第46話
せんべいを齧りながら、きょとんとして質問をしたと思ったら叫びだした。使徒とか神の説明すらしてない!
そのまま会話させたら絶対余計なことを言う!
「こいつが神であんたら三人が使徒だし、んでこれから使徒同士で戦ってもらうし、聞いてなかったし?」
「「「「聞いてないけど?」」」」
こいつらが戦うの? 誰と? 無理じゃん。絶対負けるじゃん。さよなら俺の神様ライフ。
「戦うなんて聞いてないの! フェアはただ漫画が読みたくてついて来ただけなの! 戦いは何も生まないの話し合いで解決しようなの!」
「そうですよ! 私は金欲しさに一緒にいるだけです! あとついでに楽して生活する権利も! あとあと酒とか女!」
「おにい! あたしにまかせて!」
無理だ、絶対勝てない。
「というかなんですか、神ですか? クスクス、全裸芸人のド変態がですか? プ~、エロ神なら納得しますけどね~」
顔面目掛けてケーキを投げつけ黙らせた。皿ごと投げつけなかったのは優しさだ。俺にも思いやりくらいある。
「何するんですかこの邪神!」
「うるせぇぞ背教者!」
投げられるフォークを軽く捕まえていると、女神の眉尻が下がっていった。
ネッコに顔面をなめられてキュラは静かになった。
「困ったし、戦う気ないっぽいし。負けたらあんた死ぬからね、なんで説明しなかったし」
「「「え?」」」
「いや戦うとか聞いてなかったけどね!? 説明しなかったのもこいつら選んだのも元はと言えばお前だからな!?」
やっぱりそうだよな、神になる資格を見いだせないなら神じゃない、つまり死。予想はしてた。
まぁ、元々死んだ身だし。仕方ないか。勝敗が見えてる上にやる気もないんじゃ。せめてもっと強くしてたらな、最初に四天王候補とか倒すから調子に乗って……。俺もあんまり不自由ない生活に慣れてきて……。こいつらといるといつも騒がしくて……。思った通りにいかないことが多かったけど、楽しくて。
なんだろう……、満足しちまったのかな、生きた事に。こいつらに命かけさせてまで絶対生き残ってやる、なんて思わなくなっちまったのかもしれない。
「ま……お前らといるの結構面白かったわ」
勝手に言葉に出ていた。こんな恥ずかしい言葉言う気はなかったのに。
んだよ、こっちみんな。
「……漫画が読めなくなるのは困るの」
「ああ、出来るだけ出しといてやるよ」
「一緒にゲームする相手がいなくなるのは困るの!」
「は? わがまま言うなって」
「私の楽々生活はどうなるんですか?」
「知るかよ! あの町のやつらに養ってもらえ!」
「私はまだ今の生活に満足なんてしてませんよ! カジノっていう施設も作ってください!」
「は? お前何言って――」
「あたしたちが勝つって言ってるんだよ!」
「…………は? お前らが? 何言ってんの? 勝てるわけないだ……ろ」
「あきらめちゃダメ!」
やめろよ、あの臆病なフェアが? あの無能なキュラが? あの傲慢なネッコが? 俺のために危険を冒す? そんな理由、漫画より金より命の方が大切だろ、……ないだろ。
「黙ってあたしたちを信じてよ!」
「お前等……そっか、たの……んだ」
ばれてないよな? 少しだけ目頭が熱くなってきた。
そうだ、楽しかったんだよ。もっとお前らと一緒にいたい、生きたい、本当は死にたくなんてない。
下を向いたのを女神が悟ったからなのか、話を進めたようだ。指をパチンと鳴らすと闘技場のような場所に飛んだ。
「待ってたよ、久しぶりだね」
その声が聞こえたとき頭痛がした。俺が死ぬ瞬間の記憶を思い出した。それは体が空中に投げ出される瞬間の冷や汗が噴き出る感覚だったり、今迄への後悔やこれからの恐怖だったり。思い出だったり。
左手で何か抱えて、あれって、そうだ……俺は俺の大切なものを守るために――。
なんで今まで思い出せなかったんだ、命を懸けて助けようとした、俺の大切な妹みたいな存在――。
聞き覚えのある声がした方を向く。顔を上げると。
石を切り出して作られたような漫画でよく見る広い戦いの場、その対面に日本にいたころの同級生と、巨人のような大男、蛇、グリフォンがいる。
そしてそのすべてを囲うように何段も高い位置に人影が多く見えた。観客だ、他の神だろうか。
その声には怒りを抑えるようにしていたが、顔からも声からもそれは伝わってきた。
「なんで、ここにいるんだ?」
「君が死んでから色々とあってね、僕も死んだんだ。それからは君と同じ道筋だと思うよ? 君はずいぶんと変わったようだね、……すまないあまり話をする気分じゃないんだ、はやく最初の駒をだせよ」
同級生はそういうと、グリフォンに指示を出し、舞台の上に送り込んだ。
使徒同士の戦いか、あんなのとこいつらが戦うのか。
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