第24話 紗月の解放と暴走
「ふっ!」
一瞬で間合いを詰め、そのまま触手を斬り、一度離れる。
「ギシャァァァ?!シャァァァ!!!」
ドシュッ!ドシュッ!っと俺に向かって土塊を飛ばして来るのを移動しながら避けて翻弄しながら更に触手を斬り落とし攻撃手段を一つずつ潰して行く。
「すっご……でも何で金属化しないの?触手だからとか?」
「分かりません。前に捕まれて触手を斬った時はしなやかな金属に変化したって資料には書いてましたし、直ぐに再生もしたと……」
「お兄さん流石……灼断を出す程の相手?って思ったけどそう言う事かぁ。」
「はぁぁぁ!!」
ズシャァァァ!と身体を横に確りと切り裂いてダメージを重ねて行く。
「流石にしぶといな。図体がデカいだけあるわ。でも、再生も変化も出来ないみたいだな。予想通りだ。」
「そうか!斬るのと同時に焼いてるんですね。だから再生も変化も出来ないんだ……流石はシュウさん。」
俺の戦い方を紗月達が分析しながら見てる。
そう、俺のやってる事は簡単な事で斬るのと同時に焼いてるだけ、灼断を手に入れた事でやれる様になった方法。
「フシュルルルル……」
俺から距離を取り唸る土竜を睨み合いお互いに膠着していた。
「シャャャッ!」
ズドンズドンと尾を地面に叩き付けながら砂埃を起こすのと同時に俺に向かって土塊をいくつも叩きつけて来た。
「同じ事しか出来ないのか……ならもう終わらせよう。」
足に力を込めて一瞬で近づこうとするのと同時に土竜は地面へと潜り込んだ。
「くっ!潜ったか!!」
ズモモモモと地面を持ち上げながら俺へと突進して来たのを俺は灼断を地面に突き立てる。
だが、俺へと灼断へと届く前に進路を変えそのまま縦横無尽に部屋中を、地面、壁、天井を掘りながら襲いかかって来る。
「クソッ!面倒だな!」
『柊羽よ。地面に我を突き立てよ。』
「灼断?!それは良い……がっ!どうするつもりだ?」
襲い掛かってくる土竜の突進を避けながら灼断との会話を熟す。
『出て来ぬなら炙り出せば良い。』
「炙り出すって……そうか!言葉通りにか?!」
『今の柊羽ならば可能であろう?それにこの様な雑魚に梃子摺る等、我が許さぬ。』
「分かったよ!最初から手加減も遠慮も抜きだ!アステリオスを焼いた焔だ!耐えてみせろ!皆は退避してくれ!!」
ザシュッ!と地面に向けて灼断を突き刺し力を解放する。
一瞬にして地面が真っ赤に染まり、直ぐにドロドロのマグマの様相に変化する。
地面から壁面……そして天井へと広がり灼熱と言う表現すら生温い程に部屋が変化した。
「灼き尽くせ!!灼断!!」
ボッゴーーンッ!と壁から土竜が飛び出して来たが地面に落ちた後、数瞬蠢き直ぐに……
「芋虫の丸焼きみたいになったな……くっせぇ……」
『ふむ。自分が燃える事無く敵のみを焼いたな。やれば出来るでは無いか。』
「へいへい……甘く見てた理由じゃ無いけど時間を掛け過ぎて悪かった。」
『まぁ、良い。漸く我の扱いにも慣れて来た様だからな。今回は多めに見てやろう。』
「あぁ、ありがとよ。」
にしても、あっつ……これは酷い……けど活火山の火口内みたいにするのは威力高すぎるな。
「うわぁ……すご……やり過ぎじゃ無い?柊羽。」
「熱すぎだよ〜。丸焦げどころじゃ無いってか溶けてる?」
「溶けて更に焦げてますね。」
「焼かれて金属化して溶けて……えぐっ。」
俺もそう思う。灼断が張り切った?俺が制御をミスった?どちらにしてももっと使い熟さないとなぁ。
揃って部屋の奥に進み、深層への扉を開け階段が見える状態までは来た。
「取り敢えず、深層への道は開いた。ここからは俺だけで行っても良い……」
「馬鹿な事言わない!私達じゃ足手まといかもしれないけど柊羽を一人でなんて行かせないよ!」
「そうだよー。私達も連れて行って?柊羽くん。」
「依頼された間引きは終わったと判断出来ますけど、一応深淵の扉を開けと言われていますので、行かない訳には……」
「足手まといなのは分かってる。でも少しでもお兄さんの力になりたい!!それにほら!私は神代だよ?」
「駄目だ!!代償が大きすぎる!紗月は特に不安定って聞いてるし余計に無理はさせられない!!」
ふざけるなっての!観月と幸月の解放だけでも凄かったし代償に寿命を使うって言うんだから紗月に無理はさせられない。
そもそも観月がバッファー、幸月がヒーラーなら紗月はアタッカーだろう?って事は……代償の大きさは二人よりも多いのは予想出来るし不安定だと言うなら余計に無理だ。
「大丈夫だもん!私だって戦えるもん!」
「戦えないとは言って無いよ。単に紗月に無理をして欲しくないんだ。それに観月の時と幸月の時と比べても人が多いから気を回し切る自信が無いんだ。」
「だったらてめーだけ行って死んで来い!
