第7話 観月と柊羽

「あれがボス…巨人ですね…」


「そだねー。炎の巨人だけどデザインは何処から来てるんだろうな?」


「と、言いますと…?」


「あぁ…観月さんはゲームとかしないか。ゲームとかで良く見るデザインだからさ、誰が?って言い方もおかしいか…何なんだろ?って思ってね。」


:色は違うけど燃える剣とか確かにw

:ラスト周辺に出てくるアレだよなw

:出会って倒さないと作れないとかもあるよなw

:そんでやっと倒していざ作る時に合体事故…


それな!!とコメントも大盛り上がりしてる。

やっぱり皆、経験あるよね〜。


「ん〜?何の話か分かりませんけど、戦いを始めますか?」


「うん、そうだねー……と言いたい所だけど、限界でしょ?」


実は少し前から観月さんからのバフが弱くなっていた。

普段はやらない方法をしているんだと思うしコメントでも知られて無かったみたいだから当たってると思う。


「ぇ……な、なぜ…」


「そりゃ分かるよ。今の状態に慣れてないのか、使いこなせてないのかは分からないけど、限界だろ?」


「そ、それは……はぃ……」


「って事で、見てれば良いからっ。あいつは俺が倒す。」


「う、うん。でも無理はしないでくださいね。」


「分かってる。取り敢えず、解除して見てて。」


さぁってと!少しは良いところ見せますか!バフのお陰で楽できたしねっ!

…………………………………………………………

SIDE 観月


言われた通り開放を解除して、シュウくんの戦いを見ていた。


「凄い…!これが、こんなレベルの戦い何て…」


:何してるか分かんねぇ…

:炎もそうだけど速すぎる…

:ギリギッリ見える時もあるけど基本的には分かんない

:シュウくんは分かるけどあの巨体で何て速さっ!


ギィンッ!ガガガガガガッ!と金属と金属のぶつかり合う音が響いている。

とは言え、シュウくんは刀ですし鍔迫り合いとかは無くぶつかっても一瞬だけで、弾く様な感じや滑らせて受け流す感じに戦っている。


:部屋の中の温度やばそう…観月ちゃんは大丈夫?

:それもだけど、刀が打撃武器になって無いか?

:そらあの炎の剣とぶつかってたら刃何て無くなるだろ

:あんなんで連斬撃撃てるのか?

:連斬撃ってw

:他に言い方あるか?斬撃の内包って内包撃?

:センスwww

:ならお前の案も言ってみろよ!!

:………瞬〇殺

:パクリじゃねーか!


「柊羽くん…負けないで…」


「はぁぁっ!」


ガキィィンッ!と巨人の剣を弾いてがら空きになった身体に…その隙を見逃さずにズシャァァっ!と柊羽くんの斬撃に斬撃を内包した技が繰り出される。


「やった!……ぇ?」


:マジか…一瞬で再生したぞ!?

:ちょっ!これじゃ倒せないんじゃ?!

:ちょっ!!不味い!不味い!シュウくん!!!!

:再生って言うか全身が炎で出来てる?

:消せないと駄目って事か?


「駄目か…だったら…っ!……夢幻っ!!」


「きゃぁっ!」


どっんっ!どんっ!と室内の空気が暴れる…その理由は、柊羽くんが連続で巨人の全身を内包した斬撃で徹底的に切り刻んだから、衝撃波で空気が暴れまくっている。


「ガァァァァァ!!」


流石に堪えたのか初めて巨人が叫び声を上げた。


:おっしっ!効いてる!

:流石にこれなら!ってオイオイオイ!?

:何かキレて無い?!大技っぽい構えしてんぞ!

:ちょっ?!流石にこれはっ!


「ちょっと、不味いのでは…?柊羽くん!!……ぁ…?」


声を出した私に巨人からの殺意を載せた視線が届く。

余りにも濃密な殺意に私の身体は動く事を諦めたかの様に固まり動けなくなる。


「ォォォォオオオオ!!」


ブォンっ…と、大剣を振り回し、部屋の全てを包み込むかの様な巨大な炎の塊が私に向けて放たれた…それはまるでこの世の終わりの様な終焉の炎、抵抗すら無駄だと言うかの様な一撃だった。


…………………………………………………………

「殺らせるかよ。観月は俺が守る。」


動けなくなっている観月の前に瞬時に移動して、正眼で構える。


「内包…20連…ふっ!!!」


腕の筋がブチブチと音を立てて切れるのを無視して、迫りくる炎に思いっ切りぶつけたたっ斬る!

その炎はまるで俺と観月の二人を避けるように、2本に分かれ部屋の壁に向かって飛んでいき大爆発を起こす。


「観月!!」


直ぐに、後ろの観月を抱き寄せ押し倒して伏せて、収まるまで耐え凌ぐ。


「ぁ……柊羽くん……?」


「無事か?観月。」


「は、はぃ…ぁの…?」


「まだ終わってないから、押し倒したお叱りは後でな?ところで…」


「は、はいっ///ななな、何でしょう!?」


観月の手を引いて立たせた後、巨人に向き直る。


「20連じゃ届かなかったか…」


先程よりも溜めるつもりなのか大剣を構えドンドン纏う炎が大きくなって行く、それはほむらと言うべき見た目。


「あの開放を30秒で良い、使えないか?」


俺の言葉に自分の胸に手を当て目を瞑り集中し何かを確認してる観月を見続けた。


「……行けます。残量を考えたら30秒…いえ!2分は持たせて見せます。」


「分かった、無理はしなくて良い。解放したら直ぐに全力のバフをかけてくれ。その後、直ぐに戻して構わない。」


「はい!いきます!…♪~♪~♪」


観月の唄が聞こえて来て見た目が変わり俺に対しての全力のバフが届く。

俺は直ぐに前を見て既に使い物にならなくなった刀を目の高さに構える…


「えっ?!柊羽くん!!!背中!!!酷い火傷がっ!」


「後で直すから今は良い!」


観月を庇った結果の怪我…そんなもんは後回しだ。


:うわぁ…痛そう…

:治癒術使える奴!目赤ダンジョンに!!

