしたんだ」


「そうだね。僕たちはお互いがいたから、救い合えた。世界にも救われてない人がいると思って、旅をしたんだ。でも、世界はそんな簡単なものじゃなかった。国レベルでの貧困格差、ルールの違い、充分に教養が足りてない地域、民族同士の差別。そんなことを自分の目で見て、僕たちの回りだけでも、できるだけ多くの人を救いたいと思うようになってさ」

赤鬼ワン』が昔話を進める。


「僕たちは、ワンとドゥーエに出会って救われたんだよ。僕たちも混血で同じような境遇を受けたし、何より、あのときは何も上手くいってなかった。そこに、彼らが救いの手を差しのべてくれたんだ」

ミイラタラータ』の表情はわからない。


「だから、僕たちはワンの理想を実現してあげなきゃいけないんだよ」

妖狐オイト』も続く。


「まあ、スペインからちゃっかり2人お持ち帰りしてきてるけどね」

ドラゴニュートセイス』が、冗談を言って場を和ませる。


「失礼ね。私たちは自分の意思でいるのよっ!」

ケモ耳剣士サラ』がそう言い、『サキュバスセレナ』も頷いている。


「あの、ちょっといいかな?」

英人が最初から抱いていた疑問を投げ掛ける。


「どっちがどっちの恋人なの?」


赤鬼ワン』と『狼男ドゥーエ』が目を反らす。他のeightersは大笑いしている。


ミイラタラータ』の表情はわからない。


「?」

英人は暫く返事のない時間を過ごす。


「それは、普通に疑問だよね。僕たちも最初同じ質問をしたよ」

ゴブリンサンク』が場を繋いでくれた。


「どっちもどっちもよ。選べないからシェアしてるの。」

サキュバスセレナ』が答える。


『今のは、サキュバスキャラ的な発言なのかな?』


「私たちは2人とも好きなのよ。だから、交互に2人をシェアするの。好きなんだから当然でしょ?」

ケモ耳剣士サラ』がそう言うと『赤鬼ワン』に飛び付いて、ハグキスする。

そのあと、『狼男ドゥーエ』にも同じことをする。


「こういうことよ」


英人は開いた口が塞がらない。


それを見て、eightersは大爆笑している。


ミイラタラータ』の表情はわからない。


「大丈夫だよ、英人。それが普通の反応だから」

キョンシースー』が笑いながら英人の肩を叩く。


ちなみにだが、『サキュバスセレナ』も続いて同じことをしている。


クリスティーヌとアンナが目を合わせ、勝負はここだと判断し、英人に近寄っていく。


エルフクリスティーヌ』は英人の右側から、『妖精アンナ』は英人の左側から、英人を抱きしめ、ほぼ同時に英人の頬にキスをする。


「「私たちもそうなるのよ!」」


「へ?」

英人の1音あがった声が漏れる。


英人は、まだ何が起きているのか理解できない。


「私たちは『e-to』に出会ってからずっとあなたを愛してる」

エルフクリスティーヌ』が英人の耳元で囁く。


「ずっと2人であなたのことを話し、考え、想っていたのよ」

妖精アンナ』も英人の耳元で囁く。


サラとセレナ、eightersのみんなは嬉しそうだ。


ただ『ミイラタラータ』の表情はわからない。


「良かったわね」

ケモ耳剣士サラ』が笑顔で2人を見ている。


そのあと全員に拍手された。


『ん、何が起きているんだ?』


右を見たら『エルフクリスティーヌ』にキスされた。


左を見たら『妖精アンナ』にキスされた。


「ちょっ……!」


『なんだ、この展開っ。本当にモテ期が到来じゃないか』


「い、いや、そんなに僕のことを想ってくれて、てたんだ。あ、ありがとう」


エルフクリスティーヌ』と『妖精アンナ』を見ると、笑って泣いていた。


『あ、本気で想ってくれてたんだ』

この時、やっと、想いの重さに理解が及んだ。


「本当に僕が?いいのかな?」


「「あなたじゃないと、だめなのよ!」」


『エルフ』と『妖精』は本当に綺麗だった。

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