白の章
第22話 守護者
チンッ!と刀を仕舞う音が響く。
北の守護を担当している
「どうだった?!紗月!俺の剣捌き!」
「はぁ……お上手になったのでは?」
「だっろー!未来の旦那が強くなって嬉しいだろ!!!」
「頭沸いてるんですか?未来の旦那とかキモイです。」
順平くんは昔から紗月に惚れ込んでいて会う度に口説こうと必死になってる。
「なっ……そんなに照れるなってぇ!」
「照れて居ません。脳みそ入ってないみたいですね。」
「…………おい……俺達が子供を作ればもっと国の為になるのは分かるだろう?神代は中心を我が家は北の守護をしているのだ、つながりが強くなる事は良い事だろう。」
「それは分かりますけど、我が家は自由恋愛なので。そして昔からそうですけど勝手に人を妻呼ばわりしないでください。心の底から気持ち悪いので。」
そして……ずっと紗月は塩対応である。
でもまぁ、確かに気持ち悪いのは私も同じ感想だ。
「全く、順平は嫌われている事を理解した方が良いと言うのに……そう思いません?観月さん。」
次は南の守護を担当している
「そうですね。まぁでも気付かないならそれで良いのでは?本人の頭の中は幸せでしょうし妄想は自由です。」
観月も塩どころかセメント対応で秀利くんに反応した。
「それもそうですね。全く、私と観月さんの様に愛し合ってるなら兎も角、妄想だけで幸せになれるとはあんなのが後継ぎとは北の守護が心配になります。」
「人の事を言えるのですか?いつ私が貴方と愛し合ったのですか?妄想と現実の区別も付かないんですね?頭の中に何も入っていないんですね。」
「夫に対してなんて事を言うのです!私と同じく火の力を手に入れたのですから私の愛を受け取ったのと同義でしょう。照れ隠しでも暴言はいけませんよ。」
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……こっちもこっちで終わってる。
「一遍死んでくれません?私の火の力は柊羽くんと一緒に手に入れたお揃いの力です。何をどう間違えても貴方と同じではありません。」
「柊羽?あぁ……あの孤児ですか。観月さんはお優しいですねぇ……あんな孤児無勢を庇うなんて。火の力を手に入れた時だって観月さんが居たから手に入れられただけでしょう?全く、あの程度のごみに気を…「来なさい、灼絶。」……ぇ?」
「観月だめよ!落ち着きなさい!」
「断絶しなさい。」
ビィンと観月が弦を弾く……その瞬間、秀利くんが全力で後ろに下がり、秀利くんと観月の間の地面が熱でドロドロに溶けてかなり深く切れてる。
「ちっ……外しましたか。まだ制御が十分ではありませんね……」
「殺す気か!?」
「そうですけどなにか?別に死んだところで代わりなど直ぐに用意出来るんですから問題は無いでしょう?私の、私達の恩人を侮辱する人間を殺して何が問題なんですか?南は神代を敵に回すと言う事でよろしいのでしょう?」
「……………す、すまなかった……」
「二度と話しかけないでください。存在そのものが気持ち悪いです。視界に入らないでください。」
やれやれ……殺し合いに発展しなかったのは良い事かなぁ……
「あいつらはもう……嫡男だかなんだか知らないけど頭の中は女の事しか無いのねぇ。」
「あら?お久しぶりです。
私に話しかけて来たのは白峰
「お久しぶりね、幸月さん。ご活躍はかねがね……」
「ありがとうございます。お陰様で、楽しくやってますよ。」
「そうそうっ!シュウくんの事を教えてよっ!私もファンなんだ!」
「柊羽くんの事ですか……えっと……」
私がどうしようかと悩んでいると、パンパンッ!と手を叩く音が響いた。
「そこまでにして席に着いて下さい、定例会議を開始しますよ。先ず……」
司会役で、守護者4家と中心の守護をする神代家の5家を取り纏める家……
北の玄岩、南の朱南、西の白峰、東の
