第19話
その言葉に返されたのはネッコのにやけ顔だった。
「にゃは、なめてほしかったの?」
巨大な舌がアリスの顔をなでた。
もう終わりっぽいな。
驚嘆したのだろう、狼が一瞬で肉塊になり。驚愕したのだろう自慢の魔法が消し飛び。恐怖したのだろう、化け猫にほほをなめられ。
アリスの感情はぐちゃぐちゃになり。俺が近ずくと。泣きながら漏らした。
「うぐっ、ひっく」
「きゃっはは、漏らしたの漏らしたの! あんなにイキりちらしてたヤンキーも漏らしたの! カッコ悪いの! ダッサいの! 見た目が幼女だからお似合いなの! どんな気持ち? ねぇ今どんな気持ち? 下だと思ってたやつ相手に泣いて漏らして! どんな気持ちか教えてなの!」
フェアが煽ると。
「うわ~ん見ないでぇ~、あっちいってよぉ~」
拭いても拭いても涙は止まらず、声がだんだんと大きくなった。
「あらあらあらあら、さっき吸血鬼一族を馬鹿にしていた姿はどこへいったのですかね? そんなゴブリン! みたいに醜い顔で泣いちゃって、本当に大人でちゅか~? あ、幼女でちたか~」
「うわぁ~ん違うも~ん、大人だも~ん」
ゴブリンなのはお前の汚い心な。
「そうでちたね~、成長がクソほど遅いんでちたね~、私のように大きなおっぱいにいつなるんでしょうか~?」
「キュラだって胸小さいじゃ~ん」
「あ?」
着替えたキュラも加わったようだ。
おや? なるほど? つまりアリスは成長の遅い、大人なんだな?
なら問題ないよな!
「ほらネッコ、獣人に戻ってこれで遊んであげたらどうだ?」
猫じゃらしだ! 獣人に戻ったらこいつを渡す!
「にゃにゃ」
「お前が遊ぶんじゃない! 遊んであげるんだ!」
そう、ネッコで遊ぶのでも、俺が遊ぶわけでもないぞ? でもネッコがやるなら仕方ないな。
ネッコは自分がされたように顔に猫じゃらしを押し付け、さわさわとくすぐった。
化け猫から獣人に戻ったことによりある程度恐怖から解放されたのかもしれない。
「やめ、やめてよ~、ふふっ、くすぐったいよ~」
泣きながら無理やり笑わされていた。口調は泣いていた時のままだが、無理して話していたのか? それとも今が無理して笑わされているからなのか。
「ヤンキーのくせに生意気なの! ズボンを脱がせてスカートにしてやるの! ほらキャンキャン鳴くの!」
「やめてよ~、ひっぱらないでよ~」
「あらそういうことなら私、実は興味があって、はぁはぁ」
「あはは、くすぐったいよ~服の下からくすぐるのやめてよ~」
フェアはズボンを握りひっぱり。キュラは後ろに回って服の中に手を入れ。
「なに? なんで鉄の塊をこっちに向けるの? 変な音がするよ~、こわいよ~」
俺は写真を撮っていた。
だが待ってほしい、この声も保存するべきではないか? 俺は動画に切り替えた。
てゆーかこいつ、胸揉んでね? そういう趣味が?
「謝まったら許してくれるんじゃないか?」
「うわ~~~~ん、もうやめてよ~、見てるだけなら助けてよ~、お願いだから~、謝るから~」
「俺に言われても、……やってるのこいつらだし」
「ごめんなさい~、許してよ~謝ってるじゃ~ん」
「きゃははは! でもダメなの~、許さないの!」
「そんな~、少しでいいから休ませてよ~もう、あは、あはは」
ネッコはなおもこちょこちょを続け。
「やめてったら~、そんなところ触っちゃだめだよ~」
キュラの奴どこさってんだ!?
「ああ~、ズボン返して~」
「きゃはは、取り返してみるの~」
フェアは脱がせたズボンを木の上に投げ捨てた。
泣かされ笑わされ泣かされを何回か繰り返し、ひとしきり楽しんだ後。
「ぐすっ、ぐすんっ」
「よし、そろそろいいだろ。生贄の町に向かうぞ」
「そうですね、馬鹿にされた恨みは晴らしました。奴隷にでもして行きますか」
「しないよ?」
「なんでですか!? 勝ったら奴隷にするか殺すか、せめてみぐるみ剥がないと!」
こいつゴミだなぁ。いやもしかしてこの世界の常識なのか?
「それが常識なのか?」
「普通そんなことしないと思う」
「こいつゴミだなぁ」
「!? なんでですか?」
こいつ自覚はないのか。
「そういえばアリスはファイアアローの犯人を捜しに来たんだっけ? もうそれ忘れてくれ、そのうち弁償するからさ。続けるようならこれを世界中に見せて回るから」
そういってスマホで録画した動画を見せると。
「俺様、汚されちまった……」
とブツブツと言ったのでたぶん大丈夫だろう。
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