第9話 友達
「ただいま。」
「おかえりーっ!私もただいまっ!」
「ぇ…お、おうっ!おかえり?」
誰も居ない俺の家。
遺産の一つの一軒家…玄関を開けて誰も居ない家に向けてただいまと声をかけた俺の後ろから、付いてきた茉奈がおかえりと、声をかけてくれてそのまま、ただいまと…
「へへーっ!何と無く?だよ!嬉しくなかった?」
「いや…返答があったのは何か嬉しかった。ありがとな。」
「いえいえっ!神代家に行くのは夕方でしょ?それまでゆっくりしよっ!」
「それまで居るんかい…良いけどさぁ…」
「エロ本探ししよーーっと!掃除がてら!」
「エロ本なんて無いって…無駄な物を買う余裕は無いよ。」
「無駄では無いでしょ!男の子なんだし必要でしょ!……あっ!掃除とかする前にやる事あった!案内してほしい!」
「やる事って?案内?」
俺は茉奈に背中を押されるままに廊下に出て茉奈の言う場所に案内をしたけど、茉奈の言ってくれた事に自然と笑顔になった。
------------------------------------------------------------
チーン…
茉奈が仏壇の前で手を合わせてくれてる。
茉奈が案内して欲しいと言ったのは、仏間だった。
そこで、俺の両親に挨拶をしたいと言ってくれて、俺には断る理由は無かった。
「茉奈、ありがとうな。」
「んーんっ。大事な事だもん、ご両親が居たから私を始めとした優理も観月達も助かった、だから柊羽クンを産んでくださってありがとうございます、命がけで助けてくれてありがとうございますってね。」
「そっか。そっか…」
茉奈の気持ちが嬉しいと、本当に感じる。
「よしっ!次は掃除だね!入院してた間に埃も溜まってるだろうしね!」
「そうだな。頼んだ!俺もやっけど!」
その後、茉奈と一緒になって家の掃除を熟して、買い物をして茉奈が手料理を振舞ってくれて…一緒にゲームしたりして過ごして夕方までの時間を潰すのだった。
「んじゃ、そろそろ行くか?観月達から連絡は?」
「えっと…うん!学校終わったからこれから向かうってさ!私達もいこっ!」
「了解ー。はぁぁ…」
「溜息なんてついてどうしたの?」
茉奈と一緒に持つ物を持って片付けもして一緒に家を出る時、ついつい出てしまった溜息に茉奈が突っ込んで来る。
「いやさ…もう神代家に行く事も無いだろうなって思ってたんだよね…それがさ?こんな簡単にまた行く事になるなんてなぁーって思ってさ。」
「行く事無いって思ってたの?」
「そりゃそうでしょっ。財閥の家だよ?俺みたいな一般人が行く用事なんて無いでしょ。」
「ん~…そう言う考え方は好きじゃないかな~…確かに柊羽クンの考えも分かるよ?私達みたいな一般人が古くから続く財閥に関わるなんて良い事なんて無いってのも分かるし、本来はあり得ないってのも分かるよ。」
「だろ?別に自分を卑下してるとかじゃ無く普通に考えたらそうだろ?」
茉奈は俺の前を歩きながらくるっと反転して後ろ歩きで俺と話す…良くこけねーな…?背中に目でも付いてるんか?
「うん、分かるよ。でもさ、それは何の接点も無ければの話でしょ?私達は同じ街に住んで、同じ学校に通って居て、先輩と後輩にそれぞれが居て、更に同じクラスにクラスメートとして居るし、何よりもう友達でしょ?だからさ、友達の家に遊びに行く事っておかしい事?」
「おかしくは…無いな。確かにその通りだわ…何か構えてたの馬鹿らしくなったっ。」
「でしょっ?柊羽クンの場合は状況とか色々あって他の人よりも気にしてしまうのかも知れないけど、私達は味方だし、友達だよ?変な遠慮とか変に距離取ったりとかはして欲しくないかなっ。」
俺に近づいて下から上目遣いで見上げながら聞いてくる美少女…それは流石にズルいと思うから…ちょっとだけやり返す。
「どっかの国の王族とか天皇陛下が相手でも同じ事言えるのか?」
「う゛っ……それはズルい…流石に私だってそこまでの相手ならちょっと自信無い…」
ぷくーっと頬を膨らませて拗ねた顔して俺を睨んで来る茉奈を笑いながら俺は先を歩く。
「ほらっ。拗ねてないで早く行こうぜ!友達達が待ってるんだしさ!」
「むぅっ!待ってよ!置いて行くなぁー!」
俺に追い付いた茉奈はそうするのが自然だとでも言う様に俺の腕に自分の腕を絡みつかせて胸を当ててくる。
流石に、ちょっと慣れはしたけど…茉奈みたいな巨乳の美少女に抱き着かれるとドキっとするし…心頭滅却…溜まるな!一か所に力を溜めるな!落ち着け俺!