ダンジョンが世界に現れてからと言うもの、それぞれがそれぞれの家にあった属性に目覚め以前よりも力を使いこなせる様になったけど……北と南の様な馬鹿も増えたのが問題よね。
「白峰家、西の守護はどうなっていますか?」
「ふぁいっ?!えっと……街中は問題はありません。結界も守護石も問題は無いです、でも目白ダンジョンが少し危ないかも知れません。」
「ダンジョンですか……間引きは進んでいないのですか?」
「はい。お恥ずかしい話なのですが低階層しか進んでおらず、旨味も少ないと言われているのもあり我々だけでは中々……」
「ふむ……神代家。」
「何でしょうか?」
「西の白峰とは仲は良かった筈よな?」
「はい。同年代でもありますので……それが何か?」
「中央を守る神代に命じる。西の白峰にある目白ダンジョンの間引きを行え。」
「私達がですか?」
「人選は問わぬ。出来るならば深淵まで制覇出来れば良いが、無理ならば深層は制覇して貰いたい。無論、白峰も共に向かえ。」
「畏まりました。神代と共に間引きと共に深淵への道を開きたいと思います。」
その後、解散、それぞれ帰宅の途に付いた。
…………………………………………………………
「私が行くね、幸月姉さん。」
「紗月が?良いの?」
「西なら私が相性良いだろうし、私達が全員で行く必要は無いよね?」
「それはそうだけど……」
「後はお兄さんにも声掛けたいかなー。駄目?」
「柊羽くんに?」
「うん!お兄さんならめちゃ強いし何があっても安心だもん!」
「んぅ……まぁ、確かに安心感はかなり違うけど……聞いてみて大丈夫だったらだよ?」
「はーいっ!」
「とは言え大丈夫なんですか?今回は守護者としての活動ですし神代だけでは無いですし……」
「人選は問わぬって言っていたから大丈夫よ。それに、神薙としても想定してると思う。」
「想定って柊羽くんを誘う事を?」
観月が私に聞いてくる。
「そう。神薙が柊羽くんを認識してないなんて事ある訳が無い。それに私達とも仲が良い事も、目赤の深淵への道を開いた事も全て把握している筈。」
国内のそう言う動きを把握する事が出来るからこそ私達守護5家の取り纏め役なのだ。
「ん……でもそれだとお兄さんを巻き込むのは良くないかな……でもなぁ……居てくれたら確実に攻略出来るんだよなぁ……」
「土属性ですし……と言うか柊羽くんは属性とは相性が悪いと言ってますし、とは言え余り関係無い戦いは出来る方ですしね。」
「取り敢えず聞くだけ聞いてみようね。」
帰りながらこれからの話をしていた私達を追いかける様に白峰
「ごめん!待って!」
「はい?どうしました?」
「えっと!あの!間引き!間引きの事で!」
「あぁ……はいはい。何時にします?と言うか週末以外は無理なんですけどね、私達。」
「それは勿論!私が行きます!神代からは?」
「はーい!私が行きまーす!相性的にも私が良いし!」
「紗月ちゃんが来てくれるのね。幸月さんや観月さんは?」
「一応ロビーで待機はしておきますけど、こちらはあくまでもお手伝いですし。」
「分かりました。それではポーションなんかも用意しておきます。」
その後、時間と集合場所を決めて私達は今度こそ、帰宅した。
…………………………………………………………
「目白の間引き?」
「うんうん!今週末なんだけどお兄さんは来て貰えないかな?って思ってぇ……」
学校終わり、帰ろうとしていたら紗月に抱き着かれて引き留められこんなお願いをされた。
「それは良いけど、何でまたいきなり?神代って間引きとかしてたっけ?」
俺のそんな疑問に幸月が答える。
「えっとね?余り大きな声では言えないんだけど、神代家としてのお仕事って感じなの。それと他の家に力を貸すって感じでね。」
「あ~……それ系か。てか俺が参加して良いの?良く分からないけど家としての仕事って特殊な物だろ?」
「普段は駄目なんですけど……取り纏めてる家から人選は問わないと言われたんです。」
「ふむふむ……え?待って?それってさ、俺の事も把握してるって事だよね?」
