第2話
「あんたは人から神になった選ばれし存在だし、それは神すらも予想できないことなんだけど、神としての力が他の神と比べてもあきらかに溢れ出てる。他の神もみんなあんたの力に気が付いて、期待もしてるし警戒もしてる。間違いなくあんたは何か偉大な事を成し遂げる存在だし。……もしかしたらあんたみたいなのが大神を超えて神様ランキング一位になるのかもね」
目を開けるとギャルの太ももが見えたんだ、だから俺は目を閉じた。いや正確に言うとパンツが見えそうだったのでバレないようにギリギリまで薄眼だったわけだが、その努力は報われないのかもしれない。
「真面目な話し終わりだし! あんた死んだし~」
語尾にかっこ笑い、がついててもいいくらいの笑顔とトーンで言っている。
返答は無言だ、横向きに寝ているわけだからチラッと眼球を動かすと顔が確認できる。まぁなしではない、というか可愛いため寝たふりを続行する。金髪ギャルは好きな方だ。
俺に話しかけたわけではないかもしれないし!
「起きてんでしょ? なに? もっかい死ぬし? 股間にテント張ってて超ウケるんですけど、ってゆーか小さくね? ぷっははは」
ギャルは笑いをこらえる様に、というか手で口を隠しているが笑いが漏れている。
クッソがぁぁぁぁぁぁああ! 俺の! 俺のこんな些細なミスでバレるなんて! ごめんな、ごめんな俺の息子よ。……いやお前のせいだぞ!
ゆっくりと大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐きながら立ち上がることにした。深呼吸は冷静さを取り戻すためにもってこいだ。
あ、どーも。と言いながら制服を払い、着崩れを正した。
あらためて周りを見渡してもなにもなく、太陽もないのに白い空間が広がっている。ギャルは俺にそこまで興味はないのか、自分の爪を見ているようだ。
とりあえず誤解を解かなくてはならない!
「いやぁ、あれですね、女の人にはわからないかもしれないですが、男って寝てると生理現象で少し大きくなることがあるんですよ、少しだけね? 決して僕の限界がこれだと思わないでいただきたい! ……そう寝てただけでなんです。決して覗いていたわけではないことだけわかってもらいたくてですね……」
何言ってるかわからんくなってきた。
「なに? 小さいこと気にしてんの? ぷはは」
舐めてんのかこいつ二回も言いやがって! ムカつくぞこいつ!
「してねぇよ! というかスカート短い方が悪いんだろうが! 謝れ! スカート短くてすいませんでしたって謝れよ!」
「メンタルつよっ!? あんた死んでんのよ? 自覚ないし? ってゆーかさっきまでのこと覚えてないの?」
……え? そういやここどこだよ。
「あれ? クラス転移ものは? ……俺さ、オタクだからわかるんだけどさ、なんで二回もプロローグみたいなことしてんの?」
「あれね、あんた文化祭の打ち上げ参加せずに帰ったっしょ? 他の人は召喚されたけど、あんたは別のとこで死んでんの、んであんたは引っ張られただけな訳よ」
ええ? じゃつまり?
