第29話
心配してくれたのだろう、フェアの優しい一面が見れて俺は嬉しい。
大きな岩を持ち上げ蛇に向かって投擲を開始したのだろう。
「おお、なんという怪力だ」
獣人族達の驚きの声と共に多くの岩がこちらに飛んでくる。
ちなみにだが。
「全部尖ったとこが俺に当たってんだよ! 俺の事狙ってんだろ!」
サンドスネークのブロッキングが巧みなのか、それともフェアが狙ってるのか偶然か。俺にしか当たらない。
夢中で投げているのか、悪意があるのかその攻撃は止まないようで。
「羽虫にばかり任せてられませんね! 光よ!」
どうやらキュラも援護してくれるようだ。ニヤッと不敵な笑みを浮かべている。自信ありげだ。
なるほど、蛇は熱を探知しているらしい、それを使いライトで攻撃目標を変えたりするわけだな? 使えるじゃないか。どこに光を出しているんだ?
周りをキョロキョロと見渡していると。
「きゃ~、あの変態光出したわ!」
おいまさか。
「……なんで俺の股間が光ってんだよ! あれか! 魔法使い名乗るなって言ったの根に持ってるの!? やめろって!」
「あれはおにいの股間ビーム砲だよ! すごいビームが出るに違いないよ!」
「やめろお前! 同族がそんなこと言ったら信じちゃうだろ!」
こいつら役に立たないどころか足引っ張ってるじゃん!
「岩がなくなったの! ちょっと腕貸すの!」
えええ!? 仲間の腕千切って投げるとかマジ? キュラも抵抗しないしなんなの?
岩が飛んでこなくなり落ち着くとなにやら股間に刺激がある。
「嘘だろ蛇さん」
蛇の舌はドリルのようになっていて、光が気になるのか勢いをつける様に一度引かれると。俺の脳裏にしょぼい走馬灯が走った。
この世界に来てからろくなことねぇじゃん、まだ死ねねぇ!
ミミズ食ってたから焼けすぎないように加減してたがもうやめだ! やらせはせんぞお!
「ファイアーアロー!」
蛇の腹が一瞬膨れ上がり、口から煙が出ると、ぐったりと地面に倒れ伏した。
爆発四散しなかったか、よかった。
みんなの所に戻ると獣人族達が跪いていて。
「我ら獣人族はあなたを王と認め、忠誠を誓います。どうか庇護下に御置きください」
労働力を確保しに来たんだ。願ってもない。けど急にどうした?
「いいですよ、でもその話し方やめてください気持ち悪いんで。どうせなんか理由があるんでしょ?」
「いえ、強いものに従うのが本来の獣人族です。腕相撲にも負けましたし、虎獣人の長としてみなを守る義務があるのです。強いあなたに従うのは当然ですよ、肉食ですが良いでしょうか?」
「本来は獣王の町近くに住むのが基本なんですが、お父さんは嫌みたいで、なんでも幼馴染が獣王になったとかで」
「こらこらやめなさい、恥ずかしいじゃないか。しかし実を言うと食べ物も飲み水もなくて困っていたんですよ。まぁ最後は共食いしかないかなと覚悟してたので助かりました」
えっぐ。
「お前ら宴だぁ! サンドスネークをばらせえ! 久しぶりの御馳走だぞお! 血液を飲み干せぇ!」
「「「「「おおおおおおおおおお!」」」」」
サンドスネークに集る獣人族を他所にキュラとフェアは。
「みんな怪我がなくてよかったの! フェアたちのおかげなの!」
「ふふ、私たちにかかればサンドスネークごとき余裕ですね」
イキりちらしていた。
「おお二人とも素晴らしい活躍でした。さすが四天王を倒しただけのことはありますね」
やめて獣人族さん! こいつらを褒めないで! また調子に乗るから!
「しかし、サンドスネーク相手に無傷なんて普通あり得ません。英雄なんてもんじゃない、ネッコはなんて人を連れてきてくれたんだと思いましたよ」
「そうなのそうなの! あれ? ……フェアたちいるの?」
「ですね……一生たからせてもらいましょう!」
「だからおにいに任せたらいいって言ったんだよ」
臆病なイキリ妖精に、性格破綻者の無能吸血鬼、変な自信持ちのアホ猫獣人。こいつらを育てられる気がしない。
ため息をつきながら蛇の牙をへし折って女神に売ると一千万になった。
四本で一千万か、冒険者って楽そうだな。でも強い神だからか。
「!? 牙が消えたんですけどなにかしたんですか!?」
「こうやって売ったものの代わりに飯とか出してんだよ」
「な!? そんなギフトがあるならなぜ町で盗みをしないんですか!? 羨ましい」
こいつマジでダメな奴だな。
おい、なんだその手は。
「あの~、おこがましいようですが、私の取り分はどこに?」
「お前なんもしてないじゃん! むしろ邪魔だったけど!? 悪意あったよね!?」
「な!? 冒険者パーティーですよね!? 普通は四等分しますよ!? ほらほらはやく、と~り~ぶ~ん~」
こいついっちょ前に!
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