第20話 報告

「優理。具合はどうだ?」


「大丈夫だよー。明日には退院出来そう。」


「そっか……それなら良かった。姉さんが迷惑かけて本当にごめん。」


「もういいよっ。お陰で強くなれたしね。」


茉奈との一夜の後、俺は優理のお見舞いに来ていた。

彩花さん達の救出とアステリオスの討伐の後、剣に宿り消えたと思っていた姉さんは優理の中に残っていたらしく剣の使い方を教える為に精神世界で優理を殺しまくったらしい……そのフィードバックによって優理は全身筋肉痛で動けなくなり入院生活を余儀なくされた。


「それでさ、お願いがあるんだけど……」


「お願い?」


「うん、特訓して欲しいの!」


「特訓って言われても姉さんとの訓練で身体には馴染んでるだろ?」


その結果で入院してる訳だしな?


「それはそうだけど、精神世界の中でだけだから実際に動けるか分からなくてさ。」


「あぁ……そゆ事なら構わないよ。病み上がりでダンジョンだと危ないし神代家の訓練場でも借りる?」


「ダンジョンでも良いけど……奥行かないと他の人に迷惑かけちゃうか。許可取れるなら大丈夫っ。」


俺と優理が話していると、コンコン…と、ノックの音が響く。


「はーい!どうぞ!」


優理の返事の後、扉が開き皆が入ってくる。そう、皆だ。


「どう?優理、大丈夫?」


「優理お姉さんどうですかぁ?」


茉奈と紗月に続いて観月と幸月も同じ様に聞いていた。

そのまま、茉奈は俺の隣に座りピタリと肩がくっ付く。


「む……?ねぇ…茉奈。柊羽と距離近くない?妙にくっついて無い?ねぇ?」


こわっ!冷え冷えとする程の目で俺と茉奈を見ながらそんな事を聞いてくる優理。


「そう?別におかしくは無いでしょ〜?個室って言っても限界はあるし詰めて座るのはおかしく無いでしょ?」


「だとしても!今まではそんなふうにくっ付いたりしなかったじゃん!」


「そうですねぇ……お二人の間にあったんでしょうか?」


「そいえばここ一週間は毎朝一緒に登校してるよね?お兄さんと茉奈ちゃん。」


「何時も一緒になってるって言ってたけど……もしかして付き合い始めた?」


「いや……別に付き合ってる訳じゃ……」


「そうだよぉ~?単純に!毎日泊まってるだけ!」


「は?」、「ぇ?」、「ふ~ん……」、「柊羽くん?」


こ、こわっ!!!幸月の柊羽くんの冷たさがさぁ!!!!


「こ、こわ……柊羽!助けて!?」


「いやいや……茉奈がバラすからだろ?!」


「柊羽…?どう言う事?」


優理がハイライトを消して無表情で俺に問い掛けてくる。


「それで、最近は二人共同じ香りさせてたんだぁ……ふーん……」


紗月も表情が消えてなんの感情も感じない声で俺に問い掛ける。


「「柊羽くん……ご説明を。」」


有無を言わさない声と圧力で観月と幸月に詰め寄られる俺。


「説明って言われても…茉奈からお願いされて特訓してただけだぞ?それに、探索者とは言え、女の子を遅くなる事が多いのに、帰らせる訳にも行かないから泊めていただけだし、何をそんなに怒ってるんだ?」


流石にアレだ……茉奈とエッチしたとは言えないからそこは絶対に秘密!!


「成る程……理由は分かりました。探索者ですし夜中歩いてても問題は無いですがそれで帰らせる柊羽くんでは無いのも分かります。」


「でもそれならそれで時間を早めに切り上げるとか出来たよね?茉奈。」


「い、良いじゃん!私だって女の子なんだよ?!強くても夜道は怖いよ?!」


「まぁまぁ、俺も甘かったって事で茉奈を余り責めないでくれ。」


「それだよ!なんか妙に優しくない?柊羽。」


優理がかなり疑って来てる気がする……とは言え俺としては変わってる気は無いしなぁ〜……そら、多少は気持ちの面では変化してるけどさ。


「茉奈がさ……強くなりたいって。このままだと皆に置いて行かれるのが見えてるからって……だから俺もかなり本気で鍛え上げたからどうしても時間的にな。」


「「「「…………」」」」


「神代の力を持った3人、優理は柊羽くんのお姉さんの力を手に入れたけど私は何も変わってないからどうしてもさ。」


これ以上はお互いにボロが出る、エッチしたのがバレる気がするから茉奈も神妙な顔で俺に話を合わせてくる。


「成る程……強くなりたいのは分かります。置いていかれたくないのも……疑ったりしてすいません。」


「疑うって……?観月は何を??」


「えっ!?そ、それは……そのっ///」


俺の質問に顔を真っ赤にする観月。

いや、良く見たら紗月も幸月も優理も真っ赤になってる!


「あ、あぁぁ~…///そ、そう言う事ねっ///そっちの事は…まぁ?///」


「は?ちょっと茉奈!柊羽?!もしかしてエッチしたの?!」


「してないよ!!べ、別に私はそうなっても良いけど?///」


「怪しい…茉奈ちゃん、何か隠してない?」


「隠してない!隠してない!そんな事よりも!えっと!!!」


ジトーとした目で皆から見られてる茉奈に手を貸すと言うか助けると言うか……?


