第35話 交渉 × ごめんなさいっ
「ごめんなさい」
サラはリンとエミリオに経緯を説明して謝罪する。
「違うのよ、私たちも何か自分たちでできることをって考えた結果なの」
セレナが、サラだけが悪いわけではないと説明する。
エミリオが笑顔で答える。
「僕たちと彼女たちのために考えてくれたんだね、ありがとう」
リンは何やら思案している。
『確かにこのまま『e-to』から返事がなかったら、住所と名前ぐらいは調べざるを得ない』
そのことからも、サラの考えは正しい。
『動画の編集者の募集もしたいな。オイトもチルも日本語教えてあげたりしてるから時間が惜しい。でも僕たちの編集レベルは下げたくないから、僕たちの動画を全部見てくれてる人がいいな』
『『e-to』が僕たちに合流してくれたら、色々必要にもなるだろうな。人脈は欲しいな』
様々な思考を巡らせた結果。
「そのAntonio Lopezは、お金には純粋で色んな業種も経営してるんだよね?」
「ええ、そうよ」
サラが答える。
「で、サラとセレナも口説かれたこともあるんだよね?」
「ま、まあね……」
セレナが答える。
数秒考えた後、リンはサラにAntonio Lopezに電話するように依頼する。
サラの数字を押す手が震える。
ただ、言われるがまま、素直にAntonio Lopezに連絡して、リンに携帯電話を渡す。
「こんにちわ。eightersの『ワン』です」
Antonioの声が裏返る。
「やあ。わざわざ直接連絡くれたんだ」
ワンが静かに話し出す。
「そうだね、うちのサラが何やら交渉させてもらったみたいで申し訳なかったね」
Antonioが答える。
「そうだね、人を探して欲しいと頼まれたんだよ」
「みたいだね。でも君は僕たちに確認するように促しちゃったんだよね?」
「まあ、そうなるかな。対価に対しての信用と信頼が欲しかったからね」
「そこが間違っちゃったね。僕は、いや、僕たちは、君の会社を今からM&Aすることに決めたよ」
「へ?」
Antonioの声が裏返る。
「聞こえなかった? もう一度言うよ。僕たちは君の会社をM&Aする。株式を購入して、君を退任させるか、実質的に経営権力を奪うか。それの方が話は早いでしょ? その後に動画編集会社と、ホワイトハッカー集団の会社を作るよ」
「そんなことは非現実的だろう?」
「面白いことを言うね。僕たちは非現実なことをするeightersなんだよ。君の年収と僕たちの年収。比べて見れば冗談かはわかるんじゃない?」
正直言うと、リンはお金には疎いため、自分がいくら稼いでいるのか把握をしていない。
Antonioは冷静になり、話している相手は、本当にeightersの1人であることを理解した。
「う~ん、それは困るね」
「ならどうする? 僕たちの頼みを聞いてくれて、僕たちのために仕事をして対価を得る? もしくはM&Aを受け入れて、僕たちの懐柔となる?」
「僕たちはどっちでもいいよ?」
エミリオが追い討ちをかける。
「ちなみにだけど、サラとセレナを口説いたこともあるんだって? ついでに言うけど、サラとセレナは、もう僕たちeightersのだから、今後何かするなら、僕たちは全財産と全繋がりを用いて君をこの世から抹殺するよ」
リンの語気が荒くなる。
「すまなかったよ。私も状況が把握できていなかったんだよ。だから、今回は許してくれないかな?」
「わかってくれたようでうれしいよ。じゃあ、交渉を始めよう。君の会社の株式を50%頂戴。君には社長権限は残してあげるよ。その代わりと言ってはなんだけど、僕たちの要望を2点飲んでくれるだけでいいよ。
ハッカーを1人用意して。あと、僕たちのファンで動画編集できる人を2人ぐらい用意して欲しいな」
「それができないなら、交渉決裂として、僕たちはあなたの全財産を奪いに行くよ。その時は後悔してね」
「はぁ……、わかったよ。言われた通りにしよう。ただ、僕が稼げないのはごめんだからね」
Antonioは完全敗北した。
「ものわかりがいい人でよかったよ」
リンはニヤリと笑った。
このあと、詳細な打ち合わせを行った。
電話が終わった瞬間に、サラとセレナが泣きながらリンに抱きつく。
「「ごめんなさいっ!」」
リンは笑いながらそれに答える。
「僕たちのことを考えてくれてありがとう。でも、サラとセレナが傷つく必要はないんだよ。次からは全員で考えて行動しようね。あと、サラ。交渉するときは、こうするんだよ。サラとセレナが僕の稼ぎを使いたいなら自由に使えばいいんだからね」
「僕のも使っていいんだよ」
エミリオもサラとセレナの肩を抱いた。
一週間後、Antonioは動画編集会社の設立を全世界に告知した。
eightersはAntonioの会社に動画編集の業務委託を行うことを発表した。
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