第12話 シュウの友達?兄貴分?母代わり?

「柊羽!こっちだ!こっち!」


「居た居た!待たせた!すまん!」


「良いって!別に遅刻した訳じゃ無いしな。」


神代家の話を聞いてから数日、俺は学校終わりに友人と合流した。

そいつは、俺と同じく孤児仲間で、昔から仲良くしてるやつ。


「それにしても、柊羽が今じゃ一躍大人気の時の人だなぁ……」


「止めろってのー!俺は俺だよ、別に変わらないさ。そう言う信志しんじだって彼女出来たって大喜びだったじゃねーか。しかも探索者。」


不知火しらぬい信志、気兼ねなく話せるしお互いに気を使わなくても良い相手だ。


「それはそうだけどさ…彩花あやか…あぁ、彼女な?俺みたいな孤児と付き合ってくれて彼女になってくれてって今でも夢みたいだよ。」


「まぁ、気持ちは分かる…俺等みたいな孤児となんてって思うもんな。今日は良いのか?一緒に居なくて。」


「今日は友達と一緒に狩りに行ってるからね。柊羽にも会いたいとは言ってたから凄く残念がってた。」


ふーん…まぁ、人気になったから有名人に会いたいってだけだろうけど、信志の彼女なら俺も会ってみたいのは間違いないか。


「んじゃ、次の機会にだな。ところで、先生は?」


「今日は院に居るってさ。柊羽が来るの楽しみに待ってるって言ってた。」


「そっかっ。俺も何だかんだで世話になってるし、挨拶出来るのは嬉しい。」


「柊羽はそう言う奴だもんなー。取り合えず行こうぜ。」


「おうっ!他の子達にも会うの久しぶりだし楽しみだ。」


俺と信志はとある孤児院に向かって歩いてる。

そこは…孤児になった俺を気にしてくれたが運営してる孤児院。

日本で孤児院ってのも凄い話だけど氾濫で親を失う子が増えてるから国からの支援も込みで運営してるのが多かったする。


「楽しみだな…沢口さわぐち先生に会えるの。」


「俺も院を出て以来だから楽しみだわ。色々話す事あるしな…」


「信志は高校卒業と同時に出て一人暮らししながら大学行ってるもんな。てか、今更だけど丁寧語使った方が良いか?」


「やめろ!気持ち悪い!柊羽に丁寧語使われるとか鳥肌立つわっ!」


「酷くねぇ?鳥肌とか酷くねぇ?」


ケラケラと男同士の馬鹿なノリで話しながら俺と信志は何時の間にか辿り着いて居た孤児院の門を通り抜けた。


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SIDE 彩花


はぁぁぁぁ……寄りに寄って今日はパーティーメンバーとの狩りとかさぁ…今話題のシュウくんに会えるかもだったのになぁ……


「ちょっと彩花!何をボーっとしてるの!タンクなんだから気を抜かないでよ!」


「別に抜いて無いし!里香だってアタッカーなんだからちゃんと決めてよね!」


「はぁぁ?!めっちゃちゃんとやってるし!」


「もう…二人共、喧嘩してないで…ほら!次来るよ!」


沙羅の声で私は近づいてくる魔物に意識を移し、手に持っている大楯を構えなおすの同時に…ガキィィン!と魔物の獲物が私の盾にぶつかり、それを確りと踏み込み押さえる。


「はぁぁっ!我が両翼は落ちる事を知らずっ!」


動きが止まった魔物に彩花が詠唱をしながら斬りかかる。

2刀を振り回して一気に両腕を切り落とし、その勢いのまま首を刎ねた。


「我が焔が全てを焼き尽くす……」


他の取り巻きは沙羅の炎の魔法が焼き尽くす。

これが私達のスタイル、私が押さえ、里香が斬り捨て、沙羅が焼き尽くす。

この連携でずっとやってきた。


その後、セーフセリアまで辿り着いた私達は一息いれて休憩に入った。

信志君、そろそろ孤児院に着いたかな…?もう会ってる所?


