第18話
「おーフェア、大丈夫か?」
「大丈夫な訳ねぇなの! 狼に追いかけられてるの見てなかったの!?」
え? 俺が悪いの? 戦おうよ。
「ギフトで反撃とかしたら良いじゃん」
「そんな怖いこと出来ないの! 置物くらいならやってやってもいいの」
え? そんな状況ある?
確か狼ってスライムより少し強いくらいなんだよな? それに負けるんだ? 俺の使徒。たぶんスライムって一番弱いよな? ってことはこいつら……スライムしか倒せなくね?
そっかー、これが俺の使徒なのかー。
「あぁそいやまだ妖精族がいたなぁ、人種と同時くらいでもいけるだろ、全員捕まえて俺様の奴隷にでもしてやるよ、ありがたくおも――」
あぁ、なんか誰かに似てる気がすると思ったらお嬢様だ。心なしかほんの少し、ちょっびっとだけ似てると言われれば似てる気がする。ほくろの位置くらいだけど。
奴隷って言葉、ちょっと嫌いになってるわ。いや、必要な時代とか役割とかあると思うけどね。
狼はさっきの見事なコンビネーションはせず正面から三匹同時に向かってきた、だがケロべロスのように見えなくもない。
その顔を、横なぎワンパンで消し飛ばす。
「は? お前、今なにやって……」
放心しているアリスを無視しフェアが狼の上に乗った。
「きゃはは、たわいもないの! フェアの仲間にかかればこんな雑魚一発なの! それに比べて、あれ? あれあれあれ? 何かお漏らししてる子がいるの! プププ、どちら様ですかなの」
「あの、フェアさん、私たち仲間ですよね?」
「え? なんて言ったの? お漏らしの音が大きすぎて声が聞こえないの! きゃはははは」
「……この羽虫、絶対許しませんからね」
「きゃはは、ほらほら立ってみるの頭が高いの」
そういって飛んでいき頭に肘を乗せてうりうりしにいった。
キュラがパッと顔をあげると満面の笑みで。
「私、復讐って結構好きなんですよね」
「……え? 何言ってるの?」
「えへへ、一生このこと覚えてますからね?」
「う、嘘なのよね?」
「……ふふ」
笑顔のまま笑いかけるだけだ。
「キュラって何してても絵になる美しさだと思ってたの!」
「ふふ、この歳で漏らしててもですか?」
「あの、ごめ、ごめんなさいなの! 許してなの」
涙目で震えるくらいなら煽らなければいいのに。
そんな和やかな雰囲気をアリスの怒号ともとれる言葉がかき消した。握りこぶしを作っている。納得がいかないようだ。
「お前! 狼になにしやがった!」
何と言われても、特に変わったことはしていないので正直に話す。
「……殴った」
アリスの顔が驚愕に変わった。信じてくれたようだ。
「そんな、嘘だろ……見えなかった。俺様が? ……なんだよこの体の震えは、お前は何なんだよ!」
なんだ? 後ずさって逃げようとしてるのか? 正直それは困る、まだフェアのギフトもキュラの作戦も見ていない。というかこいつら逃げるくらいしかしていない!
あるよな? 作戦あるよなぁ!?
ということで安心させよう。
「安心しろよ、俺はお前に手を出す気はない」
「本当か? 助かったぜ。…………助かった? 俺様が? こんな同年代の相手に? ………………ハッ、ふざけるなよ! 俺様に敵はいない! 俺様に喧嘩で勝てる奴なんていねぇ! 俺様こそが最強だ。見間違いに決まってる。そうだ俺様が最強なんだ!」
一方そのころネッコが起き上がった。
「紙一重で負けたけど、もう戦いは終わっちゃったんだ。よし……気を取り直してアリスちゃん遊ぼう~!」
「「「え?」」」
俺たちの驚く顔をよそに。ネッコは十メートルはあろう、大きい化け猫の姿に変わった。質量がとんでもない。
なにこいつクッソ強そうなのに変身できるじゃん!
ズシンズシンと地響きを鳴らしながら近づいていく。鋭く伸びた牙を隠そうともせず話しかける。鋭利な刃物より恐怖を煽る爪をアリスに伸ばした。
ネッコは純粋に遊びたいのだろうニッコニコで笑っていたが、その視線を向けられた相手はおぞましい化け物に見えたのだろう。
「なんだよお前等、なんなんだよ! くそが! 俺様をなめるなぁ! サウザンドライトアロー!」
アリスの周りに無数のライトアローが展開され、放たれた。操作もしているのだろう、天高く上ったあとに急落下してくるライトアローもある。左右からもネッコを包み込むようにライトアローが襲い掛かる。
ネッコは一瞬ぎょっとしたがしかし。
「消えなさい」
キュラからそんな声が聞こえたかと思うと、すべてのライトアローがなかったかのようにフッと消えた。
光限定なのだろうがあの量の魔法を消せるのはすごいな。これを狙ってスキを突く作戦だったのか? ……狼に負けたが。ん~微妙な作戦だったな。
「なんで!? なにが起きたんだ! なめるなよ雑魚のくせに!」
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