「えっと、本当に? 俺もう死んでたり、ははは、そんなわけないよな? じゃあ異世界転移で元の世界にいつか帰れるんじゃなくて、異世界転生ものみたいなながれ――」
「お? 思ったより察しいいじゃ~ん、そ、あ~し女神だから。選びなぁ? 神になって上を目指すか、日本でトイレットペーパーとして新たな生を受けるか」
「トイレットペーパーとして新たな生!? 一生ケツ拭かれる道具になって最後は下水に流される人生ってか!? 生前そんなに業が深いことしたかなぁ!? んでちょっと待って!? 情報量多すぎて訳わかんねぇから! ……え待って? 俺本当に死んだの!?」
「そ」
「そ、じゃねぇよ! 説明してくれないの!? 死ぬ前の記憶ないんですけどぉ!?」
はぁ、やれやれ、仕方ないなぁ。と言わんばかりにため息をついて、髪の毛をいじりながらの自称女神は、説明を始めた。
死人を前にずっと足組んでるし。なんか見下しながらニヤニヤしてるし。
「まぁ軽く言うと」
軽く言うな、こちとら最後のメモリーじゃ。
「タワマンからピンクの紐パン握りしめて頭からグシャっと落ちた、みたいな?」
「……そんだけ? 短くない?」
「えっと、脳みそが地面に叩きつ――」
「そこじゃねぇよ! グロいわ!」
「え?」
「え? ……じゃねぇよ、もっとあるだろ!?」
「脳みそが地面に――」
「違う! なんでそこだけ詳しく言おうとすんの!?」
「え?」
「え?」
なにこいつ話通じねぇの? もういいや。でもトイレットペーパーは嫌だなぁ。
しかし死んだと言われても実感がない。昔頭打って気絶した時も起きたらこんな感じだったな。異世界か、ふむ。
「あの、すいません。神になったらサキュバスとお近づきになれたりします?」
……そんなゴミを見る目で見ないでよ、人は中身じゃないよ? 見た目だよ。同僚になるかもしれないんでしょ? 格とかあるかもしれないけどさ。
「なぜにいきなり敬語になったし。つか、いきなりサキュバスの話しとかそこ重要?」
男にとってはかなり重要なんだが理解できんか。やれやれだな。
「さっさと先進んでいいし? 神になって世界を作るか? トイレットペーパーになって下水を旅するか? どっちだし?」
「世界作れんの!? 神でお願いします」
冷静になって考えたら神になるとか破格の条件だしな。父さんも仕事人間だしそんな悲しくないでしょ。
俺が死んで悲しむのは、あとは近所のおばさんたちくらいかな? おじさんもおばさんもガキの頃から家族ぐるみで良くしてくれてたっけ。子供が生まれた時とか俺も嬉しかったなぁ。寝てるときに苦しかったことあるけど。
「んじゃ神様チュートリルな、とりま、キャラクリすっからどんなんになりたいか言ってみ?」
キャラクリ? 見た目変えれるの!? さよなら人生! こんにちは素敵な神様ライフ。ごめんなさいお父さん! 俺、イケメンになるんだ。
「俺さ、叶わないってあきらめてた夢があったんだ。……見た目可愛い小六の女の子みたいにしてください! あれな! 女の子に見えるけどでも実は男って感じ! ショタなら幼女と付き合っても問題ないよな!? あとショタプレイもしてみてぇんだ! お姉さんにボク君って言われてぇんだ! んで目はぱっちり二重の大きく、でも流し目したら女はイチコロ! みたいな感じで! それでいて彫はすくなめの少し幼くも見えて年上からも可愛がられる印象で、鼻は高めの小鼻で歯並びもよくてホワイトニングしてるの? ってくらい白くて、泣きぼくろもつけてな!」
「お、おお。めっちゃ早口でちょっと怖いんだけど、……こんな感じでいいっしょ?」
一瞬で変わったのを鏡を見て確認する。
あぁお父さん、大丈夫です安心してください、目も鼻も口も元々の数と同じです。黒髪黒目ならもしまた会っても気が付けるでしょう、親のパワーでなんとかしてください。
「次は体形ですね」
キャラクリをしたことがない人にはわからないだろうが、俺はしっかりと理解している。
とりあえず全裸になるのだ。スマホの落ちる音がしたが気にしない。
服を脱ぎ捨ててもギャル女神は何も言わず特に目をそらすこともなかった、見慣れているのかもしれない。それどころか鼻から短く息が漏れ。
「フッ」
ごめんよムスコォォォォォォォォォォ。
「とりあえず女の子っぽく背を低く、で足を長くしてくれ、あとスラっとした体形に、飯をいくら食っても太らないようにしてくれ」
「わがまますぎっしょあんた」
と言いつつしっかりやってくれるので少し惚れそうです。
「あと……少しだけ言いにくいんだが……その、俺の息子を引きずって歩くくらい大きくしてくれないか? あ、大丈夫だよ? 砂利道を歩くときは腰に巻くから」
うわぁ、と聞こえたがこんなチャンス二度とねーから!
あああああああああああああ、俺の息子が少しずつ大きくなっていくうううううううううううう!
