第21話

 貴重な食料も、今まで手放さなかった思い出もすべて差し出した老人。その老人に恩を返すくらいいいだろう。

 さて、何にするかだが、とりあえずは飯だろう。

 だが無駄遣いいけない! とすれば美味さより栄養か、卵だな。腹が膨れていきなり食べていいのはお粥だろ。いやまて、ググろう。

 ふむふむ、卵、豆乳、ブロッコリー!? ヨーグルトに納豆か、全部お粥にぶち込んで。……いや順番でいいな。

 体力減ってるやつには、卵お粥と、豆乳。

 盗賊みたいなのには、納豆ご飯とヨーグルト。納豆かぁ、好き嫌いわかれそうだが。

 作るのめんどいなぁ、安いし卵とお粥でいいや。結局これがテンプレだろ。でも小麦粉も安いな、いや消化のいいもの、う~ん。お粥だな。

 さっそく通販するとすぐに届いた。女神は今暇なんだろう。


「おにい!? そういえばどこからご飯出してるの!?」


 いまさら?


「あ? ギフトだよギフト」

「この卵おいし~!」 


 すげぇやこいつ、なんの躊躇いもなく、いきなり出てきたもの食ったよ、生で。しかもみんなの腹の音効きながらわれ先にだよ。

 奴隷ですら生卵を啜るネッコに引いていた、腹を壊すと思っているんだろう。

 盗賊に薪を準備してもらい、老人から火種をもらう。鍋は後で使えそうだし買った。


「まだかな、まだかな」


 料理なんてしたことない俺だ、とりあえず水に洗ってもいない米をぶち込んで、卵の殻はさすがにいれずにぶち込んで。

 ネッコから渡された木の棒を遠くに投げ捨て、拾いに行かせ。

 くそでかい鍋に合う、くそでかいおたまを買って。

 ぐーるぐる。


「もういけるんじゃないかな!? にゃっつ!」


 ネッコに味見をさせ、米が柔らかいか確認し。もう少し溶かして。

 ぐーるぐる。 

 一応味見して米の味しかしないのを確認して……絶望した。


「お前手伝おうとか思わないの?」

「あたしが作るとヘドロになるって言われたよ?」

「…………さぁみんな、遠慮せず食べてくれ」


 われ先に自分の分を確保するネッコを押さえつけると。奴隷にも、先住民のじじいとばばあにも振舞った。

 そしてネッコの実験台だ。

 塩を買い、ぱらぱらと、ネッコの分に振りかける。


「食え」

「おいち~! さっきより全然おいしいね!」


 出汁の粉を買い、さらさらと、ネッコの分に追加する。


「食え」 

「にゃは~! あたしのもっと好きな味になったよ! 深み? が増した!」


 醤油を買い、ポタリポタリと、ネッコの分に垂らし入れる。


「食え」

「ちょっとからい」


 俺は自分の分に塩と出汁の粉をかけて食った。我ながらいい出来だ。美味い。

 それを見ていた他の者たちが物珍しそうにしていた。

 そうかあれだ、塩に不純物がなさすぎて白さに驚くやつか。


「これは純粋な塩だ、このへんだと塩に苦みがあると聞いたことがあるが……あれだ、食えばわかる。各自好みでかけてくれ」

「本当かのぉ、こんな内陸部で塩を好みでかけていいのかいのぉ?」


 五杯目でも塩を、なんの遠慮もなくかけている仲間たちとはすごい違いだ。じじいばばあ、奴隷も躊躇している。

 小さな瓶入りなのがいけないらしい。


「おいしいです~さっきのパンと合わせて食べすぎかもしれません。また胸に栄養がいってしまいます」

「プププ、胸にしか自信がないやつがよくいうセリフなの、小さいところが救いようがなくて滑稽なの」

「あはは、全裸の変態妖精が何か言ってますね~」


 楽しく談笑しながらもりもりと食って、こいつら遠慮とかないのか? 他の人に食ってもらいたいんだが。

 調味料なんて日本じゃ安いからな。高級志向でもない安いのだしもっと買うか。必要なものだし賞味期限もたぶんないんじゃないか? 菌とか繁殖しないだろ。

 俺は運ぶ気がないから、小屋くらいの塩を一気に買った。まとめ買いすると安いしな。


「ええええええええええええええええ!」


 奴隷たちは口を大きく開けて驚き。


「ふぁあ……」


 ばばあ共は白目を向いて気絶し。


「……」


 じじいは何人か死んだ。


「じいさああああああああああん」

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