第10話

「なんだよこの生活! 朝から晩まで戦闘でダンジョンにこもって肉体労働! 休みも週一でサボらなきゃやってらんねぇよ。飯の味もしなけりゃジュースもないしよ!」

「私はサボりじゃないからね? でも甘い物は食べたいよね~」


 人気者と委員長に続いて取り巻き立ちも不満があるようだ。


「素材がないから何かを作ることも出来ねぇし、これだけやってもまだ上級にもなれない、聞いてた話と違いすぎるよな!」

「知ってるか? 金欲しさに冒険者になったやつ、馬小屋で寝てるらしいぜ? 命がけなのに強くならないとたいして儲からないんだと。一度城から出てったらもう戻れねぇらしい」


 うわ、きつそう。なんか聞いた話だとあれから何日か経ってるみたいだな。

 てかそういうことか! 宿屋でもクソまずい飯でお嬢様関係の嫌がらせかと思ってたが、この世界で砂糖とか胡椒とか貴重なんだな!? だから奴隷も驚いてたんだ!

 …………この世界現代人には無理だろ。

 納得してかっこよく座っていると。


「てめぇみねぇ面だな、おい無視してんじゃねぇぞ」


 と言われ。殴りかかるクラスメイト――。


「うるさいな」


 と格好よく言ったが。投げ飛ばされる、……新人冒険者が居た。投げ飛ばされた新人は俺にくるわけだ。ギリギリで避ける。

 と思ったらまた誰かとぶつかった。

 あいつら酒飲みすぎだろ、さすがに召喚されただけあって新人よりは強いんだろうが、荒くれ者かよマジで。

 関わりたくないのでギルドの受付嬢の所に行き話を聞くと。どうやら、先読みの賢者が店を開いているらしい情報を聞けた。感謝すると。


「あ、五千円になります」


 金いるのかよ……。

 どうやら情報料がいるらしい。そしてまた投げ飛ばされた新人が俺にぶつかった。

 狙ってんのか!? 


「つ、ついでに冒険者登録なさいますか」


 気まずそうにしているのがわかる。

 冒険者か、俺も使徒、仲間と一緒に冒険とかしてみたいな。と考えたがまだまともな仲間がいない。


「また今度にします」


 そう言い外に出ようと振り返ったら、肩がぶつかった。

 冒険者ギルドって厄介ごと起こりすぎじゃない? どうか穏便に済みますように。

 そう思いながら倒れてしまった相手に手を差し伸べ。


「大丈夫ですか?」


 と尋ねると。


「え、……あ、……ああ大丈夫だ」


 と困ったようにされた。


「君、どこのパーティに入ってるんだ?」

「え? 入ってませんけど」

「フリーなのか!? ぜひうちのパーティに入ってくれないか!」

「え? やめときます」


 なにこいつ! こっわ! でけぇし、肩掴んで揺らして来るし! 褐色腹筋割れお姉さん派閥じゃないんだすまん!

 周りがざわついているが? なんだ?


「おいあれって、英雄パーティ、ドラゴンハウンドのリーダーじゃないか?」

「はあ? うわマジじゃん! 膝をついたことすらないって聞いたぞ」

「確かあの天下の大盗賊を追ってるって聞いたことあるな、どんな戦いになるんだか」

「あいついま、パーティの誘い断ってなかったか? ありえねぇだろ、英雄パーティに入れればどれだけ儲かるか」


 と、言葉が左の耳から入り、右から抜けていく。あんまり集中して聞いていない。

 そしてまた投げ飛ばされた新人がお姉さんに当たった。一瞬でおでこに青筋が出来て顔つきが変わり。


「今大事な話ししてんだろうがぁ! 邪魔してんじゃねぇぞ雑魚共ぉ!」


 お姉さんが大声を出すと、場が静まり返る。

 ……こっわ! 低い声でそんな口調してたら子供がなくよ? 俺ショタなんだけど?


「はぁ? 誰が雑魚だよ、俺達が召喚されし者って言われてるの知ってる? 謝るなら今だけど?」

「やめときなって、すいませんご迷惑をおかけしました」


 委員長だけが頭を下げていた。


「へぇ、言うじゃないか、ぶっ飛ばしてやるよ、まとめてかかってきな」


 委員長は無視されてクラスメイトたちがお姉さんに殴りかかると。


「ぶえっ!」


 ワンパンで全員吹っ飛んだ。

 お姉さんつえぇ。子供が泣きそう。

 人気者のイケメン顔が歪んでいく姿がはっきり見えたことにより、少しスカッとしたが……。

 そんなことが起きていたが俺にはそれより大事なことがある。

 ……気が付くとネッコが胸ポケットからいなくなってのだ! どこかで落とした! ……いや、またなんかトラブル起こしてそうだな、後でいいや。そのうち帰ってくるかもしれんし。

 俺がギルドを出ると。


「あれ!? さっきの子は? どこいったんだ!? まだ話の途中だったのに!」


 と、聞こえたので足早に先読みの賢者がやっている店へ向かった。

 やってくると行列ができているようで。これは期待がもてるな。

 順番が来るまでスマホで時間を潰し、ついに俺の番がやってきた。中に入ると女が座っていたので、俺もテーブルを挟んだ反対側に座る。


「座すってから、五分ごとにお金がかかります。それで、なにを聞きたいんですか?」


 フードを被っている女だった。

 この先読みの賢者が使徒でもいいし。違うとしたら、探してもらえばいい! 完璧なアイデアだ。


「実は――」

「いえ、当ててみせましょう、フンッ」

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