第4話 画竜点睛

 「次はこれ、画竜点睛(がりょうてんせい」

 「うわぁ、なんかカッコいい読みの熟語ですね!」

 思わぬ四字熟語の登場に貫太のテンションは上がった。

 「意味は物事を完成させる時の最後の大仕上げみたいなところだ。竜を画《か》いてひとみを点ず…昔、竜の絵を描いた時、瞳を描くとその竜は飛び立ってしまうという人がいて、人々がそれを嘘だと言い立てると、その描いた人物が瞳を描き加えた。するとその竜は実際に飛び立ってしまった、という故事から来ているよ」


 「竜をりょうと読むところと睛を晴などと書き間違えないように気をつけないとですね!」

 「さすが卓真君、注意点をよく分かっているね」


 「でも先生、かっこいいのは分かるんですけど前教えてもらった魑魅魍魎といい臥薪嘗胆といい画竜点睛といい日常で全然使わなくないですか?」

 

貫太が質問したその瞬間、貫太の頬を白いチョークが一瞬にして掠めていった。

 

 「本当はおでこにでも当ててやりたかったですが、今日はこれで勘弁しときましょう。というか、最初の方に、もっと難しいやつとかが知りたいって言ってた人はどこの誰ですかね…?」

 元高校球児の柴田先生の肩とコントロールを舐めてはいけなかった。


 「化け物かよ…」

 


 



 

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