第26話 コロシテください

「ぐぎぃ……がが……ガアアアァァァ!!」


大振りで巨大な爪が俺達を襲う。

その姿は頭の先から足の先まで外骨格に包まれて居るが……正に獣と表現するべき姿。


「チッ!全員下がれ!紗月の相手は俺がする!」

「でも!どうするの?!紗月を止めるって言ってもあれじゃ!!」

「殺さないで止めるなんてかなり厳しいでしょ?!幾ら柊羽だってさ!!」

「んな事は分かってる!だけど、やらないとだろ!紗月を見捨てるなんてしない!必ず目を覚ましてやる!」


全員で退避した場所は、紗月の一撃でドゴンッ!と大きな音を立てて思いっきり陥没してる。

受け止めるのは無しだな……流すか避けるかしか無さそうだ……


「しかし……神代の開放の暴走ってところか?ヤバいなんてもんじゃ無いな。てか、さっさと離れろ!正直邪魔だ!!」


怒鳴り付ける様な声で優理達に告げると、何かを言いたそうな雰囲気を出しながらも距離を取ってくれた気配を感じ取りながら、正面の紗月から一切目線を外さずに油断無く構える。


「頼むぞ……村正。」


チャキ……と、音を鳴らすのと同時に俺と紗月は動き出しボス部屋のど真ん中で激しい音を響かせながらぶつかりあった。


…………………………………………………………

SIDE 紗月


合流した後に皆で一気に駆け抜けた、深層の魔物達なんて本来は手も足も出ないのに、強くなった優理ちゃん、茉奈ちゃん、皆を支える巴菜ちゃんにお兄さんでゴーレム系なんて一気に切り裂いて砕いて……私も解放して居るから一瞬でコアを貫いて倒してと全然苦労もしないでボスの部屋前まで辿り着いた。

だけど……私が不味いかも今だって気合いで抑えてる。

でも、そろそろヤバそう意識が持って行かれそう……このままじゃ……


「観月の時と違って硬いのが多くて数も少なかったね。」

「だねー。そのお陰で私達でも着いて行けたんだけどさ。」

「そうですか?普通に柊羽さんに着いて行けてたと思うんですけど?」

「うん。優理も茉奈も強くなってる。」

「そうデすョ。お二人共、見チがえル程強クなってまス。」

「紗月……?大丈夫?」

「大丈夫デすよ?早クボスを倒しマショウ!」


私に何処か違和感を感じてる居るのか優理ちゃんが大丈夫かと聞いて来た。

でも、私は大丈夫。だってまだを保ってるんだから。


「先に休憩しよう。ここまでぶっ通しで来たからな。少しでも体力を戻してから挑んだ方が良い。」

「そうですね。流石にボスは未確認ですので、どんな相手でも対応出来る様にしておいた方が良いです。」

「そんなの良いカラ早く倒しマショウ。」

「休憩だね。ほら!紗月も一度開放を解いて!」


私を無理矢理隅の方に引っ張り座らせて来る茉奈ちゃん。


「ほら!一回解く!結構不味いでしょ?柊羽くんには黙っててあげるから……ね?」

「は、はい……」


言われた通りに解放を解除して私は一息付くのと同時に一気に疲労が襲って来た。


「やっぱり……このまま休んでなよ?柊羽くん達の事は押さえておくからさ。」

「ありがとう茉奈ちゃん。情けないなぁ私。」


優理ちゃんも茉奈ちゃんもお兄さんに扱かれて?とても強くなってる、観月姉さんもお兄さんと一緒に目赤ダンジョンで死線を潜り抜けて新しい武器まで手に入れて強くなって、幸月姉さんもアステリオス何て言う神話の怪物をお兄さんと一緒に倒して更に強くなった。


「でも、私は……」


……神代を知る周りから陰で言われて居る事が私の胸に去来する。

勿論、姉さん達もパパもママもお祖母ちゃんもそう言う人達には怒ってくれてるし処分もしてくれてるけどそれでも、言われた私の心には大きな傷が残ったままになってる。


「他人に言われなくても私は神代の失敗作って事位分かってるよ……」


姉さん達は私の歳よりも下の時に自分の力を使いこなして居たし歴代の神代も同じ……だけど私は……未だに制御も出来なくて自分の力に飲み込まれそうになるから長時間の解放なんて出来なくて私の心にはずっと不安が付きまとい続けてる。


