第23話 深層への門番
無言で走り抜ける。
俺達は、会敵した瞬間に切り裂き低階層の相手は問答無用で殺して走り抜ける。
本来ならばドロップを拾いながらになるのだが、今回は何時もの間引きとは違う間引きである以上、無理に広い集める必要が無い上に下層までのドロップは回収部隊が集めてくれるのである。
「……とは言えか。」
低層の最後のボス部屋に突入後、全員で瞬殺……そのまま通り抜け中層に滑り込む。
「はぁはぁはぁ……お兄さん、一度、休憩しませんか?」
「ん。そうしようか……ここまで30分で来てるしこのペースなら休み休みで大丈夫そうだしな。」
スタート地点、珍しくセーフティーになっているエリアで俺達は一息をつく。
「お、おい!……ぐほっ……げほげほ……おま…お前ぇぇ……ぉぇ……」
「ん?何だお前?何か用か?」
「はぁ……はぁはぁ……はぁはぁはぁ……この俺を!差し置いて!勝手に進むとか何を考えてる!!」
コイツは何を言ってるんだろう?
「はぁ……何で着いて来てるの?別に同じパーティーでも無いのに。お兄さん!相手にしなくて良いよぉー!」
俺の腕に抱き着きながらそんな事を言う紗月。
「なっ?!紗月!!俺と言う者がありながら!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……キモ。」
うわぁ……クソデカ溜息だぁ……
「この間も言ったけどあんたと私は唯の他人。今までもこれからも未来永劫他人。妄想垂れ流すの本当にキモい。」
「だから照れるなってぇ!!」
「あぁ、ごめんね?キモいじゃ理解出来る頭は無いよね。気持ち悪いの存在自体も姿形も言動も何もかも気持ち悪い。生理的どころかこの地球上に居る事自体が大罪のレベルで私には無価値なの。」
うわぁ……
「うわぁ……紗月がここまで言うの初めて聞いた。」
優理もうわぁ……って言ってるわ。
「うわぁ……嫌いとか憎いとかそんなレベルじゃ説明つかないレベルじゃん。」
茉奈からも、うわぁ……が出たわ。
何も言えなくなってるのを尻目に紗月は更に追撃をいれていく。
「これ以上、話しかけるな!付き纏うな!邪魔するな!!丁度良いから四肢切り落として魔物の餌にされたくなければだけどね!!」
えぐ……紗月からここまでの言葉が出てくるとはね。
「紗月。その辺にしておけ。コイツを嫌いなのは分かったけど紗月が手を汚す事は無いよ。そういうのは俺がやるからさ。俺なら誰に迷惑かける訳でも無いしさ。」
「もうっ!お兄さんのばかぁ!お兄さんだって手を汚す必要は無いの!これは私達の問題だから!」
「ぐぬぬ……まぁ、この話は良いや。先に進もうか?ちょっと周辺の気配が多くなって来てるからさ。あいつは無視で良いんだよな?」
「うんっ!いこーいこー!」
紗月に引っ張られながらセーフエリアから俺達は出て行く。
その後ろから俺達を……俺を憎しみが籠った目で睨み付けてる奴が居る事を気にしない様にしながら。
…………………………………………………………
「くっそがぁぁ!!!あのごみ孤児がぁぁ!!!!」
紗月だけじゃなく他のGodDessまで独り占めしやがって!この俺様にこそGodDessは相応しいんだろうが!!
家柄!血筋!将来!全てが揃っている俺こそが!!!
「ふぅぅぅ……まぁ良い。このまま奥で事故に見せかけて処分してくれる。ダンジョンの中では何が起こってもおかしく無いしなぁ?」
所詮は孤児だ、今は人気があるかも知れんが直ぐに無くなる、死んだところで誰も困らないしなぁ。
「アレが死ねば紗月もGodDessも俺の物だ!!」
彼奴等の後を追いかけ俺も走り始めた。
…………………………………………………………
「ふっ!!」
「ていっ!!お兄さん!そっち行った!!」
キン……っと村正を鞘に仕舞う音が響く。
たったそれだけ……それだけで俺に向かって来ていた身体を土の鎧で固めた狼が真っ二つに切れて俺の身体を左右にそれぞれ通り過ぎる。
「うひゃ〜!剣筋が見えなかった……シュウさんヤバすぎ……分かっては居たけど!!」
シュッ……ズシャッ!
