第11話 神代家

「さぁ、座って頂戴。」


あの後、神代家、総当主でもある3姉妹のお婆さんの部屋にお邪魔して、あの観月の姿の事を聞く事した。

俺の前や他の皆の前にお茶が運ばれて来てお菓子も用意され話をする為の体制が整った。


「それでは聞かせてください。あの時の観月の姿の事を観月が解放と言っていた姿の事を。」


俺の言葉にお婆さんは難しいと言うか困った顔をする。


「そうねぇ…観月が神代の力を使ったのは予想外でしたけど…見られてしまいましたし説明しない訳には行かなくなりましたね。」


「皆にも言いましたけど、これからも一緒に戦うと言う事があるのであれば舞台は深層や深淵が主になるでしょう。そうなった場合…あの力に頼っても良いのかが分からないと、俺は一緒には戦えない、知らずに使って貰って取り返しの付かない事態になるのは耐えられない。だから話してください。」


「ふぅ…そうね。先ずは観月ちゃん?後でお説教ですからね?寄りにも寄ってあんな生放送で使うなんて許可していません。」


「はぃ…ごめんなさい…」


「先ずは、我が家がどう言う家なのかと言う所からかしらね?」


俺は無言で頷いて先を促す。

それを見たお婆さんは静かに語りだした。


「神代家の始祖は半神半人なのです。」


「デミゴットって事ですか?」


「そうね、とは言え今は流石に人の血の方が濃いですけどそれでも神の血が無い訳では無いのです。」


「つまり、観月が解放と言って居た姿は……」


「えぇ…神としての姿の顕現みたいな物と思って貰って間違い無いわ。」


「代償は?人の身で神の姿を取る、神の力を引き出す何て真面じゃないし器である身体が耐えられないでしょう?」


「神代は……古来より神事に置いて神を下ろす役割、神器を持ち運ぶ為の役割、そして魔力と言う方が分かりやすいかしらね?龍脈からの力が溜まり溢れてしまいが形を取る前に封じたり、魔力を散らしたりする役割があるのです。それ故に……短命な者が多い。」


「陰陽師みたいな事もしていると……それは兎も角、言い方が可笑しくないですか?短命の者が多いって……その言い方じゃ本来は長命だとも聞こえますよ?」


コクリと俺の言葉に頷き続きを話し始めた。


「本来であれば、一般的な寿命の倍は何もしなければ生きますし老化自体も一時的に止まるのです。」


「つまり……何も無ければ160から200歳位までは生きると?」


「そう。でも、そんなのは人の世界では異常でしょう?ですが……」


「多岐に渡る活動で寿命の調整をしている…?」


俺の言葉に頷くお婆さん……それならあの開放は……


「ならあの開放に拠る代償はどれくらい何です?」


「あの程度であれば減っても数日と言うよりほぼ無いわ。それでも普段よりは疲労が溜まるから怒るには十分な理由でしょう?」


「それは…まぁ…でもなぁ……」


「柊羽くん。そんなに気にしないで?私が良くて開放をしたんですし一緒に戦えて嬉しかったです。そして、同じ力を持つ事が出来たのがとても幸せ何です。」


物凄く綺麗な笑顔で俺にそんな事を伝えてくる観月に呆気に取られながら話を聞き続ける。


「それに、私は人として生きて人として死にたい。神として死ぬなんて真っ平ごめんです。大切な人達と、好きな人と一緒に生きて笑い合って、一緒にお年寄りになって……人として死ぬ。」


それが、私の目標なんです…と観月は言った。


「その為なら必要なら力を使うってか?」


「はい。それに今は、柊羽くんの背中を私が守りたいと…その想いもありますからっ。」


俺と観月の間に良い雰囲気が流れる。

お互いがお互いを見詰めていて…観月の瞳に吸い込まれそうに……


「はーいっ!そこまで!抜け駆け禁止!雰囲気作るの禁止ーー!!」


紗月が俺達の間に入り込んでそんな事を言ってくる。


「全く……油断も隙もあったもんじゃ無い!お祖母様!観月にはキツイお説教が必要です!」


「チッ!…姉さんも紗月も邪魔して……」


舌打ち?!観月が舌打ちした?!


「柊羽もデレデレしないの!」


してないよね?!てか抱きしめないで?!優理!


「優理こそ何で抱きしめてるのさ!柊羽くんの独り占めすんなし!!おっぱいに挟まって良いよ〜?おいでぇ〜!」


茉奈も何言ってるのかな?!え…?挟まって良いの??マジで??


「は?茉奈さんは何言ってるんですか?私だって柊羽くんを挟むくらいはありますし!私ので十分です!」


「ふっ…無理しない方が良いよ?てか観月は腹黒すぎー!直ぐに抜け駆けするし!」


「鼻で笑った?!腹黒って!!!人聞きの悪い事言わないでください!抜け駆けしてません!柊羽くんとは普通に良い雰囲気になるんです!」


「良く言うよね?!さっき思いっ切り舌打ちしておきながらさ!!」


あっ!やっぱり聞き間違いじゃ無かったのね……


「あらあらっ。モテモテねぇ?篠崎君は誰を選ぶのかしら?」


楽しんでないで止めてくれませんかね?


