第19話 偶然 × カリスマ性をもった人間

王家とDuran家で『お帰りなさい会&大学合格会』が開催されていた。


リンとエミリオは、帰宅後すぐに受験し大学に合格した。


AO入試で世界旅行の内容が評価されたのも大きかったが、母'sの手際が何より一番よかった。


王家の敷地に新しい建物も完成していて、サイード・アリは既に住みながらこの会に参加している。


もちろん家族みんなの公認だ。


彼は、リンとエミリオがアメリカに戻ってくるときに一緒について来た。


サイード・アリは既に決心していた。


彼らは面白いし、正直に僕たちに接してくれる。しかも、行動力もあり、有言実行する。


『彼らに自分の人生を預けよう! きっと明るい未来を見せてくれる。僕はここからは、『タラータ』でみんなを支えよう!』


エミリオ父が自慢気にしている。

そう、【u-tube】についてだ。紹介したのは俺だと主張しているのだ。


エミリオはそれが許せなかった。

「僕たちは世界旅行をして、日本で彼らと出会ったから、【u-tube】という結論に達しただけで、偶然だよ!」


「でも、本当にできるの?」

リンの母が不安げに質問する。


「大丈夫だよ。タラータ、こっちに来て」

タラータが駆け寄って、padを見せる。


「ほら、これが彼らの動画だよ。編集も上手でしょ?新しくなるのは、僕とエミリオのジョークで始まる感じになるかな。で、僕達はこれをつけるんだ」

そういって、イタリアで買わされた仮面を並べる。


「なるほど。誰だろうって不思議感も演出するんだね」

リンの父が納得する。


続いてエミリオ母が質問する。

「言語はどうするの?」


「みんな来てくれたら、とりあえずは日本語で作ろうと思う。全員が英語を話せるとは限らないからね。僕達はもう日本語を話せるし。


彼らも、英語が話せるようになったら、英語の回もあっても良いと思ってるよ。ただ、ちゃんと翻訳はつける予定だよ。英語、スペイン語、イタリア語その他etc。


まあ、【u-tube】自体に字幕機能はあるみたいだから、翻訳っていっても文字編集する箇所ぐらいかな」


「なるほど。世界のみんなに見てもらえるようにってことね」


「でもいきなりは稼げないでしょ?」

リンの母が、いいところを突いてくる。


「そうだね。でも登録者は一気に1万人以上は目指す予定だよ。僕たちには世界旅行SNSがあるからね。仮面はするけど、動画デビューしたことは世界で出会ったみんなに伝えるつもりさ。

もちろん、タラータの今のチャンネル登録者にもね」


「なるほど。それなら確かに世界中に一気に拡がるね」

リンの父が納得して返事をする。


「じゃあ、世界旅行で会社にもお世話になったことだし、社内の掲示板に息子が【u-tube】デビューしたと宣伝でもするかな」


この親にしてこのこありだ。


リンとエミリオが顔を合わせて、真剣な表情になる。


「僕達は【u-tube】の資金を元に少しでも世界を変えたい!」


「将来的には僕がその先頭に立つつもりだけど、僕よりそれが適していると判断した人が現れたら……

僕は【u-tube】で稼いだ全額をその人に投資するつもりだよ。そして、黒子に徹するんだ」


リンの父は、彼らしい判断だと納得した。


リンの思考を上回る人間は、それほどいないであろう。だが、一種のカリスマ性をもった人間は存在するだろう。


自らが動くと決めつけるのではなく、他の案も視野にいれているところが、実にリンらしい。世界を旅したことによって、行動力も向上しているようだ。


「タラータくん、リンとエミリオをよろしく頼んだよ」


今日の会はリンとエミリオの「誓い」で締めくくられた。


……


ぼくたちは8年後、環境制御システム会社を買収する。


風を操れるようになる。

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