第11話 友情 × 自分の価値観

リンとエミリオはいつも通り会話をしていた。


2人は勉強や、学校でのこと、両親のことなど、なんでもお互い話をしていたが、自分の価値観や将来的な部分については話をしてこなかった。


リンは、自分の価値観を話したときに、エミリオは異なった考えで、それこそこの関係が崩れてしまったらどうしようか。と、単純に不安だった。


だが、エミリオには知っていてもらいたい。そう思って、ジョークの後にリンは話すことにした。


「混血ってそんないけないことなのかなあ?同じ人間なのに」

「うん、そうだよね。同じ人間だよね」


会話のキャッチボールが始まる。


「他の国とか世界中にも、僕たちと同じ境遇で悩んでたりする子いるのかな?」

「絶対いるよね」


「僕はエミリオがいたから、今まで救われてきたよ」

「僕もリンがいたから、救われてきたよ」


「僕達が他の人も救うことってできないかな?」

「え?」


「こうやって面白いことをして、みんな楽しくなって救われないかな?」

「それができたら、救われるかもだね」


「あのさ」

「うん」


リンは意を決して会話を進める。


「エミリオは高校を卒業したらどうするの?」

「う~ん、まだ考えてないかな。普通なら大学に進学するとか?」


「エミリオは賢いもんね?」

「リンも同じぐらいじゃん」


「あのさ」

「うん」


「僕は高校を卒業したら世界を少し回ってみたいと思ってるんだ」

「え?どういうこと?」


「世界旅行っていうか、いろんな国を見てみたい」

「うん、それは僕も少しは思うよ」


「でさ、僕達と同じような境遇の人たちを笑顔にしたいんだ」

「それはいいね」


「でしょ?何人かはわからないよ。5人なのか、10人なのか。でもできる限り、同じ境遇の人に笑顔を与えたいんだよね」

「人数は、増えれば増えるだけいいね」


「もしよかったらさ?」

「うん」


「エミリオも僕と一緒に来ない?」

「行っていいの?」


「もちろんだよ。そう思ってないとこんな話はしないよ」

「うれしいよ」


「ん?」

「僕はリンとずっと一緒にいるよ。もう決めてたから。でも、リンに自由にしなよって言われるのが怖かったんだよ」


「え?」

「リンは僕に救われたと思っているかもなんだけど、むしろ救われたのは僕なんだから」


そういうことだ。エミリオも混血が故に嫌がらせ的なものを受けていたのだ。やっと納得できた。


「良かったら。良かったら、一緒に海外を廻ってみない?」

「リンの行くところなら是非っ! こっちから一緒に行きたいって頼むところだよ」


「良かった」

リンの口から自然に安堵の気持ちが漏れる。

「そんなことで悩んでたんだね。もっと早くに言ってくれれば良かったのに」

2人で笑い合う。


「じゃあ、親を説得する理由を作らないとね」

「うん、そうだね」


リンとエミリオはこの時初めて固い友情で結ばれた気がした。


ここからは、親を説得する方法の打ち合わせが始まっていった。


……


ぼくたちは10年後、国際調査会社を設立する。


人を探すことが容易になる。

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