「……ちょっと待ってくれええええええええ! ロケットみたいに大きくなってるから! 本体が息子で俺がイボみたいになってるから! お願い! ねぇ! 話聞いて! 止めて!」
「……なに?」
くそ焦ったわ。え? なに怒ってんの? いつの間にか顔そらして赤いし、いきなり脱いだから? 大事な所で復讐してくんのやめろや!
「あの、すいません。三十センチくらいでいいです。……おおこれこれ! これきっとあれよ!? お姉さんに馬乗りにされて抵抗するんだけど脱がせてみたらお姉さんが大きさにビビるやつよ!」
「ねぇ、そろそろ制限時間なんだけど、キャラクリに時間かけすぎだし。もう一気に説明していいっしょ?」
制限時間なんてあったの!? ロケットにして無駄にしたのお前じゃん! やばいよやばいよ。
「時間すぎるとどうなんの!? はよはよ!」
「とりま、最初に使徒を三人用意して。んであ~、……あ~しの世界でいいっしょ、いってら。……神になる資格を見せるのだ、し!」
よくわからんが使徒を三人育てて育成能力を見るって感じかな? んで神様ランキングとやらを上げればいいと。……なにこれ楽しそうなんだけど。最高の使徒を作ってやるぜ!
あれ? ちょっと待って?
それだけで俺の周りにはなんか半透明なのが地面から浮きでた。
「!? はやいはやい! さすがに説明短いって! 使徒作れるんじゃないの!? 世界作れるんじゃないの!? せめて強い使徒を頼む! あと可愛い子!」
「世界なんていきなり作れるわけないっしょ? 見て覚えな~? 使徒はおけまる~、強いギフト持ちね~。とりますぐ近くに馬車通るみたいだからそこに一人目いるわ、それと使徒契約もだけど、契約ってのは絶対だからきぃつけな?」
たぶん、ぶっ飛ばされるまでに、まだごねる時間がある!
俺は足元に転がっているスマホを拾い上げた。
「これ! 大事なもの! スマホがないと現代人は死んじゃうから! 電波だけなんとか可愛い女神様の力で何とかしてください! あと緊急で何かあったときにすぐ女神様に相談できるように電話かけたら直接脳とかに繋がるようにしてください! 城にいた俺みたいに!」
「あ、あーしスマホっての持ってないけど、なんとかしとくわ。大事なものなら仕方ないし」
「契約な!」
「う、うん、わかったし。あと記憶、思い出せるといいな。いい出会いがあるかもだし」
あれ? ほほ赤らめちゃって、なに? 慣れてないの? こんなんもっとごねたらいけたやんけ!
「っていうか ギフトってなにぃ!?」
俺の視界は一度暗くなった。
今始まる! 俺の俺による俺のための! 身一つからの成り上がり神様生活!
「ぅん? きゃむぐぐ」
俺の反射神経はいい方なのだろう、咄嗟の判断も出来ていたと思う。
右手に握りしめていたスマホを耳に当てると、女神に呼びかけた。
まさかこんなにすぐ連絡を取るとは思わなかった、これは対応が必要だな。
「もしもし、聞こえるか?」
「ももも、もっし~きこえっけど?」
初めての電話なのだろう、少し声が上擦っていた。
「で、なんだこれは」
「? ギフトのことについて?」
「違うわ! なんで! 俺は! 全裸で! しかも! 馬車に! 乗ってんだ!」
そう、俺は全裸で馬車に乗っているのだ。
身一つからにも程があるだろ!
当然馬車には先客がいるわけで、しかも若い女の近く、豪華そうなドレスを着た女だ。
しかもなぜか、この馬車の中が狭い。四人掛けできるようになっているようだが、女の横には荷物、斜め前にも荷物、そして、前にも……荷物。つまり目の前に……イチモツ。
かなり下品な表現になってしまうが咥えさせているような距離なわけで。
女からしたら、俺はいきなり目の前にぶら下げながら現れ、口を押さえられたと思ったら、鉄の塊を耳に当てて独り言を言う危ないやつなわけだ。
普通全裸のまま転移させる? 城から逃げた時より惨めな格好だよ? てか普通外だろ! 馬車の! 草原とかだろ!
「馬車の近くより、中の方がイクイクない?」
うるせぇわ。
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