season2

第10話 傍若無人

 「はぁ、相変わらずお嬢様は傍若無人が過ぎます…」


 「えっ?ぼーじゃくぶじん?なにそれ?」


 とある宮殿でのある日。毎日の如くメイドの莉奈リナはお仕えする柚莉愛ユリアお嬢様の教育に手を焼いていた。

 このお嬢様、外見はどこからどう見ても眉目秀麗であるのだが、貴族にあるまじき勉学に全く興味を持たず、加えて幼少期から甘やかされてきた為、宮殿内では誰でも構うことなくなりふり構わず過ごしていた。


 「では、お勉強の時間にしましょう。せっかくなので、先程の傍若無人からですね。とりあえず、今日は10個覚えるまで終わらせませんからね!!」


 「い〜や〜だ〜!!!」


 柚莉愛はメイドに力では叶うはずもなく、椅子に座らせられ、机に向かわせられる。


 勉強の時間が始まる。

 「では早速。傍若無人ぼうじゃくぶじんとは、簡単に言えば人前で自分勝手な振る舞いをすることです。お嬢様みたいに、誰それ構わずわがままを言ったり、自分勝手な行動を繰り返したりする人にはぴったりですね。」


 皮肉めいた言葉に、柚莉愛は言い返すことも出来ず顔を顰めるほかなかった。


 「まぁ…お嬢様は宮殿外では割と大人しくされている点は…まだ良いかもしれませんね。」

 あまり気分を害させすぎないように、すかさずフォローの言葉も忘れずに入れる。


 「傍に人無きが若し…要するにそばに誰も人がいない…と言った感じですね。単純に順番を間違えないように覚えるなら…無理やりですけど、傍には若くして無人…とでも覚えればいいかもしれませんね。」


 柚莉愛は少し考えた後、こう言い放った。

 「でも私には莉奈というメイドがずっと一緒にいてくれるんでしょ!?」


 ここぞとばかりに最大級の笑顔でお嬢様はメイドに微笑みかける。


 「…そうですね…少なくとも立派に独り立ちされるまでは…」


 「やった!!(こーいうところ莉奈はちょろいのよね…)」


 こうして実は策士のお嬢様と案外ちょろいメイドの勉強会は続く…

 


 


 

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