第10話 灼絶と灼断
「それでは…開封します!」
:わくわくっ
:どきどきっ
:何かな?何かな?
:反応が子供なんよ…
:でも気持ちは分かるw
全員で中庭の真ん中に置かれている報酬に近づいて、俺と観月の二人が代表で揃って前に出た。
「それでは…確認ですね。」
「だな。流石に何があるか分からないし、俺が先に手に取るよ。観月も皆も下がってて…」
観月が俺の後ろに一歩…他の皆は更にその後ろに、そして…念の為なのか使用人さん達も少し離れた場所に居てくれてる。
「あれ?手に取れない…?」
俺が透明な箱の形の中にある刀に手を触れても掴む事が出来ずにすり抜ける。
:ぇぇえ…何で?
:唯の飾り説
:弓の方はどうなの?
「弓も同じだな。掴めない…何か条件でもあるのか?」
:特殊だし所有権とかあるんだろ
:それなら尚更掴めない意味が分かんないじゃん
:倒したのは二人だし二人に所有権が無かったら誰にあるのよ?って話だもんな
:あっ!あれじゃない?同時に押さないと駄目なスイッチとかレバーとか!
:あぁ…同時に取らないと駄目って事?そんな事ってあるの?
:でも試す価値はあるんじゃ?
「二人同時にか…どうするかな…危険が無い訳じゃ無いし…」
「良いですよ。どちらにしても取らない事には始まりませんし、柊羽くんとなら何があっても大丈夫ですっ。」
ニコリと笑顔でそんな事を言ってくる観月…流石にそれには赤面した。
:ニヤニヤw
:顔真っ赤w
:シュウくん可愛いっ!
:やべぇw俺も可愛いと思ってしまった……
「わ、分かった。それなら同時に取ろう。行くよ…?」
コメントの揶揄いは全力で見ない事にして俺の隣に来た観月と共に歩み寄る。
「はい。それでは……」
俺と観月は揃って手を伸ばす。
「「せーのっ!」」
揃って手を伸ばし同時に掴んだ…その瞬間…俺たち二人を業火が包んだ。
------------------------------------------------------------
SIDE 観月
「うっ…ここは…」
一瞬で目の前が真っ赤になって気付いたら知らない空間に居る。
「ふむ…これはまた、美しい少女よのぉ。」
「…!誰ですか…?」
「誰か…そうさな、其方の掴んだ弓と言えば良いかの?」
「弓…?え?だってどう見ても…」
人型のナニカが私の目の前に居る。
「
何も無い空間に見えて居た人型の姿がはっきりと見え始める。
「女性…?それにその…角?鬼…?」
その姿は人間とは思えない程の美しい美貌…花魁の様な肩と胸の谷間が見えて居る和服と、頭部には角があった。
「鬼と言うのは語弊があるのぉ。其方と同じ混ざり者よ。のう?神代観月。」
「くっ。私は貴女とは!!!どうして私の名前を?!」
混ざり者なんかじゃ無い!私は!神代は!
「わらわを手に取った者の事くらいは分かるものよ。そして、お主自信が認めずとも事実は変わらんよ。それが血と言うものよ。」
「うるさいです…私は人間です!」
「ふふっ。そうさな、其方は人間よ、そう思い続けるならそれでも良かろうて……今はな。」
「何なんですか貴女は…何が目的ですか?!」
「今は
「私は…私が掴んだ理由は…」
「詰まらぬ理由であれば、その身を焼き尽くしてくれる。心して答えよ。」
詰まらない理由なら焼き尽くすと…でもそれが何だと言うのか、私が掴んだ理由は、彼と一緒に掴んだ理由は…たった一つだ。
------------------------------------------------------------
SIDE 柊羽
「何だこの空間?」
てか観月は無事かな?俺達を炎が包んだのまでは認識したが、観月を助けるまでは出来なかった…
「幸月さんも他の皆も使用人さん達も居るんだ…俺は兎も角、観月は無事だろう。」
「ほぉ?この状況で他者を想うか……実に愉快。」
「俺の掴んだ刀の化身か?」
「くっ。賢い主よのぉ…嫌いでは無いな。そして一先ずは我と語らう資格はあると……」
俺の目の前に何時の間にか、一人の男が立って居た。
その手には俺が掴んだ刀を無造作に持って立って居るのに、一切の隙が無い。
「試練って所か?俺があんたを使いこなせるかどうかの。」
「はっはっはっは!!!良いぞ!実に良い!では、これ以上の語らいはこれでする事にしようっ!」
「そうなるよなぁ…つーか、無手なんだけど?俺。」
「案ずるな。そら、使うと良い。」
俺の目の前に化身が持っている刀と同じ物がある。
これを使って語り合おうってか…?