------------------------------------------------------------
〜神代家〜
あっちこっちから視線を感じながら、茉奈と神代家に辿り着いた。
直ぐに中に通されて既に帰ってきてる観月達の待つ中庭へと案内される。
襖を開けて部屋の中に入ると俺と茉奈を待っていた紗月、観月、幸月、優理が和室で寛いでる。
「あっ!お兄さんー!いらっしゃーいっ!待ってましたっ!」
俺の姿を確認した紗月が直ぐに抱きついて来るのを受け止める。
「待たせてごめんな。幸月さんと、観月と、優理もごめん。」
「いえ…私達も先程、到着しましたので大丈夫ですよ。」
「そうそう!昨日、お見舞いに行けなくてごめんねぇ〜。ちょっと手が離せない事あってさ。折角、目を覚ましたのに本当にごめん!」
「気にしなくて大丈夫ですよ。幸月さん。ところで、観月のあの姿の説明とかはして貰えるんですか?」
「ん〜…その前に何で聞きたいのか教えて貰える?」
少し目付きが鋭くなった幸月さんを見ながら俺は自分の考えを話す。
「今回、観月のお陰で深層のボスを倒せた。それで深淵が開いたけどこれから先、観月を筆頭に神代3姉妹と関わるならあの姿の事を、リスクを知らないと頼って良いのか?戦術に組み込んで良いのかの判断が出来ない。リスクを知らずに手遅れになれば自分を許せなくなる。だから知りたい。」
俺をジッと見詰めてくる…その目から目を離さずに俺も見続ける。
「分かりました。良いですよ。」
「幸月姉ぇ?!良いの?!」
「えぇ、見ている訳だし、柊羽くんが言ってる事も間違えてない。でも、この話は私からよりもお祖母様から聞いた方が間違いが無いから、先ずは、報酬の確認からでどうかな?」
パンパンと、幸月さんは手を鳴らす、襖が開いてお手伝いさんが入ってきて、幸月さんからの伝言を受け取って直ぐに部屋から出ていった。
「そうだ!折角だから配信しようよ!お兄さんっ!」
「え?配信?」
「うんうんっ!皆に無事だったよっ!って報告と一緒にお宝を開けるの!助けに来てくれた人達も無事な姿みたいだろうしさっ!ねっ?」
「良いと思うよ、柊羽。タイミング的に丁度良いと思うもん。」
「まぁ、それもそっか…俺の為に駆け付けてくれた人達へのお礼も込めてやろっか。」
「直ぐに準備しますね!」と、観月もやる気を出して、茉奈も優理もノリノリになってるしお礼にもなるし、やらないって選択肢が無くなった。
それから少しして、準備が整った俺は配信をスタートさせる。
「どうもー、見えてますか?シュウです。」
:待ってたー!無事で何より!
:元気な姿助かる!
:本当に助かって良かったよぉおぉぉぉ!
:シュウくんの笑顔助かるー!
:現地に居たから傷や怪我は綺麗に治ったのは分かってたけど不安だったよっ!本当に良かった!
「皆さん、本当にありがとうございます。俺の為に駆け付けてくれて、ポーションも使ってくれて、治癒師の皆様も必死に治癒術かけてくれて本当にありがとうございました!!」
しっかりと頭を下げて見てくれてる皆にお礼の気持ちを伝える。
:ちゃんと謝れて偉いっ!お礼言えて偉いっ!
:元気な姿が見れただけで頑張りが報われたから良いのっ!!
:余りの酷さに目を背けたくなったもんね…
:本当に生きててくれて嬉しいよっ!!
「何か照れますね…こんなに赤の他人の俺の為に沢山の人が動いてくれて無事を喜んで貰えて…」
:こら!他人とか悲しい事言うなし!!
:そうだぞー!確かに他人かもしれないけどどうでも良い他人では無いっての!!
:そうだ!そうだ!好きな人を助けたいって思って何が悪いのかー!!
:もう…あんな無茶な戦い方しちゃ嫌だよ…?死ぬかもってなって本当に悲しかったんだからね!!
:もっと自分を大切にしろー!ばかたれ!!!!
「ぐすっ…すいません…本当にごめんなさい…」
「分かりましたか?私達だけじゃない、ファンの皆さんも皆が柊羽くんを案じています。貴方は沢山の人に愛されていると言う事を忘れないでください。」
観月に続いて、幸月さんも紗月も…優理も茉奈も皆が俺を支えてくれる。
:GodDess…やっぱ居るしw
:居ると思ってたw爆発しろもうw
:何となく神代家じゃないかと思ったら案の定w
:むぅ…GodDessずるい!私もシュウくん慰めたい!
:は?譲らねーよ?!シュウくんは私のおっぱいで癒すし!
:よろしい…戦争だな!!!
:女どもは女どもでさぁ…羨ましいのはわかっけどw
「あ、あはは…兎に角!本当にありがとうございました。無理と無茶はしないとは言えないけど、もっと自分を大切にしたいと思います。」
:よろしい!戦いだから仕方ない部分はあるのは分かるけど!
:それでも出来るだけ傷つくのは見たくないんだからね!
「それでですね!今日は元気になったぞ!って言う報告とこの間の報酬の開封を行いたいと思ってます!」
:おおおお!シュウくんは気絶してたから見て無いだろうけど今まで見た事が無い形だったんよ!
:そうそう!物凄く気になってた!
:観月ちゃんの話だと刀と弓って言うのは分かってるけど!
:どんな性能なのかとか形なのかとか分からないから凄く楽しみ!
:シュウくんの刀も駄目になっちゃったしね!
「そうなんだ。だから代わりの刀が手に入るのは凄く助かるんだ。それじゃ…観月っ。」
「はいっ!こちらにどうぞっ!念の為ですが、庭に置いて置きました。」
:何があるか分からないしねっ!
:うわぁ…ここからでも神秘性を感じるとか凄い…
:宝具だったりして…w
:宝具てwまぁw言いたい事は分かるけどw
俺と観月を先頭に優理も茉奈も幸月さんも紗月も付いて来る。
全員が期待に胸を膨らませながら……頼むぞぉ~…新しい武器ぃ…
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます