第16話 蓴羹鱸膾 

 「さて、私の渾身の四字熟語です。いかがでしょうお嬢様」


 「いや…渾身の四字熟語なんてワード初めて聞いたわよ…しかも何よこれ、見たことない字ばっかりじゃないの。パスよパス。」


 「あら…お嬢様ともあろうお方がもう諦められるのですか??」

 

 ここぞとばかりに煽り始めるメイド。


 「うぅぅぅ…こうなったらやってやりますわ!!!、マスターしてさしあげますわ!!!その絶望的に難しいそうなやつをね!!!」


 悔し顔を滲ませながらも気合を入れるお嬢様。


 「(ふふ、そうでなくては!)」


 「では覚悟してついてきてくださいねお嬢様。蓴羹鱸膾はじゅんこうろかい、と読みます。分けるならじゅんこうかい、になります。」


 「うぅ…画数多すぎないかしら…それで意味は何なの?」


 「意味は、です。」


 「あれ、意味自体はそこまで複雑で難しくはないのね。」


 「そうですね、ただ使われている漢字が中々見ない字ですからね…」


 「ところで…ここまで難しいとどうやってこの言葉が出来たか気になるわね」


 「そうですか、まぁ簡単に言うなれば、昔、都である程度良い仕事をしていた人が、故郷の料理を恋しく思って、仕事を辞め帰郷した、という逸話かららしいですよ。」


 「そうなのね、さぞ美味しい料理だったのかしらね…」


 「とりあえず一字ずつ砕きながら覚えていきましょうか。」


 「あの…」


 「何ですかお嬢様?」


 「少し休憩させてからでも良いかしら…?頭がもうパンクしそうなのよ。」

 

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