第35話

「まだ言いたいことあったわ、なんで俺の使徒こんなに弱いの? なんで誰も魔法使えないの? なんで誰も気力使えないの? 無駄じゃん! この世界の設定無駄じゃん! しかもこいつらのギフトに応用力があるわけじゃないし、なんなの? てゆーかなんでギフト優先で人選したの!?」

「そのうちわかるし~」


 はぁ? なんなの? ……はぁ。


「そのスイーツ好きなの?」


 機嫌がよくいつもと比べ、なんでも教えてくれるので聞いてみた。

 話しの間にちょくちょく食べてるスイーツを口に含むときは、すごく可愛らしい笑顔を浮かべている。


「すっごく美味しいし! あんたの画面見てるときに気になってさ、パクったポイントで即買いしたし!」


 パクったポイント?


「……お前なにネコババしてんだよ! それ俺のポイントだろ! …………ちょっと待って、あんたの画面見てる時ってなんだ?」

「んぁ? あんたがスマホで画面見るときに、あーしの脳内でもそれ見えっから」

「えっと、そのぉ」

「それよかあんたが二日に一回見てるモザイクが多くてプロレスしてるあれってなんなんだし?」


 ああああああああああ! やめろやぁ二日に一回とかいうなや。すいません気にしないでください。


「……プロレス? え? ちょっと待ってこいつもしかして処女か?」

「はああああああ? ちちち違うし! あんた一体なに言って! ってゆーか神にそんな概念ないし!」


 あるべあらう……やっべぇ心の声と言うこと間違えたぁ!


「もう切るし!」




 数日後。俺は今、七人の豪商と言われる内の三人。それともう一人、豪商の孫と言われる見た目が幼女と一緒に、集会所にいた。みな一つのテーブルを囲い、座って料理が来るのを待っている。

 お粥の商人が連れてきたのだ、村に入る前に豪商だということは聞いていた。

 で、この豪商の孫なんだが。


「はぁ、なんで俺様がこんなとこ。この辺で変態がよくでる噂も聞くしよ。クソが、豪商の一人とか呼ばれるお爺様のいいつけなら仕方ないねぇか」


 アリスなんだけど。魔族と戦ってるんだよなこの辺。キュラにもアリス一族にも入り込まれてるじゃん!


「おや、いかに先読みに優れると言われるお嬢さんでも、この離れ村はきついですかな?」


 一人の豪商に嫌味を言われていた。小娘は帰れば? と言うことだろう。確かに不満そうな表情をしていたのかもしれない。


「おやめください。もし喧嘩をするようならば、いかに豪商の一人といえど、紹介はできません。この村に争いを持ち込むならばここに居る資格はありません」


 そう言ったのは商人だ。どうもこの男、そこまで気は強くなさそうだが、この村のことになると目の色が変わる。

 それにしても先読みに優れるとか言われてる少女ね、う~む、幼女だと思うのだが。可愛いしどうでもいいか。ありよりのありですね!


「チッ、すまねぇ、俺様が不満をいったことが発端だ。こんなすげぇ商談の席で争いを起こす気はない」

「そちらがそういうことならば」


 ……みんな無言だ、空気が悪い、なんとかしろ商人お前のせいだぞ!

 そう思い、商人に、紙に書いて渡そうとした。

 回りくどいがそうしないといけない。だって。

 ……透明人間になれたから! 姿を見せないように情報収集しようとして、試したら出来たんだ! この世界魔法とかあんまいらなくね? 肉弾戦で良いじゃんとか思ってすいません!


「さっそく、料理が来たようですね、みなさまいただきましょう! きっとこの料理も美味しいに違いありません!」


 タイミング良い!

 暇だしアリスをじっくり観察しようそうしよう。

 はっ! まさかこれが神視点というやつか! たまに小説で聞く言葉だったがやっとわかったぞ!


「この料理はなんだ?」

「はい、カレースープと申します」


 アリスに給仕が答えた。

 今日は豪商を接待し、良い噂を他の町に広めてもらう作戦だ。事前に村のみんなには協力と、理解を頼んでおいたから大丈夫だろう。


「お先にどうぞ、お嬢さん」


 目利きを見せてみろ、そういうことだろう。


「ふん、食欲がわくいい香りだぜ」


 まずは香りを確認し、目で見て、何かを考え目をつむり、一口。

 もぐもぐ、もぐもぐ、ごくん。

 目を見開いたと思ったら。

 がつがつがつ、もぐもぐがつがつ。

 一心不乱に食べつくし、皿をもって舐めようとして我に返った。


「すまねぇ。あまりに美味しくて、はしたねぇ真似をした。肉が、肉が口の中に入れただけでとろけて野菜と交わり、喉がもっとよこせとせっついてくるんだ。このピリッとする舌の刺激も、鼻に抜ける様々な香りもより食欲を掻き立て、止まらねぇ」


 ごくり、他の者の喉がなった。

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