真っ黒な濁流が紗月も巴菜も優理も茉奈も避けて俺にだけ襲い掛かり、俺は灼断を出す暇も無く濁流に飲み込まれ深層に押し込まれた。
…………………………………………………………
SIDE 紗月
「柊羽!!!」
「柊羽くん?!」
優理ちゃんと茉奈ちゃんが流されたお兄さんに手を伸ばしながら叫んでる。
直ぐに追いたいのに道は下に行く階段は水で満たされてしまって奥に行く事が出来ない。
「ひゃははははは!ざまぁ!所詮は孤児だよなぁ!マジでだっせーの!!」
耳障りは笑い声を上げながら犯人でもある玄岩が姿を現した。
「あんた!何を考えて!!どういうつもり!」
「流石に冗談では済みませんよ?玄岩!」
茉奈ちゃんも優理ちゃんも巴菜ちゃんも武器を抜いて油断無く玄岩を睨み付けてる。
「はぁぁ?!冗談で済まないって何言ってんのぉ?ダンジョンの中だし事故だよ事故ぉ!だ~~~れも悪くないぃぃ!ましてや!俺は選ばれてる男よ?玄岩家よ?国の北を守る守護者よぉ?たかが孤児の一匹がダンジョンで居なくなったからってなんだって言うんだぁ??」
ニヤニヤと自分は悪く無いと下らない事を話す玄岩に私の心はどんどん冷えて行く。
「これでぇぇ!紗月もGodDessも俺の物だ!巴菜もしゃーねーからオナホールにしてや……「黙れ。」……へ?」
ゆらゆらと私の身体から膨大な魔力が立ち上る……そのまま瞬時に玄岩の前まで移動した私は、たった一言だけ呟いた。
「おぉ!紗月ってばやっと俺の物にな……ギャァァァァアァ?!?!腕がぁぁぁぁ!!!足がぁぁぁぁ?!」
手にした槍、蜻蛉斬りで一瞬で片腕を巻き込みぐるんと回し複雑に折りその勢いのまま片足を斬り落とす。
「口を開くな。叫ぶな。動くのも許さない。」
「腕がぁ?!足がぁ?!何でだよぉ?!うごぉ?!」
「言って分からないならその口もいらないね。」
槍の石突で喉を遠慮無く突いて潰し声も出せなくした。
「こひゅぅ……こひゅぅ……」
「許さない。言ったよね?あんたの代わり何て幾らでも居る。玄岩家には他にも子供も居る、あんたみたいな失敗作はいらない。神代として処分する。」
パクパクと口を動かしながら、待ってくれとか助けてくれとか多分言ってるけど喉を潰したから声も出せずにこひゅこひゅ言ってるのだけ聞こえるのを髪を掴んで部屋の外に出た。
後ろから優理ちゃん達の止める声が聞こえるけど知らない、聞こえない、こいつは殺す……んーん、破壊する。
生き物とはもう認識しない。
「ダンジョンだからね?魔物に食い殺されても誰も悪く無いね。実力も無いのに入って来るのが悪いんだから。」
「んー!んー!」
いやいやと顔を振ってるけど知らない、許さない。
「今までも気に入らない相手、自分勝手な理由で殺して来たんでしょ?自分の番が回って来ただけだよ。」
ぶんっ!と無造作に投げ捨てて私は背を向けて歩き出す。
「バイバイ。」
ドンッ!と神代の血を開放した後、一言だけ残して私は振り返らずに部屋へと戻った。
「紗月……」
「私行くね。解放したしお兄さんを助けに行かないと。」
「私達も行くよ!あいつの事は……そのさ……」
「さぁ?多分死ぬんじゃないですか?回収者達が助ければ別ですけど……」
「多分、死にますね。あの人、嫌われてますし。守護者の汚点です。はぁぁ……すっきりした!」
「巴菜ちゃんも言うねぇ……でも、殺したのと変わらないんだけど……柊羽には内緒かな……」
「いえ、私から話します。こう言うのは初めてですけど、神代家としては無い訳では無いので……」
流石に初めて人を殺した……死ぬ様に仕向けたから手が震える。
でも……後悔は無い。あいつは殺されて当たり前の事をしたんだから、神代として処理しただけだから……とは言え解放状態じゃ無ければ出来なかった。