「どったの?彩花。」


「ぇ…あぁ、信志君はもう孤児院に着いたかなーって思ってさ。」


「ふ~~んっ。そんなに気になるんだぁっ。らぶらぶ?」


「もうっ。揶揄ったら悪いよ里香?ラブラブで良いじゃんっ。」


私の言葉に里香も沙羅もニヤニヤとした顔で聞いてくる。


「う、うっさいなっ!良いでしょ!それに、今日はシュウくんと一緒に行くって言ってたし!」


「へ?シュウくんって…もしかして?」


「今、話題の…?シュウくん?GodDessを助けた?」


「うんー。昔から仲が良いんだってー、と言っても最初は思いっきり殴り合いしたらしいけどっ。」


シュウくんがまだ探索者になる前、孤児院で会った時に腐ってたシュウくんに喧嘩を売って思いっきり殴り合いの喧嘩をしてすっきりさせてやったって言ってた。


「殴り合い…?何で?」


「えっと、ほら…シュウくんって目の前で親も親戚も殺されてるって言ってたでしょ?それ関係で最初は腐り切ってたみたいなの。」


これ、話して良いのかな…後で怒られそうな気がするけど、里香と沙羅になら大丈夫って信頼はある。


「それで、シュウくんってご両親の残した財産もあるし帰る家もあるから孤児院には入らなかったんだけど、子供だから色々な手続きとか保護者として必要な色々の為に信志君の居た孤児院の先生が紹介されたらしいの。その時に知り合って、見てられなくて喧嘩売って思いっきり殴り合いして暴れさせてスッキリさせたって言ってた。」


「男の子だなぁ…今日、会えたかもしれないから機嫌悪かった訳ねぇ……」


うっ…!そりゃそうなるでしょ!!


「まぁ……良いけどぉ〜……元々こっちが先約だし……」


「タイミング悪かったって事で次の機会にね。私も放送は見てたけど凄いよね。」


うん、本当に凄い…信志君から探索者の友達が居る、同じ孤児仲間でくそ強い!って聞いてたけどまさかあそこまで何てね……


「凄かったよね。あの巨人との立ち回りもだし剣技もだし観月ちゃんを守る動きもだし…」


「それね!狙われた瞬間に前に来てだったもんね!」


「普段も戦闘中も格好良いのに、あの五人に振り回されてる時は可愛くなるしっ。」


「キュンキュン来るーっ!」と二人は盛り上がってるのを見ながら私達と同じく三人組の男が近づいてくるのに気付いて、私は二人に注意を促しながら各種レコーダーのスイッチをいれた。


…………………………………………………………

「お久しぶりです。ご無沙汰してすいません。」


孤児院へ入ると直ぐに沢口先生が出迎えてくれて…


「シュウくん、元気そうで何よりね…放送は見てたけどヒヤヒヤしてたわよ。」


俺の顔を見るなり直ぐに心配そうな顔で案じてくれる。


「本当に無事で良かったわ。信志くんもおかえりなさい。最近はどう?怪我とか病気とかしてない?」


「はい。ただいまです。俺は大丈夫ですよ、それに支えてくれる恋人も出来ました。」


「あらあらまぁまぁっ!それは何よりねぇ〜っ!」


信志の報告に本当に嬉しそうに楽しそうに顔を綻ばせてくれる。

この人は、本当に赤の他人なのに親身になってくれるし心配もしてくれて、何かがあれば直ぐに駆けつけてくれて、ちょいちょい連絡もくれて何時も何時も気にしてくれてる。


「本当にお久しぶりです。何時も気にかけてくれて本当に感謝しています。」


「もうっ!柊羽くんも私にとっては子供の一人なんだから!お母さんに変な遠慮なんてしないの!」


「はい……ありがとうござ…ありがと、母さんっ。」


ウンウンと嬉しそうに笑顔で頷く沢口先生の背中を追いかけながら俺と信志は、院の奥まで歩いて行く、そこにはこの孤児院でお世話をしてる子供達が沢山集まっていて…


「「おかえりなさい!信志兄ちゃん!柊羽兄ちゃん!」」


沢山の笑顔で子供達が迎えてくれたのだった。


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SIDE 彩花


はぁはぁはぁはぁはぁ……やっぱり碌なもんじゃなかった!

ダンジョンで話しかけて来て一緒に狩りをしようなんて言って来る奴等に真面なのは居ないの分かってるのに!!!


「ほんとごめんー!」


「だから無視しろって言ったのよ!」


「良いから!ポータルまで走る!」


「う、うん!」


待ちなよー!逃げなくても良いじゃんー!と後ろから軽薄な声が聞こえてくるのを無視しながら急ぐ。

あーーもうっ!ほんとウザい!襲われて死ねば良いのに!

