第6話 信仰 × 一通のメッセージ

気づいたら家に着いていた。


まさにそんな感じだった。


いつものルーティーンでは、真っ先にパソコンを起動させるのだが、とりあえず椅子に座り込んでしまう。


英人は、この行動で自分への衝撃度が、半端なかったことを理解する。


しかも、さっきもう一度、冷静にその動画の視聴回数を見たら二度見、いや、三度見してしまった。


驚きすぎて、目が飛び出すかと思ったが、既に30億回も視聴されている。ただただ驚きしかない。


今の世界人口は90億人を越えている。

貧困世代や、貧困国と言われる地域でも、携帯が一家に一台は持てる時代にもなった。


だが、全世界人口の約1/3の試聴回数とか本当に現実なのか疑うレベルだ。


動画がアップされてから、三日間でこの数字をたたき出している。



圧倒的……



いったいあの動画一本でどれだけ稼いでいるのだろう?


英人には、チャットで話す内容は、夢見心地で発言している内容や、非現実的である気持ちが強かった。


それは仕方のないことだ。


なぜなら、英人は、仕事では閃きを大事にしながらも、少なからず現実に出来ることを提案しようとしていたのだから。


それでも、仕事では自分の提案は『突拍子もない』『妄想族だ』と言われているから、唯一の息抜きの場所で、会話した内容が実際に映像化されるなんて、当然、思っても見なかったことなのだ。


しばらくして、英人はハッと我に返り、いつものルーティン作業に入ることにした。


いつものようにパソコンを起動し、チャット画面を2つ開く。


『ピロンッ』


通知音が英人の部屋に鳴り響く。


メッセージの通知音だ。


このチャットは、相手がログインしていないときはメッセージを送れる仕様になっている。



「え!」



『eightersワンより御礼と信仰のお願いについて』


メッセージの題名で確信した。

やはりこのチャットには、間違いなくeightersの誰かが参加している。


英人の予想が確信に変わっていく。


ん?


ここでやっと冷静になれた英人は当然、引っ掛かかる言葉があった。


『信仰のお願い?』


なんだそれは?


いったいどうゆうことなのだろう?


これは悪戯メールの類いか悪魔の誘いか……


そもそも開くべきではないのでは?


様々な憶測が脳裏をよぎる。


めちゃくちゃ躊躇する。


熟考した結果。


とりあえず冷蔵庫から缶ビールを取り出し、カシュッと開けて、一気に流し込む。


小休止。


まだ開くか悩む……


それでも悩む……


一時間……


二時間……


あっという間に夜明けを迎えてしまった……


結論。


一旦今日は忘れて、仕事の準備をしよう。


英人はそう思い、シャワーを浴びた。


……


ぼくたちは9ヶ月後、土木工事会社を買収する。


どんどん掘り進めていく。


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