「そうだ!幸月にってか神代にお願いなんだけどさ。」


「はいっ。何ですか?」


神代を代表して幸月が俺に向き直す。


「さっき皆が来る前に優理に頼まれたのもあるんだが、神代の訓練場を借りられないかな?優理が身体に馴染んでるかを試したいみたいでさ。」


「あぁ!そう言う事であれば問題ありませんよ。優理さんは明日には退院でしたよね?明後日のお昼位からで大丈夫ですか?」


「う、うん。私は良いけど柊羽は大丈夫?」


コクリと俺は一つ頷く。


「それさ、私も参加して良い?特訓の成果を見て欲しいし優理の新しい力も知っておきたい。」


「それなら私も……いえ、私達もですね。」


「まぁ、自宅だしねぇ~。参加するよ!良いよね?柊羽お兄さんっ!」


「それじゃ明後日は皆で訓練か。」


ちょっと楽しみかな?優理が姉さんの力をどれだけ使える様になったのか?姉さんのソードダンスを扱えるのか?

それと……茉奈が紅月と蒼月を使いこなせるか。

あぁ……出来るなら観月が手にした灼絶も使えるのかどうかも。


「うん。楽しみだぁ!柊羽から受け継いだ剣も使い熟さないとだしもっともっと強くなるよ!私!」


茉奈が最大級の笑顔で俺にそんな事を言ってくる。

茉奈の笑顔で俺は赤面する……視界の端々からの冷たい視線と空気は気付かないったら気付かない!!


「さて!俺はこの後、少し用事あるから今日は帰るよ!またな!」


そそくさと部屋を退出する。

だって怖いんだもん、なんか知らんけどさ。


…………………………………………………………

SIDE 茉奈


に、逃げた!!絶対に逃げた!!

逃げたくなる気持ちは分かるよ?だって私も怖いもん!!

帰ったらイジッてやるんだからね!!鍵も受け取ってるし逃さないかんね!!


「茉奈。説明。シタでしょあんた。付き合ってるんでしょ。」


「抜け駆けしましたね。諦めて話しなさい。」


「茉奈ちゃん。悪い子だね。お仕置きかな。」


「お姉さんは悲しいな。茉奈ちゃんがこんなに悪い子だったなんて。」


ヒェ……四人とも疑問符が全く無いんだけど?!


「か、勘ぐりすぎだから!好きだよとは伝えたけどさ!!」


流石にしましたとは言えないしねぇ?てか、言いたくないし皆のも聞きたくないし?


「ふ〜ん……それで?」


「べ、別に普通だよ?付き合って欲しいとは言ってないし柊羽が誰を選ぶかは分からないし?アピールはするからとは言ったから、くっつくのはその一環なだけ?かな。」


言えるとしてもコレくらいだなぁ〜……


「まぁ、言ってない事は有りそうですが、嘘は付いて無さそうですし?怪しい部分はありますけど取り敢えずは良しとしましょうか。」


「それで?柊羽に何を貰ったの?」


「えっと……剣だよ。柊羽との特訓でボロボロになって買い替えが必要って感じになっちゃってね?それで柊羽がお義父さんの使っていた2刀を私に譲ってくれたの。」


「……え?柊羽くんのお父さんの武器ですか?」


まぁ……驚くよね。私も落ち着いてから驚いたもん。


「今度見せるよ。紅月と蒼月って言う2刀の剣。凄く綺麗で凄い力を持った剣。柊羽に託された大切な想いを。」


「ずるい…ずるいですー!観月姉さんも優理お姉さんも茉奈ちゃんも!幸月姉さんもお兄さんと色々な事したり何か貰ったりして!ずるいです!」


「大丈夫だよ。柊羽はちゃんと紗月の事も見てるから。そこだけは間違いないからさ。」


むぅ…と紗月はむくれながらも口元が引くついてる。

気にしてるってのが嬉しいのを隠せてないねぇ。


「紅月と蒼月……?もしかして……柊羽くんのお父さんって……」


「幸月さん?」


「あぁ、うん。ごめんね。多分勘違いだと思う。」


「幸月さん?知ってるんですか?」


「本当に気にしないで!勘違いだと思うから!」


もしも……考え通りだとしたら……まさか……と幸月さんは考え始めてる。

柊羽くんから受け継いだ2刀には何かあるのかな?神代と。


その後はワイワイと優理との面会時間一杯まで話して笑い合って私達は時間を過ごした。

それにしても、えっちしたのバレなくて良かったぁ……バレてたら柊羽も大変な目に合いそうだしね。

ここに居る皆も絶対に柊羽を良いなと好きだと思ってるだろうし……ね?


…………………………………………………………

「父さん、母さん、叔父さんに叔母さんと……姉さんも……」


病院を後にした俺は、一人で墓参りに来ている。


「父さんの剣、茉奈に渡したよ。良かったよね?茉奈ならちゃんと使ってくれると思ったんだ。」


墓前に手を合わせながら俺は茉奈に父さんの剣を渡した事を報告して居た。


「てか、姉さんの剣も取り戻した、そっちは優理に渡した。あの二人なら絶対に父さんの想いも姉さんも想いも確りと受け継いでくれると思うんだ。」


二人の力も想いもきっとあの二人なら……これで良かったんだよな?きっと。


「また来るよ。俺ももっと強くなる。俺を支えてくれる人達に答える為にも父さん達の意思を繋ぐ為にも……何よりも俺が優理達を守りたいから。」


そう、何時の間にか俺と同じ人を作らない為と言う理由以外にも優理達を守りたいと思う様になったから……俺がを見付けたから、改めて報告して俺はお墓を後にした。

そんな俺の背中を押す様に、暖かい風が吹いていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

色々と仕事が立て込みまして全くかけていませんでした。

遅くなりまして申し訳ありません。

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