セーフエリアに入って来て直ぐに私達に近づいて声をかけて来た。

最初は良い人を演じてたけど、目の奥には下心しか見えなかったから相手にしなかったのに直ぐに正体をあらわにして襲い掛かろうとしてきたから逃げ出した。


「あっ!!………行き止まり……」


前を行く沙羅の足が止まる…私達の目の前にはダンジョンの壁があって、追い詰められた形になってしまう。


「…二人共、構えて、最悪、殺すよ…」


「で、でも……人を殺すなんて…」


「レイプされて殺される位ならっ!救援信号も出しておいて!」


私も信志くんに助けてと連絡はしておく、シュウくんと一緒に居る筈だし、もしかしたらにかける為にも!


「おいおい…酷いなぁ〜…ちょっとお互いに気持ちよくなって写真と動画撮ってこれからも愉しませて貰うだけだってぇ〜……って事で追い詰めたっぞっとっ。」


脅す気満々じゃないの!こんや奴等にヤラれる位なら自決してやる!


「まっ、言った所で抵抗は止めないんだろうし、ちーっとばかし痛い目にあって貰うかな。」


クルクルと手の中で得物を遊ばせながら近づいてくる……もう少し…後、数歩……


「入った!シールド…っえ?あれ…?」


身体に力が入らない…立って居られない…なにこれ…?


「やっと回ったかぁ…耐性でもあるんか?」


「なに…これ…」


「何を…したの…!」


「あぁん?お前らが逃げる前にサクッと傷付けたろ?毒がやっと回ったんだよ。」


「これでゆっくり楽しめるってもんだわ!」


こんな小さな傷から……まさか毒まで塗ってるなんて……


「とは言えだ!死体とヤル趣味はねーし抵抗力を奪う程度の毒だから安心しな!」


何の安心をしろって……ごめんね…信志くん……

覚悟を決める、だけど…嫌なものは嫌だ!最後の抵抗で私は相手を睨みつける。


「折角、3:3だし楽しも……ぷぺぇ!!?」


ゴっ!と殴られた音の後に変な声が聞こえて私達に近づこうとしていた奴の上半身だけがダンジョンの壁に叩きつけられて…残された下半身から、ブシュゥゥゥゥ……と激しく血が吹き出してる。


「ぅっ……アレってミノタウロス…?」


神話通りの見た目の牛の頭の怪物が大斧を振り抜いてから斧を振り回してもう一人を斧で叩き付けて壁まで吹き飛ばして……最後の一人は、反応出来なくなってるのを良い事に頭から噛み付いて食い千切った。


「猿からは助かったけど…このままじゃ…」


里香がボソッと零すけど、その通りに私達も動けない事に変わりは無い。


「ブモッ…ブモブモッ……」


バキ…ゴキ…ゴリ…メキ……頭蓋骨を咀嚼する音が響き渡って……最悪だ。


「ブモッブモブモッ!」


何しようとしてるの?下半身だけの死骸を掴んで……


「うげぇ…まぢかぁ……」


「うっ…ごめんなさい。吐きそうです…」


気持ちは分かる…てか私も吐きそう…男の死骸のお尻を使って…ぉぇ…


「えっと…これはどう言う……?」


「取り敢えず殺します?」


「うん…殺そう!気持ち悪いなんてもんじゃない!!」


うっそぉ…GODDESSの幸月ちゃんと優理ちゃんに茉奈ちゃんだぁ……


「うっそ…マジで…?」


「私達も分からないけど助かったのは間違い無いかな?」


それは確かに……てか、シュウくんも居る!!!…って流石はシュウくん。

一撃で首を切り落として倒しちゃった?!

はぁぁ…助かったのだけは間違い無いし良かった…色々と聞かないとだけど…


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

遅くなりましてすいません。

近況ノートにも書きましたが母の事がありまして筆が一切進みませんでした。

年内は最後の更新となります。

30日は5時出勤、31日は3時出勤と年末恒例の早朝と深夜出勤になりますので、更新している余裕は無いと思います。

と言う訳でして、年明けてからも母の検査結果次第ではどうなるか分かりませんので気楽にお待ちいただけると幸いです。


それでは……皆様!良いお年を!!!

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