　「ところでお嬢様は、目の前に同じくらいの価値のものが二つあるとしたら、どうしますか？」

　「そうねぇ、どんなものか次第にもあるけど、私なら欲張って二つとも欲しくなっちゃうわね。」

　「そうですか…この言葉をご存知ですか？『二兎追うものは一兎も得ず』」

　「…？」

　柚莉愛は少しの間考えたものの、結局わからなかったので聞くことにした。

　「狩りで兎を二匹見つけたとします。」

　「うんうん」

　「欲張りなお嬢様はなんとかして二匹とも捕まえようとするでしょう？」

　「まぁそうするわね」

　「そうすると準備も実力も不足しているお嬢様は結局二匹とも逃してしまうわけです。これが一匹に絞っていたら結果は違うかもしれませんが。」

　「同時に二つのことをしようとして両方とも失敗しちゃうって事？」

　「そうです。流石ですお嬢様。」

　「えっへん！」

　褒められて上機嫌になる柚莉愛をよそに、莉奈が続ける。

　「これは四字熟語とは少し異なって分類される、ことわざと呼ばれるものです。どのみち、覚えておいて損は無いので、こういった類のものも是非覚えてくださいね。」

　「…はーい」

　また覚えるものが増えるのかと顔色を少し悪くしたが、それがバレるとまた増やされそうなので、すぐに元に戻した。

　「ところで、莉奈だったら二兎を同時に見つけたらどうするの？」

　少し考えた後、莉奈はこう言った。

　「そうですね、尾行して巣穴を見つけて一網打尽しますかね…？」

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