「ふーん…面白くなってきた。行くぜ?」
ニヤリと俺の言葉に一つ笑い刀を抜いたのと同時に俺に向かって突っ込んできた。
------------------------------------------------------------
「ちょ?!柊羽!!観月!!!」
「お嬢様?!」
「大丈夫よ。」
「何が?!燃えてるじゃん!!幸月!」
「良く見て、燃えてるのは周りだけで柊羽クンも観月も燃えてない。多分だけど…試練みたいなものじゃないかな?」
:試練って…だって…
:燃えてるけど何が起きてるの?
:シュウくん…大丈夫かな…
:燃えちまえ!シュウとか意味わからんやつは消し炭になっちまえ!!
:うわぁ…ほんと脳味噌入って無いコメントだ
:捕まるだけだし問題無い無い
:今は我慢我慢
「お兄さん…観月姉ぇ…」
周りの心配を余所にどんどん燃え方が酷くなって行く…そして……
「ふぅ…全く…」、「流石に驚きましたね…でも…」
ゴォォォと激しく燃えた後に一瞬で消えて手に取った時と同じ姿のままの二人が私達の目の前に現れた。
------------------------------------------------------------
SIDE 柊羽
ガキィンッ!キンッキンッキンッ!と激しい剣激の音が響き渡る。
「ふんっ!」
化身の持つ刀から焔の塊が放たれる。
「くそっ!あいつの技も使えるのか!」
「はぁぁぁ!!!」
俺の持つ刀で思いっきり受け止める!
この空間だと何時もの技が使えない!!!
受け止めるか避けるしか出来ない!斬れる方が良いのは間違いないのによ!!
「ふむ…そらっ!どんどん行くぞっ!」
俺が受け止めてる間に距離を詰めて放った焔ごと刀をぶつけてきやがる!
ガィィィンッ!とぶつかる音がまた響く!
「貴様は、何故戦うのだ?何故だ?」
「何故だと…?俺が戦う理由がお前に関係あるのか?!」
「復讐だろう?親も親戚も奪って行ったダンジョンに対する復讐が理由だろう?」
「違う!俺と同じ人間を生まない為だ!俺の様な孤児が少しでも減るように戦って居るんだ!」
「綺麗事だな!貴様の中には確かに復讐の焔が
「違う!」
思いっきりキィンッ!と刀を弾きその身体を蹴り飛ばす!
「俺は!俺の為に犠牲になった親と俺を庇ってくれた従妹の姉さんの為にも生きなきゃ駄目なんだ!復讐だと…そんな下らない事を考えてる暇は無い!!俺はどれだけ生き汚くても生きないと駄目なんだ!!!」
「くだらん…貴様はここで死ぬ。自身を偽る者に私を手に取る資格は無い!」
全身が焔に変わる、化身の持つ刀の刀身すらも焔に変わり俺を殺そうと先程とは違う殺意が俺に届く。
「さぁ…死ね!」
「死んでたまるか!!!こんな所で死んでたまるかよ!!!」
突っ込んで来る化身に向かって俺も突っ込む…俺の言葉に反応する様に俺の持つ刀も刀身が焔に変わる。
「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」
ドッゴーーーンッ!とお互いの刀がぶつかって激しい爆発が起こった。
------------------------------------------------------------
SIDE 観月
戦う理由、弓を手に取る理由。
「それは、柊羽くんと共に戦う為。今の私では神代の血に頼らないと隣に立てない。」
この間の攻略、神代の血を開放しないと着いて行く事すら出来なかった。
「神代の血に頼らなくても隣に立てる様に、あの人を支えられる様に私は貴女を取る。貴女の力を求める。」
「何故だ?私を手に取る必要はあるまいて。」
「確かにそうです。ですが……共に戦ってギリギリでも勝利した。私と柊羽くんで掴んだ結果が貴女です。だから私は貴女の力を求める。いずれ神代の血に頼らなくても済む様に…」
「弱いな…実に弱い理由よ。だがまぁ…わらわは嫌いでは無いな。好いた相手の為にか。」
「なっ///好いたって…っ///」
「そうであろう?好いた相手を支える為にだろう?あの者は自身の闇を見ぬふりをしている様だ…神代観月、其方はあの者を照らす光になれるか?」
「分かりません…でも、そうなれたら良いなとは思います。少なくても、一人になんてしません!」
「それで
私は言われるままに、近づく彼女は私に向かって手を伸ばして居る。
「貴女の名前は…?」
「わらわの名前は…」
私は教えられた名前を言いながらその手を取った。
------------------------------------------------------------
SIDE 柊羽
「くっそ…無茶苦茶だろ…ぐっ…」
