第16話

 フェアリー達はそれぞれ。


「きゃあああ」

「ちがうよ~」

「逃げろ~」


 など言いながら森の中に消えていった。

 幼女が舌打ちしながら呟いた、イライラしているのだろう。


「チッ、こっちの方向からだったはずだ」


 俺たちと目が合うと、キュラが怯えた様子で一歩引いていた。

 金髪ミディアムの幼女、見た目は可愛いな。


「知り合いか?」

「あの人は、名家の、四天王候補生学科主席、光のアリスです。なんでも強さを重んじる家訓があるらしく、男として育てられたらしいです。でもなんでこんなところに」


 名家? 男として育てられた? ……育て方間違えてるじゃん! ヤンキーになってるよ! グレてるよ! 

 アリスはキュラを見つけたのだろう、にやっと笑った。


「おうおう、吸血鬼一族の落ちこぼれキュラじゃねぇか、なんだ? 魔族の友達が出来ねぇからって他種族と仲良しごっこか? あぁ? なんでこんなところにいやがる」


 キュラは目をそらしつつも返答する。

 ビビってんな? あんな見た目幼女なのに。なんか誰かに少し見た目が似てる気が。


「て、ててて偵察ですよ人種の。あ、あなたこそなんでこんなところにいるんですか?」

「俺様の家にいきなりファイアーアローがぶち込まれた、あんなでけぇのは見たことがねぇ。おそらく大規模な合成魔法、それで飛んできた方角に来たらここに行きついた。で、何か知ってるか?」


 でけぇファイアーアロー? アリスが来た方向から逆には確か、俺が初めてこの世界に来た草原があるな。……家にあたったのか。


「ししし、知りません」

「チッ、役立たずが、まぁいい。妖精共をとっ捕まえて話でも聞くかぁ」


 探しに行く気なのだろう歩き出そうとしていた。

 俺のせいで迷惑かけるのはいかんよな。

 ついでに三人集まったことだし、もしかしたら使徒の力だめしに使えるかも。

 そう忘れていかん、俺の目的は使徒三人を育てることなんだよな。


「あの、それやったの俺です」

「あ? てめぇがその一人か? なんで俺様の家を攻撃した」

「一人というか一人ですけど、家に当たったのは偶然ですが」

「は? 一人であんなでけぇファイアーアロー撃ったのか? それで家に当たったのは偶然ってか?」

「はい」


 俺が頷くと、アリスは一度俯いて天を仰いだ。頭を掻きむしりながら。


「……ああああああああめんどくせぇええええええ! 人種にそんなことができるかよ! どうせ嘘だろうが! ヘタレ共は嘘しか言わねぇから嫌なんだよ……おいお前らこいつらを無力化しろ」


 ヤンキー座りをしてこちらを指さすと、後ろの木の陰から三匹の狼が姿を見せた。

 ヘタレ共って俺も入ってんのかな? 見た目は確かに可愛いけども。


「グルルルルルル」


 しかしキュラの態度が一変し、強者の威厳を見せた。


「クスクス、こんな狼程度で何が出来るんですか? 卒業してからの私を知らないようですね?」

「あんだと? たいそうな自信だなゴルァ、仲間が出来たからっていきがってんじゃねーぞカスが!」


 俺は戦いの動画を取るため後ろに下がりながらスマホを狼に向けた。すると、狼の説明文が画面に表示された。

 お? 女神の親切設計か? ゲームの魔物図鑑みたいな。

 画面には狼の見た目と【狼、スライムより、少し強い】とだけ書いてあった。

 うんゴミ情報量。

 俺はもうあいつに期待しない。

 そしてフェアが目ざとく俺の行動を見て言った。


「まさか怖いの? プププ、狼なんかに後ずさりしちゃってなの」

「俺は戦わないから下がっただけだ、狼の数とお前らの数も同じだし」

「ふふふ~ん、まかせとくの」


 こいつ羽毟られるとか言ってなかったか? 獣は苦手だと思ってた。

 キュラはまだ続けて言っているようで。


「ま、そんな愚鈍な狼程度に負けるはずがありません。あなたが来たらどうですか? もしかしてアリスさん私に……ビビってるんですかあああ?」

「そうなのそうなの! キャンキャン言わせてやるの! 逃げるなら今のうちなの! ざこ、ざ~こ!」


 すごいドヤ顔のキュラに、フェアも調子に乗っている。

 こいつらすごい自信だな。キュラには作戦があるのかもしれない。


「ネッコはどう思う?」

「? 聞いてなかった」


 こいつ頭空っぽかよ。


「キュラのあの挑発だよ。普通に考えて各個撃破した方が有利なのに、いきなりアリスと戦おうとしてるからな」

「知らな~い、早く戦いたい!」


 こいつバーサーカーかよ。

 アリスからまったく予備動作なく光の矢が発射された。

 それはキュラの頬を掠めて木に穴をあけて行った。


「あんまり俺様をなめない方がいいぜ、それに俺様が躾けた狼だ、楽に勝てると思うなよ。行け」


 狼は唸りながらこちらに走り出す。


「よし、いくぞみんな!」


 といいつつ、俺が戦う気はない、フリだけだ。三人の力を確かめるのが目的だからな。

 後ろに飛び退き、みんなの戦いぶりを観察する。

 すると。 

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