「言葉にはしなかったけど多分そうだと思う。と言うか国内の事は把握してる感じ。そういう家だと思って貰えれば……」
「そっちの家の取り纏めみたいなもんか……まぁ、週末は了解した。この感じだと皆で籠る感じ?」
「一応、白峰のお手伝いって感じだから……あ!白峰ってのは目白の管理してる家ね!んで!私が一緒に今回は行きます!」
「紗月が一緒ね。観月と幸月は別行動?」
「今回は家のなので、私達は別行動になります。とは言えロビーには待機してますけど。優理さんと茉奈さんはどうします?」
「行って良いなら行きたいかな!」
「私も!柊羽との特訓の成果見せるよー!」
「二人共……何時の間に……?」
「最初から居ましたよ?気付いて無かったんですか?」
「マジか……」
指摘されて何故か落ち込んだ……二人に気付かなかったとは……
「柊羽のはくじょーもーん!」
「柊羽くんひどーーいっ!今日は挟んであげないからねー!」
「ちょっと!!挟むって何?!てか今日って!?まだ泊まり込んでるの?!」
「ひゅ~ひゅ~……知らない~っ!」
「鳴って無いじゃないですか……それは兎も角、尋問が必要ですね……」
「こわっ!!柊羽くん助けて!!!」
「ばっ!俺を巻き込むな!だから帰れって言ってたじゃん!」
「それはぁ!でも泊めてくれてたのは事実じゃん!!」
ぎゃーぎゃーと騒ぎながら俺達は帰宅する。
まぁ……こんな毎日も楽しいから良いんだけどね。
「時間とか聞いてないじゃん……はぁ……」
帰宅して一息ついてからその事に気付いた俺は大きなため息を付いたのだった。
…………………………………………………………
「すいません!お待たせしました!って……?!えぇぇぇぇぇ?!?!」
ダンジョンロビーで俺達を見つけた白峰家の子が近寄って来ながら大声を上げた。
「ちょ?!えぇ?!ほんとに?!シュウ……さん?」
「はい、初めまして。紗月から援軍協力を受けて参加させて貰います。宜しくお願いします。」
「はいっ!!!白峰巴菜と言います!本日は宜しくお願いしますですぅぅ!」
「白峰さんですね。宜しくお願いします。優理と茉奈の事は知ってるんですか?」
「私の事は巴菜と呼んでください!GodDessのお二人の事は知ってます!よろしくお願いします!」
「こちらこそです。足を引っ張らない様に頑張りますね。優理と呼んでください。」
「よろしくね!楽しみ!茉奈で良いからね!」
それぞれが自己紹介をして進み方を話しながら決めている俺達に近寄って来る奴が居る。
「俺が!来た!俺が来たからには余裕だぜ!!!」
「うげぇ……玄岩……呼んだの?」
ブンブンブンと思いっきり首を振って否定する巴菜さん。
紗月の感じだと嫌ってるって事かな?
「これはこれは美女ぞろいで最高の間引き日ですね!この俺が来たからにはそんな孤児の力なんていりませんよ!さぁ!行きましょう!俺の力を見れば紗月も俺の妻としての自覚も出るってものだし他の女性陣も第2婦人や第3婦人や妾に相応しい!」
何だこいつ?頭沸いてるんか?そんな事を思う俺を尻目に紗月が俺に腕を組んで来て茉奈も反対側に捕まって来て、優理も存在しないって顔をしながらスルーして中に入って行く。
「さて、それじゃ観月。私達はロビーで待機して居ましょう。」
「そうですね、幸月姉さん。柊羽くんも居ますし、優理さんと茉奈さんも居ますから不安はないですね。」
それぞれがそれぞれの行動を起こし馬鹿の相手はしてられないって空気が漂っていた。
「おい!この俺を無視するな!おいて行くな!」
後ろから馬鹿が怒鳴りながら着いて来る……はぁ……邪魔だけしそうなやつだなぁ、てか紗月を妻とか言ってたし婚約者的な立ち位置か?後で聞いてみるか?違う気がするけど。
「荒れなきゃ良いんだけどな……」
入り口前で俺のつぶやきが零れるのだった。
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