爆発によって俺も化身も吹き飛ばされた。
衝撃で身体がバラバラになりそうな程の威力で思いっきりぶっとんだ。
「負けてたまるか…死んでたまるか…俺が死んだら、観月が気にする…せっかく色々楽しくなって来たのに…負ける訳には…」
「何故そこまで生きようとする?生きないと駄目だと言いながら自身を捨てるかの様な戦い方をする?死にたがりにしか見えないと何故分からん。」
「うるせぇ…俺は特に才能も無い、出来るのは斬撃に斬撃を内包する事。捨て身でも何でも勝つ為に必要ならやるだけだ。」
「その様な勝ち方で死ねば貴様と共に居た者が悲しむと分からんのか?」
それは…でも…
「俺なんかの為に悲しむ人なんて…って確かに思ってた…でも、今回、死にかけた俺を沢山の人が救おうって動いてくれたのは分かってる。」
「改めて聞くぞ?貴様が私を求める理由は何だ?」
「…俺の為に犠牲になった家族の為…生きる為…俺と同じ人を一人でも減らす為…仲間を、友達を守る為に…」
「綺麗ごとよ…唯の復讐であろう?」
「分からない…復讐したいと思ってるのか思って居ないのか…分からない…でも、あんたに言われてそう言う気持ちもあるんじゃないかと、今は思う…」
静寂が訪れる……俺の言葉を聞いた化身と俺の間に沈黙が訪れた。
「未熟…未熟よのぉ…だがまぁ、良かろうて、貴様に我が力を貸してやる。さぁ、我が手を取れ。我が名を呼べ!貴様を主と認めてやる!」
「良いのか…?つーか、名前は?」
「
「良いぜ…絶対に使いこなしてやる。俺が主で良かったと思わせてやる。」
俺が立ち上がるのと同じくして俺に向けて手を伸ばして来た。
「その意気や良し!さぁ!我が名を呼べ!我が名は……」
俺は名前を呼びながら化身の手を取った。
------------------------------------------------------------
「大丈夫?!二人共!!!」
直ぐに優理と茉奈が俺と観月に近づいて来て体中をぺたぺたと触りながら何とも無いのかを確認してくる。
「だ、大丈夫だって!ちょ!くすぐったいからっ!優理も茉奈も!ちょっ?!」
「私達は無事ですから落ち着いてください。」
:はぁぁぁぁぁ…良かったぁぁぁぁ
:マジで焦ったわ………
:あれ?武器は?消えてない?
:ほ、ほんとだ!何処行ったの?!
「コメントにもあるけど、武器は?」
「あぁ、それなら…ここに。」
俺は上着を脱いでタンクトップになって露わになった肩を皆に見せる。
:ひゃぁぁぁっ///筋肉素敵!
:抱きしめられたい!ハァハァハァハァ
:確かに腕とか引き締まった筋肉ですげーけど…
:全部脱いだ訳じゃ無いんだからさぁ…
「ん?入れ墨?」
「違うってっ。やっぱりあの武器は特殊だったみたいで俺の中にあるんだ。観月もそうだろ?」
「はい。流石に脱ぐ訳には行きませんから見せられませんけど、同じ様に肩に証があります。」
「ぅぇぇぇぇ…それって半端な武器じゃ無いじゃん…てか報告とか無い初物じゃないの?」
紗月がちょっと引きながら俺と観月にそんな事を言う…てか初物って…
「初物云々は兎も角…出せる?」
幸月さんの言葉に俺と観月はお互いにお互いを見て頷いた後に手を前に出してそれぞれの名前を呟く。
「来い、
一瞬の後に俺と観月の手の中にはそれぞれの武装が現れる。
一見すると刀身が深紅の刀と、深紅の弓。
「魔力を込めたらあの巨人みたいな技も使えるし、刀身を焔に出来る。と言ってもここで試す訳には行かないけどな。」
「私のは魔力を込めると弦も矢も現れるみたいです、勿論ですが普通の矢も放てます。」
ぽかーーーーんと、皆の開いた口が塞がらない程、驚いてる。
人間って本当に驚くと声も出ないんだなぁ……
:神話の武器かな?
:確かに…やばすぎないか?
:これってさぁ…属性持って無くても火は使えるって事?
:この手の武装が他にもあったら色々な属性を一人で使える?
:夢は広がるけど…確定で手に入る訳じゃ無いだろうし…ねぇ?
:盗まれないのは良い事?
:腕ごと持って行かれるんじゃない?やるでしょどっかの国とか
:あぁ…その危険があるか…でも流石に負けないでしょ。
「何じゃそりゃぁぁぁぁぁぁ?!」
「凄い何てものじゃ……」
「お兄さんも観月姉さんも意味分からない……」
「これはちょっと…話し合いが必要かも知れないわね…」
困惑と驚きと色々な感情が籠った顔で俺と観月を見詰めてくる皆を見ながら俺達は手に入れた武器を消して、そのままの流れで挨拶をして生放送も終わらせたのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます