クラス転移したら俺は神になったけど、最初殺しかけたよね? お前らも国王も幸せになれると思うなよ? ~シトのポンコツ三人育成計画、ついでに通販で新しい町をつくって快適生活~
@kamisamanosikaku1
第1話
「召喚されし者たちよ、よくぞ来てくれた」
気が付くと知らない場所だ。声の方をみると王冠を被ったいかにも王様という風貌の老人が玉座に、その横にはローブを羽織ったいかにも魔法使いといった格好をした男が立っている。
「な、なにが起きたの?」
そう困惑の言葉を呟く声は、クラスのアイドル的な委員長だ。
「君たちはこの世界に召喚されたのだ、まずは落ち着いて話を聞いてくれ」
みんなが混乱していた、魔法使いが話すのを漠然と聞き、為すがままにされている。
順番に羊皮紙を額に押し付けられていく、ざわざわと会話が聞こえ、最後に俺がやられる頃にはみんな状況を飲み込み始めたようで。
それを見ながら俺も感づいた。
これ漫画とかで見るクラス転移だ! 能力の鑑定してるんだこれ!
冷静になって辺りを見渡すと城の中のようで剣を持った兵士が多数に、後ろのベランダからは夜空が見えた。
鑑定が終わった者から順番に整列させられている。
「おお、すごいですぞ。勇者に賢者、剣聖、重戦士、召喚士や魔剣士。戦闘職が目白押しです。ステータスもみな初期値から高く、他にも聖女に、勇者、勇者、勇者」
勇者多くね?
「それに成長速度上昇などのギフト持ちまで!」
王様が初めて口を開く。
「そうか、召喚は成功か。ソナタらにはこれから魔族との戦争に参加するか、ダンジョンの攻略に向かってもら――」
「ふざけんじゃねぇ! 元の場所に帰せや!」
いきなりヤンキーが声を荒げると王様に向かって走り出し、透明な壁にぶつかった。
まぁ、気持ちはわかる、誘拐だもんなこれ。
「君は、武闘家か、高いステータスを持っているな。だがここは王城、君たちを召喚して王に何かあったら困るだろう? もちろんその場所は結界で閉じられている、最高位の魔術ゆえにそれを超える魔力がないと破れしない。それに――」
王様が顎動かすと、俺たちの後ろにいた屈強な男がヤンキーに歩み寄って、持ち上げた。
「てめぇふざけんな! 降ろせ!」
ヤンキーが殴りかかってもビクともしていない。
王様がもう一度顎を動かすと、ヤンキーは床に叩きつけられ、意識を失った。
俺はスマホを取り出す。もうお約束はわかっているのだ、どうせ魔王を倒すまで帰れないとか色々あるんだろう。
やっぱ圏外だよな、てか朝方じゃん、なんでこんな時間なんだよ。
昔はヒーローに憧れてたっけな、少しの努力で人並み以上に成れた気がする。高校に入る頃にはだんだん友達も減っていって気が付いたらぼっちでオタクな訳だが。
いやまぁ、自分の強さがどれくらいかワクワクしてるけども、俺の順番まだかな。
「王国最強の気力を持つ騎士団長もいる、無礼は許されない。君たちの世界ではどうか知らんが、この世界は権力と力がすべてだ」
俺は話を聞き流し、自分の番を待った。
また順番に向いている職業やステータスが読み進められていく。
が、今までスラスラと流れていた魔法使いの言葉が詰まる。
「どうした? 魔法使いよ」
「…………ギフト、ドラゴン使いです」
「なんだと!?」
王様が立ち上がり驚いた顔をすると兵士たちのざわざわとした声まで聞こえた。
相当に期待できるギフトなのだろう、立ち上がったくらいだしな。……ギフトってなんだろう?
「つ、続けます」
そうこうしていると、次が俺の番だ!
が、また魔法使いの言葉が詰まる。
ふふん、何かすごいのだな?
「どうした魔法使いよ。続けろ」
「そ、それが――」
「ふはは、どうした? これ程までに優秀な人材が続いたのだ、さぞかし素晴らしい職業なのだろう? もったいぶるな。最後の者のあの太々しい態度に目つき、気に入ったわ! ふはははは」
ふふん。見る目があるじゃないか。俺を気に入るとはな!
強いらしい職業やギフトとやらが続いて上機嫌なのだろう、王様の声色はそう聞こえた。
「は、はい。……無職です」
……プッ、とそう聞こえると、だんだんと。クスクスやヒソヒソといった声が聞こえ始める。
……え? なにが起きてるんだ?
