第11話 天衣無縫

 「今回取り上げるのは天衣無縫てんいむほうです。あまころも無縫むほう、天の衣は縫い目の跡が無い…つまり文や詩などが自然でわざとらしく無いさま、または人柄が純粋で無邪気なさまを表す時にも使います。あとは物事が完全無欠である時にも使われることがあり…」


 「説明が長すぎて分かんない!!!」


 いきなりの長文説明に苛立ちを見せるお嬢様をなんとか宥めながら、メイド(教育係)の莉奈は教鞭を取り続ける。


 「申し訳ありませんお嬢様。では少しずつ行きましょう。天衣無縫、天衣は天人様の衣…つまりとても綺麗で煌びやかなものだと想像してください。」


 「舞踏会で着るドレスみたいなもの?」


 「そうです!さすが理解が早いですね。」


 「えへへ〜」


 少し褒められたことで先ほどまで苛立っていたことをすぐに忘れる柚莉愛を見て、少し胸を撫で下ろしながら莉奈は続ける。


 「無縫…縫い目が無い。これを組み合わせると、天衣は縫い目が無く、つまり自然な状態のままでも煌びやかで美しい…そんなふうに想像すると良いかもしれませんね。あとは、純真素直な人柄を表すこともあるので、の時のお嬢様にはぴったりの言葉ですね!」


 「天の衣かぁ…いつか着てみたいなぁ………でも最後の一文は余計ですわよ。」


 「あら?真実ではありませんか笑とりあえず、いつかそんなドレスが着れても恥ずかしく無いように、ちゃんと勉強して立派になりましょうね!(お嬢様はわがままさえ発動しなければ少し調子に乗らせるとすごく楽に勉強もなんでも進んでくれるのよね…)」


 「はぁーい。(まぁなんだかんだこうやって理解してる風に見せかけておけば莉奈の扱いも案外楽なのよね…テストとかもしないし。昔の教育係はみんな何を言ってもガミガミ言ってくる人達ばかりだったけど…)」


 こうして勉強会は着実に進んでいくのであった。


 


 

 

 

 

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