第15話 日本 × 同じ境遇の人間

1日目は無事に終わった。


ルールを聞いたが、日本は他の国より安全そうだった。『それほど気にする必要はなさそうだ』と2人は思った。


とりあえず、お寺と原宿に行ってみた。

電車やバスの交通手段が複雑すぎて、さっぱりわからず時間がかかった。


明日は、念願の集いに参加予定だ。


旅行早々に、同じ境遇の人間を救うと言う課題についてあきらめていた。


でももしかしたら、最後の地日本で少しでもその課題がクリアできるかもしれないと、リンとエミリオは気を引き締めた。


早めに出たけど、案内された会場までたどり着くのに苦労した。でも、なんとか予定時間には間に合った。


会場の扉を開いた瞬間、驚いた。




千人以上はいそうだ。


だが、世界旅行をしてきた2人にとっては、そんなに怖いものではなくなっていたし、準備もしてきたので、驚いた程度で、その他に影響はなかった。


リンとエミリオはステージの上の机の前に立ち、斜めに向かいあい、間にパソコンを置いて、後ろの画面に投影の準備を整える。


こういった作業は学校でもしたことがあったし、エミリオは得意な方なのでスムーズだ。


深呼吸して、リンから話し出す。


「え~、どうも王 琳です。『リン』とか『おう』 とか『ワン』と呼んでください。私が聞こえていなくても2回は呼ばないで下さいね。『ワンワン』になって、渋谷ハチ公前でエミリオの帰りを毎日待たないといけなくなるので」


エミリオは笑った。


「僕は、Duran Emilioといいます。『ドゥラン』か『エミリオ』と呼んでください。混血が世界旅行をした結果、違う動物とも混じってしまいました!」

といい、肘まである狼の手袋を装着し、両手をあげる。

「世界旅行ってこんなに大変っ!」


リンは、笑った。


2人のいつものジョークだった。

客席も拍手とともに笑いが拡がる。


だが、2人にとって笑いは必要ない。リンとエミリオが話し出すためのただの行事だから。


リンもエミリオも、既に相手を惹き付けるモードに入っている。

2人は世界旅行を通して、どこの国でも相手を惹き付けることが、一番早く仲良くなれる方法であると知った。


彼らの心地いい声で、面白おかしく世界旅行での経験、各国の状況や苦労した話、美味しかったもの等の話が進んでいく。


1時間くらいはSNSを用いて、国々の人やルール、論理感等についても話した。


最後に、真面目な話もした。

リンとエミリオは声の高さを1つ下げ、リンが話を変える。


「僕達が世界旅行をしたいと思った理由についてなんだけど」


「僕らは混血だからと、小学生の頃からいやがらせ的なのがあってね」


「そこから、僕達は仲良くなったんだけど、それから同じ人間同士なのに、血が、見た目が異なるだけでなんで仲良くできないのかな? って思うようになってさ」


「そうそう、僕達はお互いに救い合った。だから、他の場所にも同じ境遇の人間がいたら、助けたいって思ったのが始まりなんだよ」


「だから、今日はこんな機会を与えてくれて本当にうれしいよ」


「僕達に興味を持った人がいたら、この後、食事会もしてくれるみたいだから、そこに来て、話しかけてよ。あ、リンの名前2回は復唱しないでね」


最後は笑いでまとめた。


拍手喝采だった。


リンとエミリオはこの旅行で一番満たされた気分になった。


……


ぼくたちは7年後、海運業の会社を買収する。


料理の材料の流通をスムーズにする。

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