「くっくっく、おいおい、力がすべてのこの世界で無職? お前やっぱり無能だったんだな」
クラスの人気者が笑うと、それにつられるように周りがみんな笑う。
なんだよ、これ。
「一匹狼気取っててさ、実はお前の事嫌いだったんだよな」
お調子者が追従する。
なんで? なんで俺だけ。聞き間違いだよな?
「無職? 平民以下じゃないか、俺達より役に立たないんじゃないか? 召喚されし者なのに?」
兵士の笑いを押し殺した声が聞こえる。
嘘だよな? なんでみんな笑って。誰か。
「静まれ!」
王様の声で一斉に話し声は止んだ。
助けて、俺、無能なんかじゃないよな? ……そうだ、まだギフトってのがある! 大丈夫だ、きっとなにか。
「ギフト、なし。ステータスも平民となんら変わりありません」
…………そのセリフを聞いた後、長い時間が立った気がした。でもそれはたぶん俺だけで。
「ワシに……恥をかかせたな。だが安心しろ。貴様にもまだ使い道はある――」
使い道? 俺にもまだギフトみたいな何か特別なものがある? そうだよな、大丈夫だよな。
(逃げるし! はやく!)
なんだ? 頭に声が響いてくる。
「先の男のように反抗されるのは困るのでな。見せしめと、この世界での常識を教えるのに役立ててやろう。召喚されし者たちよ。殺せ、こやつで狩りの経験を詰め」
狩り? どういうこと? 俺? 俺が獲物? 嘘だよな? 俺が?
周りを見渡しても誰も助けてくれない。目が合っても背けられ、手を伸ばしても距離を取られる。
なんだよ、これ。誰か。
(早く逃げるし! ああもう! なんでこんなところにいるし! まだ少し時間かかるし!)
なんだよこの声。頭いてぇよ。
(いいから走るし! ベランダに向かうし! あーしが助けてやるし!)
助ける? なんだよ、どうなってんだよ。
立ち上がり、歩き出した。走る力は……まだなくて。
「無駄だ、平民ごときの力ではその結界は破れん。騎士団長、逃げようとするなら真ん中に弾き返してやれ」
後ろから炎が飛んできて足元に着弾する。魔法だろうか。俺を狙っているのがわかる。
「無職とはお似合いだ! 平民以下のごく潰しが!」
「こーろーせ! こーろーせ!」
このままじゃ本当に殺される。そう思わせる熱量とこげ跡が目に入る。
でもこのまま走っても結界があるし、騎士団長もいるし。
(いいから走るし! あんたならそんな結界壊せるし!)
俺は走り出した。頭に響いてくる声だけを信じて。魔法がいくつか飛んで俺を通り過ぎていく、背中に違和感を感じたが無視した。
前には騎士団長が立ちはだかり、剣を抜いた、刃物が見えただけで怖くなり速度が落ちたかもしれない。
(突っ込むしいいいいいい!)
加速する、脇を抜ける様に体勢を屈め、腕で払うように騎士団長を押しのけると。
「なんっ!?」
驚いた表情と声を一瞬聞かせ、吹き飛んだ。
結界と呼ばれていた透明な壁はぶつかると、少しの抵抗で簡単にひびが入り、そして大きな穴が開いた。
「ありえない! なぜ平民が私の結界を!」
魔法使いは呆然とし、王様は。
「なんだその力は!? 待て! もしやソナタが! 待ってくれ! 話しを聞いてくれ! ワシが悪か――」
ベランダに近づくにつれ外の景色が見える、相当高い場所にいるようで。
(あーしを信じてそのまま飛ぶし!)
くそ! 自殺する勇気なんてねーぞ! でも――。
俺は声を信じて飛んだ。こんな所にはもういたくないから。
踏み切った足はその衝撃で城を大きく崩し、俺を空中に運んだ。
王様の制止の声に、兵士の慌てる声、クラスメイトの泣きわめく喧騒を後にする。
朝日が町を照らし、眼下には壮大な景色が広がっていた、俺の体はそのままこの町の城壁を超えて。
「飛びすぎいいいいいいいい!」
(ってゆーかあんた強いからゆっくり歩いて逃げられたし。お、転移開始するし!)
天から光が落ち、飲み込まれる。薄れゆく意識の中、最後に言いたいことがあった。
「なんで先に言わないの!?」
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