「急ぎます。この状態だと手加減も遠慮も出来ないので着いて来てくださいね。」
ザッ!と地面を踏みしめて一気に動き出す、私の解放はアタッカーとしての力を全力で解放する。
髪色は深紅に、目色は髪色とは反対のサファイアの様な深蒼になる上に2対の光の翼が現れる。これは、槍を使うからでその中で一番性能が上がるのが速さと動体視力だ。
高スピードの車に乗ってる時みたいに切り替わる景色を私は見ながらお兄さんの所まで急いだ。
…………………………………………………………
「ぶはぁ!!あのクソガキ!やりやがった!?」
げほっげほっと咳き込みながら立ち上がり回りを見渡す。
「かなり流されたっぽいか……場所の予測が出来ないから困ったな。」
つーか、あいつ!他に紗月達も居るのにピンポイントで俺だけを流しやがった。
「大袈裟な名前の割りに大した事の無い威力だったな。未熟だからか?まぁ、その御蔭で怪我も無く済んだんだけど……」
てか、皆は大丈夫かな?あいつに負けるとは思って無いし、実力的にも一人一人が負けないけどキレて殺して無いかだけは心配かな。
「それに、紗月が追い掛けて来る事があれば恐らく開放するだろうし……そこは流石に……おっと!!」
ブツブツと独り言を言いながら考え事をしていたら俺の背後から襲いかかって来て俺は石巨人の拳を綺麗に避ける。
「こっからはゴーレム系か……確かコアを潰す以外に無いんだっけ?倒し方。面倒だけど俺との相性は良いか。」
ズモモモ……とあっちこっちから複数のゴーレムが起き上がったり、地面から盛り上がったりしながら俺を囲む。
「良いね!こっからは手加減抜きだ!!付き合ってくれよ?村正!!」
キンッ!と鞘から抜き始めるのと同時に俺の言葉に答える様に刀身が煌めいた。
…………………………………………………………
ゴガーンッ!ガラガラガラッ!ボロボロボロ……と大きな音が響き渡らせながら確実に倒していく。
「夢幻。月臥。夢想。」
内包連続斬り、内包突き、斬撃の内包に寄る範囲攻撃を繰り返しながらゴーレムを処理して行き襲いかかって来た奴等の全てを倒し切った。
「はぁ…はぁ…はぁ……だっるっ!硬いからだっるっ!」
これで何とか静かにはなったし早く戻らないとな。
「いや……奥に進んで深淵の扉を開くか?ボスは分からないから困るけど、灼断も一緒だし行けるか。いやでも、俺を探しに奥に進んでたら危険だし一度は戻るか。」
連絡手段が無くなってるのがほんとに困るなぁ……流された時に何処かに行ってしまった。
「ドローンだけでも持って来れば良かったな。取り敢えず戻ろう……今は攻略よりも皆の命が優先だ。」
流された方向はまだ濡れてるから分かるしね。
暫く警戒しながら歩いていたら前方から声が聞こえて来た。
でも、あれは……
「アハハッ!邪魔っ!邪魔っ!」
「紗月……か?どんな状態だ?」
「死っねぇぇぇぇぇ!!
紗月の声だよな……どう言う状況だ……?
「邪魔だぁぁ!
「なぁ?!くそっ!村正!!」
斬ッ!と俺に向かって飛んで来た一種のビームの様な一撃を俺は正面からたたっ斬る!
「アハァ!すっごいっ!斬った!それならぁ……これはぁ?
目にも止まらない連続の突きを避けて弾いて逸らして回避して行く。
「解放して暴走してるのか?ならっ!」
一瞬……一瞬の隙を付いて紗月の
「うぐっ……ぁ……お兄……さ……ん……」
「今は寝ろ。もう大丈夫だ。」
ガクリと、俺の胸にもたれ掛かる様に気絶して、解放した姿が一瞬で元に戻った紗月を俺は抱き止め手前から聞こえて来る優理達の声に溜息を一つ零した。
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