:直ぐに行きます!だから無事に戻って来て!!!

:グロい…こんなん治せるのか?!てかポーション持ってく!!!


「柊羽くんっ!」


ドンッ!と地面を割り、一瞬で距離を詰める。

その動きに反応した巨人は、ニヤリと笑い直ぐ様、俺に向けて大剣を焔もろとも振り下ろす。


「お前の弱点は…!ここだろ!!!」


一点集中…普段の斬撃の内包を突きに変える。


「斬るだけしか出来ない訳じゃ無いんだよ!!!」


今出来る最大の内包撃20連を全て突きに変えて、巨人の弱点……


「おぉぉぉぉ!!!月臥げつが!!!」


20連の内包した突きを巨人の持つ大剣に突き立てる。


「ぶちぬけぇぇぇぇ!!!」


ガキィィィィンッと、大きな音を立て焔を突き抜け、自分を焼く痛みに耐えながら大剣に自分の技を突き上げる。

ピキ…ピキピキ…ビキ…ビキビキ……バキッ…バキャンッ!


「ガァァァァァァァァァ!!!」


大剣を真っ二つに折った勢いのままにトドメに移る!!


「これで、俺等の勝ちだ!!!夢幻ッ!!!」


折れた大剣もろとも巨人も斬りまくりそのまま巨人の反対側に突き抜けた。


:勝った…?

:倒したよね…?てか大剣が本体って!!!

:マジか…絶対駄目だと思ってた…

YuuRi:ひやひやさせないでよ…

MaNa:ほんとだよ…良かったぁぁぁぁぁ


「おーいっ!観月!勝ったぞぉぉぉ!!」


光の粒子になって消えて行く巨人を構成していた炎と切り刻んだ大剣とどちらも消えて行くのを眺めながら反対側の入り口付近に居る観月に声をかけた。


「ぁ…はぃ…はいっ!!わわわっ!?」


直ぐに駆けつけようとした観月がふら付いて蹈鞴たたらを踏む。


「観月?!大丈夫か?!」


「大丈夫です。ただの反動ですから。」


ゆっくりと俺に向かって歩いてくる観月に合わせて俺も近づいて行く。

だけど…流石に、今回は限界かな…これだから火のダンジョンは嫌いなんだ…


「柊羽くん…怪我…背中を見せてください!放置したら死んでしまいます!早く戻りましょう!」


「そうだね…流石に帰ろうか、これで目赤ダンジョンも深淵が開いたし奥の部屋で報酬を回収してポータルで戻ろうか。」


「急ぎましょう!肩を!!!」


「大丈夫だって…っておいっ!」


俺の言葉を無視して観月は俺を支えながらボス部屋を抜けて行く。

あ…配信したままだった、てか良く壊れなかったな……


:お疲れ様です!もう直ぐ目赤ダンジョンに着きます!ロビーで待機していますね!

:治癒術使える私も待機してます!観月さん絶対に連れ戻してください!

紗月:病院も手配してるからね!

幸月:お婆様達の方は任せて観月!

YuuRi:病院は私も付き添うからね!シュウ!

MaNa:私も!だから安心してね!シュウくん!


「はは…ははは…何かすげー助けられる事になるっぽいな…」


「沢山の人がこの配信を見ていました。沢山の人が柊羽くんの怪我を見て心配していました。沢山の人が助けようと動いて居ます。」


「うん、本当にありがたいよね…俺なんかの為にさ。」


「なんかではありませんっ!私達を救ってくださって見返りも特に求めたりもしないで、氾濫で身寄りも無くなったのに必死に生きてる柊羽くんを沢山の人が応援してるんです!ですから自分を卑下しないでください!今日、見てて思いました…貴方は死ぬ訳には行かないと言いながら、何処かで死にたがってると、そうでもないとあんな無茶な戦い方なんてしない筈です……」


「そんな事…」


ある訳無い…あっちゃ駄目なんだから……


「自覚がある無しに関わらず、少なくても私はそう感じました!ですからこれからは私が貴方を支えます。神代とか恩人だからとかそう言うのは関係無く支えたいと、支えると決めたんです!柊羽くんが自分を好きになれる様に…だから自分には何の価値も無いみたいな言い方はしないでください…」


ポタポタと観月の目から涙が零れる…俺を支えて歩きながらも泣いてくれてる。


「あ…りが…ご…ん…」


駄目だ、意識が…


「柊羽くん…?柊羽くん?!駄目!起きてください!!!柊羽くんっ!!!!」


大丈夫だよ…少しだけ、少しだけ寝るだけだから…直ぐに目を覚ますよ…


観月の声を尻目に俺は意識を失った。


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