第20話 情熱 × 美味しいご飯

やっぱりみんな集まった。


みんなの眼を見て、情熱があることは理解っていたし、リンの予想通りだった。


『ワン』『ドゥーエ』『タラータ』『スー』『サンク』『セイス』『チル』『オイト』が揃った。


「改めてよろしく」

リンが話し出す。


「これからはみんな仲間だから、一人一人平等ね」

タラータが6人と目を合わせたあと頷く。


「あとはグループ名だね。8人いるし、誰一人抜けて欲しくないから『eighters』でどうかな?」


「リンが決めるならいいと思うよ」

みんな姿勢をただして頷く。


ここからは各自、仮面を着けて話を進める。


イタリアで買わされた仮面は、ベネチアで仮面カーニバルに使われるもので、目元が大部分隠れているが、口元は全て見えている。


だから、表情は問題なくわかる。


「アップロード頻度はどうする?」

スーが質問する。


「編集に無理のないのはどれくらい?」

ワンが質問を返す。


「3日に1回ぐらいがうれしいかな?」

オイトが答える。


「じゃあ、そうしよう」

ワンが決定する。


スムーズだ。まあ当然である。

ワンは【u-tube】の先輩でもある彼らを信用しているから、一切否定をするつもりはない。


「あとは撮影場所だね。基本は1階の2部屋を撮影部屋にしようと思ってるんだけどいいかな?」


王家の敷地にある新築建物は、1階に広い部屋が2つ、共同キッチンが2つ、お風呂・トイレが3つ備え付けられている。


2階には広めの部屋が10室もある。


「個人部屋とかキッチンとかもいいかも」

セイスが話す。


「それはそうだね。料理したりもあるだろうし」

チルも同意する。


「じゃあ、この建物内全部にしよう」

ワンが決定する。


「個人で撮影するのはどうする?」

サンクが質問する。


「2人以上ならいいんじゃないかな? 題名的には『タラータ、オイトの~~挑戦してみた』みたいな」

タラータが例える。


「OK、ならそうしよう。でもやりたいこと、内容は僕に全部見せて欲しい」


「時間があるときは、全員で議論して決めようよ」

ワンのあとに、ドゥーエが続く。


「そうだね、週末にみんなでランチかディナーをして、次週の内容を決めたらいいんじゃないかな?」

全員頷く。


概ね、流れは決定した。


「じゃあ、今から1つ撮ってみようよ」


「何をするの?」


「2m幅で床にバターを塗って、10m後ろからダイブして誰が一番遠くまで距離を延ばせるか」


「新築なのに?」


「新築なのに」


「あ、別で新築ルームツアーは撮影しといたうえでだよ」


「これは、僕が小さいときにしたジョークなんだけど、最初の思い出に動画に残したいんだ。みんな、最初だけど、僕のワガママを許してくれないかな?」


ワンは真面目な表情でみんなに頭を下げてお願いする。


みんなはそんな気持ちをくみ快諾する。


……


さっきとは、うって変わって、ワンがニヤニヤしてる。


それは結果がどうなるか知ってるからだ。


ダイブした後、2mはバターの力で滑るけどバターが塗ってないところから摩擦力があがって、最後はキュッと止まる。


お腹が摩擦にやられて悶絶する。


結果、タラータとオイトが体重の影響で最も被害を受け、スーが1位、ワンが2位となった。


みんな大爆笑だった。


毎日こんなことができるなら、楽しくてしょうがない人生になると、タラータは思った。


その夜、ワンとドゥーエを除いた6人でダイニングに集まる。


「みんな、お金のことについてなんだけど。

リンは、あ~言ってくれたけど、僕達は新しく住む場所まで用意してもらったし、何より、今日みたいな楽しい時間をこれから過ごせるよね」


「うん、そうだね。今日だけでお腹痛いよ」

スーが答える。


「だから、最低限生活に必要な費用とか、動画経費以外は貯金しとかない?」

タラータが提案する。


「そうだね。こんなに良くしてもらってるし、当初の僕達の目標は、『動画だけで食べていけるようになること』だったから、ある意味もう達成したようなものだよね」


今日もリンの母が料理をしてくれて、机にはパスタや、ミートボール、サラダ等が並べられている。


「量もバッチリだし、味も美味しい」

オイトが、満足げにニヤニヤしている。


今日も美味しいご飯にありつける。


それだけで6人とも幸せを感じて、フォークを握りしめた。


……


ぼくたちは8年後、製薬会社を買収する。


さまざまな薬を生みだす。

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