season3

第21話 相思相愛

 「ねぇ、相思相愛そうしそうあいって言葉、知ってる?」

 俺がまだ小学生だった頃、幼馴染にかけられた言葉だ。

 「そーしそーあい?どういう意味?」


 「お互いに思い合い、愛し合うこと!相思が相手を一方的に思うことで、相愛が相手を一方的に愛することなんだって。で、この二つがくっついて両思いって意味なんだって!!この言葉が前に読んだ本に出てきたんだ!なんだが素敵じゃない?」

 笑顔でそう話してくれる彼女に、もう既にこの頃から惚れていたのかもしれない。


 「そうだね……そう遠くないうちに、その言葉をちゃんと使える日が来るかもね」


 

 小学生の頃から日陰者で本を読むことが好きだった俺に対しても、彼女は明るく接してくれた。幼馴染の縁なのかもしれない。でも彼女に聞くと……


「気にしなくていいよ!私もずーっと友達と遊んでいると気疲れしちゃうし。それに、こーやってのんびり君と会話しながら本を読む時間、嫌いじゃないよ」


 この当時から既に、彼女ら持ち前の明るさ、優しさ、運動神経やルックスの良さから人気者だった。それゆえ、対人関係で多少気疲れしてしまうことも普通にあったのだろう。



 中学に入ると、彼女は更に綺麗になり、すぐに女子生徒の中でも指折りの人気を誇っていた。もはや俺なんかとは住む世界が違う──そんな関係になり、クラスが違っていたのもあってもはや会話をすることもなくなっていた。



 そして俺は高校生になった。

 最初のHRはお決まりの自己紹介の時間だ。

 担任が名簿順に一人一分くらいで喋るよう促す。


 「秋風灯花あきかぜとうかです。中学ではバレーボールをやっていました。本を読んだり、絵を描いたりするのも好きです。高校生活は一期一会だと思うので、たくさん遊んだり学んだり、充実した3年間にしたいと思っています。よろしくお願いします!!」


 俺の前の席には、幼馴染がいた。

 凛々しい立ち振る舞いと、艶やかで整った長い黒髪とその美しい笑顔は、かつての記憶を取り戻させるには充分だった。


 終わると同時に大きな拍手が湧き上がる。トップバッターのはずなのに、何の緊張もなく完璧に話し切ったのは流石としか思えなかった。


 「次!」

 あまり考える暇もなく自分の番が来てしまった。

 

 「えーと、新井涼あらいりょうです。趣味は本を読むこととゲーム……くらいです。あまり友人が少ないので仲良くしてくれると助かります」

 

 やはり人前で話すことは慣れない。だが、拍手もちゃんといただいたことだし今の自分からすれば及第点ということにしておこう。





 HRも無事終わり、休み時間になった。

 そして、俺は秋風灯花に話しかけられた。



 「涼、私のこと忘れたとは言わせないぞ?」

 彼女は少し不敵な笑みを浮かべながらそう言った。


 どうやら俺の高校生活は波瀾万丈になりそうだ。


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