第30話 紅茶 × 愛する人のために

金髪と赤髪の女性がサクサクとドラゴニュートを量産している。年齢は少し年上な感じがする。


先に作り上げてた竜の羽を背負わせていく。それとともに尻尾も履かせる。


そのあとは液体に案内し、そこを通過したらすぐにドラゴンマスクを被せて、継ぎ目を補正している。


所作は、『美しい』に尽きる。


サラとセレナが見とれる。少し年上であろう彼女たちが、流れるような作業で人間あらざるものを造り上げていることに、尊敬と畏怖の念を覚える。


彼女たちとはわかり会える。サラとセレナはお互いを見合って頷いた。


それはまさに料理を学んだ師の教えそのものだったからだ。


『流れるような作業で無駄を作るな 客の時間を1秒でも無駄にするな。』


『客はわざわざ店に食べに来ているのだから、料理と料理の『間』、そこを大事にしろ』 


いつも口が酸っぱくなるぐらい指導された。


『間』を大切にすると、自ずと厨房では無駄のない作業が求められる。シェフの作業に合わせて皿を出したり、サイドの盛り合わせを温めたり。


まさに厨房と同じ作業風景。

これは長きに渡る訓練の結果でないと体現できない。


リンも圧倒されていた。作業もだが、ドラゴニュートの素材にである。演者の動きを見てもとても軽そうで動きやすそうだ。何を使っているのか検討もつかない。


サンクとスーは女性2人の美しさに見とれた。


「彼女たちは特殊メイクのプロだよ。一流の映画は全部彼女たちが関わってるね。ちょっと特別でエンドロールにも名前とかは出てこないんだけど、彼女たちが最高峰だよ」

ルーカスが説明をする。


「こんにちわ。突然だけど、私たちは彼らのために生きてるの」


いきなり、サラが話しかけた。ルーカスの汗が突然溢れ出だした。


「奇遇ね、私たちも愛する人のために生きてるわよ」


意外な言葉が帰ってきた。


「なら、私たちは仲良くなれると思うの? 違う?」


「違わないわよ、間違いなく仲良くなれそうね。」


クリスティーヌはそう答える。


「少しお話しない?」

セレナが提案する。


クリスティーヌとアンナはお互い見合ってアイコンタクトし答えた。

「作業が終わったらいいわよ」


リンとエミリオは内心、サラとセレナにgood jobだと、親指を立てた。

やはり女性同士が仲良くなるのは、男性ネタなのか。


サンクとスーは早々に失恋した。


しばらく誰1人話すことはなかった。その作業に見とれていたからだ。


あっという間に作業は完了した。


クリスティーヌとアンナはお互いを見合い、ウインクをする。


「いいわよ」

クリスティーヌが11人に、いや、正確には2人を見てそう言った。


ルーカスが机と椅子が並べられている方を指差す。

「では、あちらで」


サラとセレナは、念のため持ってきておいたパンとバスクドチーズケーキを真ん中に置いた。

「私達が作ったものだけど、良かったらどうぞ」


「美味しそうね」

クリスティーヌは執事のベンを呼んで紅茶を頼んでいる。


「みんな紅茶でいいわよね?」


全員頷くしかなかった。2人のオーラがそうさせた。


「まずは作業中に話しかけたことを謝罪します、申し訳ありませんでした」

ルーカスが頭を下げた。


アンナがオッケーよ。とジェスチャーで返す。


「こちらがクリスティーヌ様とアンナ様です」


「こちらは……」

ルーカスがリンとエミリオの顔を見た。エミリオが頷く。


「こちらがeighters様です」


あらあら、そういうことね。とクリスティーヌとアンナが一定の驚きを見せた。

彼女たちは熱心なファンではなかったが、動画を見たことはあった。


「私はサラ、こっちがセレナよ。ワンとドゥーエの恋人よ」

サラが自ら紹介する。

リンとエミリオが困った顔をする。


「あら、どっちがどっち?」

アンナが質問する。


「どっちもどっちもよ。選べないからシェアしてるの」

セレナが答える。


アンナの目が一気にキラキラした。


ベンが皆に紅茶を配膳している。

オイトはパンもバスクドチーズケーキも11個しかないことに気がついた。


サラが立ち、クリスティーヌとアンナにパンとケーキを配膳する。そのあと、ワンとドゥーエ、ルーカス、セレナ、自分に配膳し、机の中心に戻した。残りが4つになった。


6人全員がさすがに気づいた。ここから死闘が始まる!

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