第40話
「獣人族についてどう教わったか知らないが、俺たちは無害だと思うぜ?」
「襲ってきたり、しないのか?」
「なんで襲う必要があるんだよ。確かに俺たち肉食の獣人族は食うのに困ったら同族でも襲う、だから同じ獣人族でも肉食は嫌われてる。それでも餓死する寸前まで我慢もするし、できるだけ離れた種族からだ。お前ら人種だって遭難して餓死しそうになったら共食いすんだろ? それとなにが違うんだ? 牙や爪が生えてたって、人種より体が強いからって、なぜそんな目で見る。俺らからしたら食いもしねぇのに同族を殺す人種の方が怖いね!」
獣人の男はおどけた様に話していたが、少し寂しそうでもあるように見える。
「す、すまん。そんなつもりはなかった。獣人族と話すのは初めてで」
「ま、それも人種が迫害してくるから見ねぇってだけで、俺らは結構人種好きなんだぜ? 特にこの村の連中は大好きだ、最初に俺たちに会いに来たやつはもっと好きだ、この村で迷惑おこすなよ? そいつも獣人族連れてるいいやつだからよ!」
「ああ、わかった。慕われている奴がいるんだな。俺様もそいつに会ってみたいもんだ」
すいませんここにいます。トイレもお風呂も一緒にいました、もうどんな顔してあったらいいかわかりません。
獣人族も労働力としてしか見てませんでした!
「あ! おにいの匂い! ここだ~!」
やばい!
いきなり現れたネッコが俺に触れると、透明化が解けた。
そう、この魔法は万能ではない。臭いも残るし、音も、触られたら魔法は解除されるのだ。しかも――。
「きゃああああああああああああああ!」
アリスの目には俺の裸体が映ったことだろう。
仕方ないじゃん! 服まで透明にはならないんだから!
いやだが待ってほしい、よく考えてみよう。今の流れならいけるのではないだろうか。全裸で許される存在そうそれは!
俺は出来るだけかっこいい声で、かっこいい顔で、かっこいいポーズをとって決めた。
「俺さ、神だって言ったら、……信じる?」
この叫び声に駆け付けたのは頼りになる仲間で。
おお! 良い演出だぞキュラ!
これあれだよな? 神っぽい演出のスポットライトだよな? 犯人逃がさないようにするあれじゃないよな?
「ちょっと強いからって調子に乗るななの変態!」
そう言い放ち、肥大化した腕で俺を地面に埋め。
「神を名乗るなんて罰当たりですよ? エロ神様ですか?」
と、頭の上に足裏が置かれた。
「バカにゃの? 頭打っておかしくなっちゃたの?」
お前のせいだけどな!
こいつら全員人の見てないとこで引っぱたいてやる!
……しかしこの角度、キュラとアリスのパンツが見え、見えそうで、見え、見えねぇ! 逆光邪魔なんだよ!
「なんで血の涙を流してるの? さすがに怖いの」
おかしい、じじいとばばあまでもエロ神様といって拝んでくる。
「この人ひどいんです、私のことを借金のかたにして連れまわし、いつも虐げてくるんです」
「おまっ、状況が有利だからってあることないこと言うんじゃない!」
「あたしは奴隷にされたよ?」
「……し、してないし!」
「フェアはかごに入れられて攫われてきたの、これがほしいならついて来いって言って大事な家から連れ出されたの」
俺は逃げた。
神様なめんな! 首以外埋まってても出られるんだよ!
追っ手を振り切ると。すぐに透明になって戻ってきた、二度と同じミスはしない。
アリスは自室のベットに向かうところだった。いろいろと考えながらなのだろう手を顎に当てている。ベットに飛び込むと。
「なんだこのふっかふかのベットはどうなってんだ! 雲の上にいんのかよ!」
可愛い。
そして本が目に入ったようで。悪魔に魅入られたかのように、その表紙から目が離れられず、手に取って開き。
「ぶっはああああああああああああああああ!」
鼻血を噴き出した。BL本だ、フェアのお気に入りの。
「ななななな、なんだこの本は、すごい、すごいぞ! 手が止まらん! こっちは!? こっちはなんだ!」
ゲーム機を手に取り、試行していると。
「それはゲームなの! この中からソフトを選んで起動させるの!」
ベットわきにある本棚に並べられたゲームソフトへ目線を導いた。
「そ、そうか、これでこのゲームが起動するのか! ……なんでいるんだ!」
「ふふ、この部屋を用意したのはフェアなの、同志を迎えるためなの!」
次の日の昼までゲームは続いた。それはもちろんまだこの世界になかったもので、熱中しているようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます