第45話 議論 × 異世界の日常

「ごめんなさいっ!」


約束の時間より、1時間以上越えて遅刻した。


「こちらこそごめんね。サラとセレナを抑制するつもりで、休憩を1時間にしたんだけど、そちらに対する配慮が足りなかったよ」

赤鬼ワン』がそう言う。


『赤鬼が言うとなんだか怖いな』


待っている間に、eightersはリアムの提案で動画を撮影したようだ。


『異世界の日常を再現してみた』


「まあ、いい動画がとれたから気にしないでね」

狼男ドゥーエ』が気遣ってくれる。


『とりあえず良かった』と英人は胸をなでおろした。


ひと呼吸おいて長めのソファに腰かける。


もちろん、クリスティーヌとアンナは英人の両サイドに座って寄り添い腕を組んでいる。組んでいるというか、半ば腕を取り上げてられているというか、そんな状態だ。


彼女たちは、お揃いのワンピースに着替えた。クリスティーヌは薄いピンクで、アンナは薄い黄色だ。


ルーカスにも謝った。

「遅れた分、ゆっくりディナーさせてもらえたから良かったよ」


リアムにも謝ろうとしたら、

「久しぶりにみんなに会えてゆっくり話せてよかったし、気にしないでいいよ」

と言ってくれた。


英人の様子を見て、2人ともニヤニヤ笑っている。


「アントニオには謝らないでいいよ。仕事してたし」そう言ってワンが笑った。


アントニオが何やらそりゃないよ的なことを言っている。


みんなが揃ったところで、ワンが真面目な顔をする。

「『e-to』ここはチャット内ではないけれど、今から議論をしてみないか?」

ワンは『rino』に変わる。


……


英人もスイッチを切り替える。

「いいね。僕の妄想より、上をいけるのかな?」


クリスティーヌとアンナも英人から離れる。

「私たちも負けないわ」


彼女たちも『cr』と『a』になる。


「じゃあ、テーマはどうしようか?」

『e-to』が『rino』にお題を依頼する。


『rino』が答える。

「休憩前に話した内容だよ。僕たちの願いを叶える方法」


『e-to』はニヤリと笑って思考をはり巡らす。


『国レベルでの貧困格差、ルールの違い、充分に教養が足りてない地域、民族同士の差別の解消と、できるだけ多くの人を救う術』


『国の貧困格差とルールか。それは国を解体すれば解決しそうだな。でも地球全体を1つの国にするべきか。


そんなのどうやったら統治できるんだろうか。


なら、地球連邦にしようか。大陸別に分ければ6つか。これなら、まだ今よりも戦争リスクも下がりそうだな。


その6つも州にしたら、より残存リスクも少なくなりそう。


地球外生命体が襲ってきても対抗できそうだしな。うん、よさげだ。


ルールは、基本法を多めに制定して、あとは州法みたいなイメージかな。共通言語も必要だな。州法は今ある国の代表を集めて決めればよくなりそう。


あとは教育か。これも中学までは、全世界同じ義務教育にすれば格差はなくなる』


『e-to』が切り出す。

「国を解体すれば、概ね解決する」


『cr』

「まずはみんな平等だという教育が必要。それを徹底して、洗脳すれば」


『a』

「逆に今ある全てのルールを失くしてしまう」


『rino』

「誰よりも富と名声を手にする」


なかなか、みんなぶっ飛んでいる。

他のeightersは、発言側に回るのはやめてROMになった。


『e-to』

「教育で洗脳は、リスクもあるよね。洗脳が解けたときの再教育の判断が難しいと思う」


「今あるルールを失くすのはいいかも。でもまずは、今ある道具とかもリセットしないと。ルールがなくなった瞬間に拳銃を持っていたら、人を殺したい放題になる」


「誰よりも富と名声を手にして、再分配するならいいかもね。でも、富と名声を手にして再分配する人が老化で死んだら? その世代しか救われない。将来の人に恩恵はないよ」


『cri』

「国を解体するほうが非現実的だわ」


『a』

「そうよ、それこそ全てのルールがなくなるじゃない」


『rino』

「富と名声を手にした者は、意思ある者に引き継げばいいじゃないか。国を解体してもそのあとは? それだけじゃ解決はできないよ」


『e-to』が『cr』と『a』の意見を早々に潰したため、既に3対1になる。


『e-to』

「それはもちろんそうだね。『rino』の言う通りだよ。ただ確率論になるけど、そんな人間が毎世代に現れると思う? しかも富は増やし続けないとだめなんだよ? 国を解体したあと?」



「もちろん【地球】という国を作るんだよ!」

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