「はいはい。一回落ち着きなさい皆さん。それで、我が家の事に関しては理解して貰えましたか?」


「あぁ……それはまぁ…はい。」


「であれば良し。その上で改めて聞かせて貰いますが、これからどうなさいますか?話を聞いてもと関わりますか?それとも関りを絶ちますか?」


俺を心配そうな顔で3姉妹が見詰めてくる、優理も茉奈もどうするの?って顔してる……関われば面倒ごとにも巻き込まれるかも知れないこういう家が神代だけとは限らない訳だしな。


には深くは関わるつもりは無いですよ。ゴミ掃除をして頂いて居るのでそこは感謝しています。」


「そうですか……」


俺の返答にお婆さんも3姉妹も悲しそうに顔を俯かせる。


「でも、観月達とは関わりますよ。だって、もう友達だし一緒に戦った仲間だと思ってるので。」


「それは、神代家に関わるのと違うと?」


「古くから伝わる家の役目に巻き込まれるのはごめんです。でも、俺の力が観月達の力になるなら俺はとしてとして関わるでしょう。のあれこれなんて俺には分からないですしね?」


「ふふ…うふふ…そうね。確かにその通りね!今はそれで充分よね!」


「柊羽くん…ありがとうございます…っ。」


「ありがとう!お兄さんっ!やっぱり大好きですっ!」


ドンっと俺の背中に抱き着いてくる紗月をあやして、優理も茉奈もうんうんって感じで頷いてるのを眺めてた。


「それで、さっきの武装の話に移っても良い?」


「あぁ、はい。何かを聞かれてもまだ良く分かって無いんですけどね……」


「灼絶と灼断だったわね?属性は火属性、一種の契約型の武装で任意で出し入れが出来ると?」


「はい、そうです。試しては居ないのでまだ分からない事も多いですけど恐らくはあのボスと同じ様な攻撃も出来るのでは無いかと思ってます。」


「少なくても俺の灼断は刀型ですし同じ事が出来るかと、観月の灼絶に関してはどうなんでしょうね?絶って言うくらいだし何かを断ち切れるとか……?」


「炎の力で空間を断絶して隔絶するとか?」


「それヤバくない?その空間の中で焼き殺したり出来るとかだったらエグイでしょ……」


「試して無いから分からないですけど、出来そうな気もしなくも無いと言うか…後は矢が要らないって事ですかね。」


「矢を形成するのは魔力?神代の神力?どっちを使うのかしら…」


「そこも試して見ないとですね……」


「火だから試す訳に行かないしな。俺の刀身も魔力とか精神力とかそう言うので形成出来るってのは分かったけど。」


神力…ね…


「そうねぇ…その辺はこれからって事かしら?」


「ですね、何が出来て何が出来ないのか?代償はあるのか?他にもこう言う物があるのか……検証は必要でしょうね。それと一つお願いがあるんですけど……」


「あら…何かしら?」


「刀を一本戴きたいなと思いまして…お金に余裕は無いので深淵素材等で交換出来れば助かるのですが…」


「予備は必要ですものね。それならとっておきを用意しましょうっ!」


「でも、お婆様、柊羽くんの力に耐えられる程の刀となるとかなりの業物になるのでは?それこそ博物館クラスの名刀でないと……」


「そうねぇ…あぁそうだ!ちょっと待っててっ!」


そう言ってお婆さんはうっきうっきで部屋から出て行く。


「何だろ?なんか凄くテンション高くない?」


「何か、嫌な予感がするんだけど…」


「奇遇ですね幸月姉さん…私もです。」


「二人もなの?私もなんだけど…」


3姉妹が嫌な予感してるってどう言う事?なんかあるの?


「優理達は分かる?」


「「さっぱり!」」


「この家だからとんでもない物があっても不思議じゃ無いしね?」


「それねぇ~…そもそもにして観月の使ってる弓だって巴御前の使ってた弓でしょ?」


「紗月の槍は蜻蛉とんぼ切だし、幸月さんの一つ目の武器は芭蕉扇ばしょうせんで二つ目が短剣の布津御魂ふつのみたまだし…」


「とんでもないの使ってるな…芭蕉扇は兎も角、布津御魂って…いや待て短剣って何?!刀だよねあれ!!加工したの?!いやまぁ、ヒーラーって事なんだろうけど。」


「と言っても病魔が対象だけどねっ。怪我には効果無いしねー。」


流石、神代家って事かぁ……はぁぁ、てか国宝じゃねーの?全部……そんな事を色々と話して居たらお婆さんが一本の刀を持って戻って来た。

でも、その刀を視界に収めた瞬間、俺は自然と立ち上がって構えた……


「流石、篠崎くんね。大丈夫だから座って?今から説明するからね。」


「お婆様…それは…」


3姉妹が引いてるんだけど?やっぱりヤバい奴だろアレ…


「これを篠崎くんにあげるわ。これは、千子村正せんじむらまさ…村正だから妖刀の分類だけど篠崎くんなら使いこなせると思うわ。それに製作者の名前ってだけで別に妖刀としての逸話がある訳では無いから特に使えると思うの。」


「いや…あの…それ…国宝では…?と言うか少なくても最低でも博物館物ですよね?!」


「置ける訳無いでしょう?本物なんて…博物館の物なんてレプリカよ。」


いや、ばらすなってそれっ!


「まぁ、篠崎くんの斬撃を内包する攻撃に耐えられるってなるとこれくらいは必要でしょう?」


「それはまぁ……良いんですか?」


「えぇ、使ってちょうだい。死蔵するよりも使ってくれる人が居る方がこの刀も喜ぶでしょうしね。」


「分かりました。ありがたく…」


テーブルの上に置かれている村正を手に取る。

これから宜しく頼むな?千子村正…と心の中で呟く。


「これで新しい武器とこれから私達とどうするかも決まりましたね。改めてよろしくお願いしますっ!柊羽くんっ!」


「うん。こちらこそだ。幸月さんも紗月も優理も茉奈もよろしくな。」


皆が笑顔で俺に対して笑顔を向けてくれた。

俺は自分が、自分で思ってるよりも沢山の人に思われてるんだと認識したのだった。


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