「余所見をしない!見惚れるのは分かるけど!」
「茉奈さん!ごめんなさいっ!ありがとうございます!!」
「よっとっ!茉奈も減点だ。」
巴菜さんの後ろから迫る魔物を茉奈が剣を投げる事で仕留めたが、自分の後ろから迫る魔物に気付いて居なかったのを今度は俺が刀を投げる事で仕留めた。
「むぅぅ……ありがとっ。」
ゾプと刺さった刀を抜いて血を払い鞘に納め、向き直りながら話し始めた。
「それにしても、やはり数が多いな。中層からどんどん増えて行って下層まで来たけど、やっと休憩出来そうだな。」
「そうだね。ふぅ……流石に疲れたかな。」
「無理するなよ?優理。」
「大丈夫っ!まだまだ行けるよ!」
「だね!私も大丈夫!紅月と蒼月もあるしね。」
問題はここから……下層のボスを倒して深層に入るのにはちょっと戦力不足かな?俺は良いとして……優理と茉奈、巴菜さんと……紗月……
「どうするかな……」
「何が?お兄さん。」
「あぁ、いや……何でも無いよ。」
甘くなったよな俺……足手纏いだと着いて来るなと言える人間だった筈なんだけどなぁ。
「よし!続き行きましょう!もうすぐボスだよね?下層のボスって何?」
「
「あぁ……そうだったな……属性系は相性悪いから来ない様にしてたから忘れてたわ。」
「物理特化だもんねぇ、柊羽。」
「それでも属性使える私達よりも強いんだからチートだよねー。」
「だれが、チートじゃ……良いから行くぞ。」
休憩を終えて俺は歩きだす、そんな俺に直ぐに並んで左右を優理と茉奈が固めて後ろから紗月と巴菜さんも警戒しながら着いて来て、魔物を倒しながら進んで行くと大きな扉の前に到着した。
「この先だね。入るよー!ちゃっちゃと倒そう!」
「ちょっ!紗月!!」
止めるのもお構いなしに扉を開けて中に入って行く紗月を俺達も追いかけて直ぐに突入した。
「こら!いきなり開ける奴がいる?!紗月!!」
「ここに居るよ?普段なら兎も角、お兄さん居るから余裕!余裕!」
「そう言う事じゃ無いでしょ!」
「無駄話はここまでだ……来るぞっ!」
紗月に文句を言ってる茉奈と優理に強く声をかけて意識を向けさせる。
それと同時に地面を盛り上げながら俺達にボスが迫る。
「散開!!」
俺の声と同時に全員がそれぞれ突進を避ける様に地面の盛り上がりから離れた。
「ギシャァァァァァ!!!」
大声で威嚇しながら外に現れた土竜は想像していた土竜とは違って居て……
「うわっ?!キモッ!!何あれ?!」
「ひぃぃ!想像と違うぅ!土竜ってもっと可愛い顔してないっけ?!」
すぅぅぅ……ドシュッ!ドシュッ!と声をあげた優理と茉奈に向かって土塊を吐き出して攻撃してくる。
「……っ!舐めんな!!」
「この程度っ!」
斬ッ!とそれぞれの剣で土塊を真っ二つにして回避。
その隙を付いて紗月が一気に顕になった胴体へと肉薄する。
「九連……「紗月ちゃん!駄目!」……っ!」
巴菜さんの声に反応して直ぐに紗月が離れるのと同時に土竜の口から触手が現れ、紗月の居た地面を何度も触手を叩きつけた。
「うへぇ……何か溶けてない……?」
じゅわぁぁ……と触手が触れた地面から煙が立ち上がる。
地面からもじゅわじゅわと溶ける音が聞こえて来る。
「巴菜ちゃんあれ……」
「あれがあるから厄介なんですよ……地面も天井も好き勝手に動きまくるし触手はあるし、唾液にと言うか体液に触れると溶けるしで……」
面倒な相手だな……観月に着いて来て貰えば良かったわ……
「めんどくさ……それじゃぁ……外に出てる時に遠距離でやるしかない感じ?」
「う、うん。後は体液を浴びない様に斬ったら直ぐに避けるとかかな……」
近接ならそうなるか……くっそめんどいわ!
「フシュルルルル……シャァァァ!」
外に出たまま突進と同時に口からの触手を動かしながら突っ込んでくる土竜を俺達は避ける。
その後、また地面に潜り縦横無尽に動きまくり外に出ては潜るを繰り返している。
「もうーー!面倒!潜るなぁぁ!卑怯だぞーー!!」
「はぁぁぁ!!!いっけぇぇぇぇ!」
土竜が外に出たのと同時に優理が合体剣の一本を外し、胴体目掛けて剣をぶん投げる。
真っ直ぐに進んだ剣は土竜の身体に綺麗に突き刺さった。
「ギシャァァァ!……フシュルルル……」
「よし!刺さった!もういっちょ!」
ずぼっと触手を抜いて剣を優理に向かって投げ返して来る。
優理の投げた二本目とぶつかりガキンッ!と音を立てて相殺してきた。
「このぉ!もう一本!!」
シュンッ!と風を切りながら土竜に優理の剣が瞬時に迫り身体に刺さるのと同時にキンッ!と音を立てて剣が弾かれる。
「うっそぉ?!何で?!」
「身体を金属に変えたんです!身体が傷付けられると傷ついた部分を変換しちゃうの。」
「もう!面倒くさいとかってレベルじゃ無いじゃん!あんなんどうやって倒すの?!」
「巴菜ちゃん、普段はどうしてるの?」
「斬っては離れてを沢山の人で繰り返して金属化される前に倒すとは聞いています。とは言え……白峰もここまでは中々来ないから……」
まぁ……下層よりも下って中々溢れないしな。行く必要が無いと言えばその通りか。
んじゃここからは俺の出番かな?
「柊羽くん、どうしよう?何かある?」
「一番楽なのは、遠距離から休む暇も無く狙撃するのが楽なんだろうけど……巴菜さんの武器もボウガンだし連射には向かないからな。まぁ……俺がやるよ。」
「俺がやるって……柊羽だって近接じゃん。どうするの?」
「良いから見とけって。皆も離れてな。」
俺は皆を下がらせて一人前に出る。
そんな俺を油断無く見詰めて?来る土竜から一切の視線を逸らさずに前へと進んだ。
「出番だぞ。灼断。」
村正を腰に刺したまま俺は灼断を顕現させ構えた。
「お前の倒し方は分かった、来いよ?先を急いでるんでな、時間をかける気は無いぞ。」
俺の挑発を理解した訳じゃ無いだろうが触手をうねらせ
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