「怖いなぁ……もしもなんてしちゃったら皆に迷惑かけちゃうし何よりお兄さんに嫌われちゃうよね……」


お兄さんに助けられて私は気付けばお兄さんを何時も目で追う様になって何時の間にか本気で好きになってた。

私の初恋……もしも……もしも暴走してに落ちたらお兄さんに殺してほしいな……この扉の先に待つモノに私は嫌な予感を抑えられなかった。


…………………………………………………………

「よしっ!そろそろ行くか?」


1時間ほどの時間を潰して、水分補給や軽食を取って回復に努めた後に全員を見回して俺は進む事を提案した。


「はい!いよいよ大詰めですし宜しくお願いします!白峰からも報酬は出しますので!勿論皆さんにも!」

「まぁ、それは別にですけど……」

「お兄さんは大事でしょ?ちゃんと受け取ってください!」

「まぁ……ね。収入になるなら助かるけど。」


別に報酬目的で参加した訳じゃ無いけど貰えるなら助から良いか。


ギギギギ……と大きな音を立ててデカい扉を開くと待っていたのは大広間。

でも中には何も居なくて……


「何も居ない?え?何で?」

「俺が先に行く……皆は後から……っておい!紗月!」


俺が先に入ろうとして居るのを追い越して解放状態になった紗月は気楽な足取りで中に入って行く。

俺達もそれを追いかけて直ぐに部屋の中に入るのと同時に壁と言う壁から塊が集まりだす。

土、鉄、宝石、多種多様な鉱物が中心に向かって飛び出し、人型を作り出した。


「ヨウコソ。マズハ、ジコショウカイ……「ウザイ」……ェ。」


一瞬、ほんの一瞬で人型のゴーレムは跡形も無く吹き飛んだ。


「紗月?」


俺の呼び声に暗い、とても暗い笑顔で紗月は俺に向き直った。


…………………………………………………………

SIDE 紗月


「天魔衝。」


部屋に入り人のサイズのゴーレムが話し始めた瞬間、私は開放時にしか使えない最大の技を叩き込む。

この技は神代の神力と私の魔力を織り交ぜた私の奥義クラスの技だ。


「い、一撃……」


巴菜ちゃんの引き攣った声を聞きながら真ん中まで歩いて到達して落ちている宝玉を手に取った。


「ヨワ……私程度ノ技で倒されるトカ雑魚スギ。」

「紗月、今のは……?」


優理ちゃんが聞いてくる、でも私はそれには答えずに手にした宝玉を眺めて居た。

あれ?コレって……


「グッ……ギッ……がぁぁぁぁぁぁ?!」


私の口から今まで出した事の無い声が出て来る。

私の手にした宝玉が光ったと思った瞬間、宝玉を中心に石が宝石が部屋中から集まって私を取り込む。

それに反応する様に私の中の神力と魔力が溢れ出し唯でさえ限界だった私の意識を飲み込みながら私の身体に外骨格を作り出した。


「コ、ろし、テ。」


意識が消える前に私は、私の初恋の相手に望みを伝えた。


「オ兄さン……私ヲ、コロ……して……クダサい!!!」


力一杯、今出せる最大の声で柊羽さんに伝えた。


…………………………………………………………

紗月の動きが早い!生身の時よりも重量が増えてる筈なのに攻撃の重さは当然として速さが段違いだ。

さっきから流し切れない紗月の攻撃が俺の身体を傷付けている。


「コロシてくだサイぃぃぃぃ!」

「出来るか?!馬鹿野郎!!!」


外骨格の頭部部分、角の様な部分と村正がぶつかり合いと高い音が鳴る。


「まるで骨と打つかった様な音だな。それにしても速すぎる!」


目で追うのがやっとだぞ?!身体が付いて行かない……どうする、どうすれば良い。


「柊羽!!」


優理の声が俺に届くが答えてる暇は無い!


「ちっ!どんどん傷が増えて来てる。このままだとジリ貧か……」


内包は使えない、使えば確かに壊せるとは思う……でも、使ったら……


「紗月の身体が壊れるよな。」


それじゃ殺すのと変わらない。

紗月を殺す訳にはいかない、殺すなんて出来る訳あるか!


「だが……このままだと。……不味いっ!!」


ズガンッ!と体制を崩し反応が遅れたの俺の前で大きな音が響いた。


「痛ったぁぁぁ!!」

「危っな!!!」

「ひぇぇ……」

「皆……」


優理が合体剣を前面に押し出して紗月の一撃を受け止め、吹き飛ばされない様に茉奈と巴菜が優理の身体を支えギリギリで耐えた。


「柊羽くん!何か無いの?!」

「受け止めるのは出来るけど、これじゃもたないよ!!」

「紗月ちゃん!目を覚まして!!!」


俺の内包は斬撃……突きや剣を使った攻撃に攻撃を内包する事……だからそれを使ったら勝つのは出来る。


「内包は?!攻撃にしか出来ないの?!」

「え……?攻撃以外を内包する……?って!それは良いから離れてろ!」


3人を押し退け前に出る!全力で紗月を村正で斬り付けギャリィィン!と、大きな音を立てながら削り紗月を押し退け様とするが弾かれる前に紗月は俺の脇腹を蹴り飛ばした。


「ぐっ……」


ビキビキと俺の脇腹から嫌な音を立てるのを俺は耐えながら村正を地面に突き立てて地面を削りながら距離を取られ過ぎない様に耐えた。


「……つぅ。」


速さに対応しきれない、どうすれば良い?どうすれば紗月の動きに着いて行ける?

手加減出来る相手じゃないどうする?どうすれば良い?


「オ兄さン……コろシて……止めテ……コロシてぇェぇぇェェ!!」

「嫌だ!つってんだ!勝手に諦めてんじゃねぇぇ!!!」


無意識に……俺は無意識に飛び出した、地面を砕いて出したその速度は今までの俺とは明らかに違った速度で俺自身も驚きながらも紗月とぶつかり合った。

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