第23話 悠々自適
俺はただただ
読んで字の如く、のんびりと静かに、思うままに過ごす。これがどれだけ楽で幸せなことか。
ちなみに悠々の部分がゆったりと落ち着く。自適が自分の思いのままに楽しむ、という意味らしい。俺はこれを高校生活の目標に掲げていたのだが、一日目で破綻した。
秋風灯花は即座にクラスの人気者となった。そして、そんな彼女と初っ端から親しげに話していたということもあって、俺に対しても興味を抱くクラスメイトは少なくなかった。
「なぁ!あの秋風さんとどんな関係なんだよ!」
「新井君羨ましいなぁ〜俺なんて中学同じクラスだったのにまともに話せたこと無かったのにー」
「えっ、秋風さんの中学での人気っぷりをご存知でない??」
結局、多くのクラスメイトに話しかけられた。皆、彼女と俺の関係性が気になっているようだ。それもそのはず、見るからに日陰者と人気者。気になるのも仕方ないよなぁ……
「あー…………一応、幼馴染ってとこかな、小学校の頃はよく話してたけど、中学の頃はクラスも違ったから、ほとんど話したことはなかったかな?」
若干とぼけ気味に答えたが、それでもクラスメイトの興味は収まることなく、結局あれこれ聞かれてしまった。
だが、他人のことをあまりにもペラペラ喋るのもどうかと思ってので、のらりくらりと躱しながら、どうにか放課後にまでこぎつけた。
「おつかれ!なんかすごーく疲れてない?」
「俺の悠々自適な高校生活が……」
「いいじゃん!ゆったりと、自分の思いのままに楽しむのもいいけど、高校生活は三年間しかないんだし?てか友達たくさん出来てたじゃん!ねぇ、実はもう既に楽しかったりしてるでしょ?ねぇ?」
彼女の言葉もまんざらでなかった。あれこれ質問攻めに合ううちに、気づけば俺に対して興味を持ってくれるクラスメイトも増え、結局多くの人と連絡先を交換するまでに至った。
「なんかありがとうな、君のおかげで中学よりも楽しくなりそう。」
「ほらまた君呼びじゃん〜!名前で良いって!!というか、少しはこれで私の大変さが分かったんじゃない?」
結局また怒られてしまった。でもその顔は非常に楽しげな笑みだったので、俺は一安心した。
「………ありがとう、灯花さん」
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