第20話
「あなたの方がゴミでは?」
キュラがよくわからない事をいい。
「あの妖精攫いやばいよ~」
「幼女にあんなことして捨ててくつもりだよ~」
「真の変態だよ~」
妖精たちに聞こえるようにヒソヒソと話された。
助けたのに! 原因俺だけど助けるために戦ったのに!
近づこうとすると蜘蛛の子を散らすように逃げる。
そして俺達は生贄の町にやっと向かった。幼女を森に置き去りにして。
町につくと盗賊が辺りを警戒していた、奴隷の周りだ、なんだかんだ面倒見がいいのを俺は気に入っている。
あれからキュラ、フェアを仲間にして、アリスと戦っただけだし、そんなに時間は立っていない。はず!
「アニキか、休み休み儂らも今着いたところだ」
距離結構あるしな、足を怪我してる者もいたしこんなもんだろきっと。
「なるほどここが生贄の町か」
掘っ立て小屋が乱雑に並び、目につく人は老人ばかり。活気というものが一切感じられない鬱屈とした空気感が肌に触れる。
「はいみなさん注目してくださ~い! 今からこの村を力でねじ伏せて占拠しますよ~! さぁ偉い人を呼んでくださ~い!」
「お前ホントに黙ってろよ!」
老人しか見えない町、というか村だが、暴力で乗っ取る気はない。だがさて、この人数の奴隷を受け入れてくれるだろうか。
騒ぎを聞きつけたのか一人のやせ細っている老人が歩み寄ってきた。
「若いのや、よくきたなぁ、なにもないところだが雨風は凌げるじゃろう。見た様子じゃと腹が減っているものも多いの、広間においで、できる限りのもてなしをしよう」
すごく友好的な老人のようだった。
助かる。
広間に全員で移動している途中で質問した。
「なんで年寄りしかいないんですか? 生贄って言ったら綺麗なお姉さんでは?」
「ほほほ、肉体労働すらできん犯罪奴隷をここに送って、魔物の死体から素材を回収させるんじゃ。いつ死んでもいい人間ってことじゃよ」
「犯罪奴隷なんですか? そんなことが出来るようには見えませんが」
「だいたい訳ありじゃな」
一息つくことにした。
言われた通り食事はでてきたが、あまりにも質素だ。宿屋で出たものよりかなり原始的だった。
お湯に何かの肉が少しと山菜が少し浮かんでいるスープ、それだけだ。
「すまんの、これが最後の食料じゃ、最近は魔物の死体がすくなくての、なにも行商人と交換できるものがないんじゃ」
老人の目線を追うと確かに馬車の荷台にいるものがいた。ここの者達と比べたら幾分かいい服を着ているように見える。
もう帰る時間なのか、出口に向かって馬を引いていた。
「んだとぉ! 行商人ってのはおめぇかぇ! こんな老いぼれくらい腹いっぱいにしてやれい!」
「やめておくれ、行商人が来なくなってしまったらそれこそ儂らは生活できん。善意でここまで足を運んでくれるんじゃ。国の使者に素材を渡しても買いたたかれるからの」
詰め寄ろうとしていたが縋るように止められては動けなかったようだ。
この盗賊は人情深そうだしな。
「この肉は魔物の肉ですか?」
俺がそう言うと老人はゆっくりと頷いた。
「あの森に魔物がいるの? お爺さんたちの分もあたしが捕ってきてあげる!」
走り出そうとするネッコの首根っこ掴んだ。
お前だけでも行ってもどうせ負けるだろ。
「ありがとのう、その気持ち、久しぶりに人の温かみを感じたぞい」
老人はトボトボといった力のない足取りで行商人の元へ向かい、胸からペンダントを取り出した。開けて中を見た後、少し笑い名残惜しそうに行商人にそれを渡した。
「これで腹を満たすものと交換してくれんかのぉ」
「良いのですか? それだけは手放さないと言っていたでしょう?」
「いいんじゃよ、孫も許してくれるさ。もしかしたら神様はこの日のために儂を生かしておいたんかのぉ」
「おじいさんのことはここに来る前から知っています、殴られてもそれだけは渡さなかったことも、それを落とした時に命がけで拾いに行ったことも。なのに……」
「いいんじゃよ、決心を鈍らせないでおくれ、はよぉ」
渡されたのは固そうなパンが数個だった。それでも老人は感謝し、みなに振舞った。
「あれって大切なものなんじゃないの? 絶対手放したらダメだよ、見ればわかるくらい大事そう。……おにい、あたし悔しいよ、助けてあげようよ!」
「そうだな、大事な物か。あれだけの覚悟と恩はそうそう受けないよな?」
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