第44話

「キュラ、どうしても勝ちたい、秘策があるんだがやるか?」

「秘策ですか? 確かにあの強力なスライムに勝つには私の力が必要かもしれませんね」


 はぁ……。


「これにスライムの出来るだけ近くで火をつけるんだ、やれるか?」

「ふふ、それだけで勝てるならやってやりましょう! 魔法なんて使えなくても不思議な道具で強くなれるんですよ!」


 最後の使徒であるキュラは走った。いつも何もしないキュラが! 自信をもって!

 違法だが花火の火薬を集めた爆弾と、ライターをもち、不敵に笑いながらスライムの近くで火をつける。

 そして……。スライムは吹き飛び、…………キュラの頭だけが転がってきた。


「……おつかれ、初魔物退治だな」

「爆発して死んだんですが!?」

「お前なら大丈夫さ」

「大丈夫とは!? 全員戦闘不能ですよ!」

「……帰ろう、人の強さとは成長できることさ、お前等には期待してるよ」


 これが優しい嘘ってやつなのかな……。





 町に戻り乾杯だ!


「みんな! 初勝利を祝おう! 乾杯!」


 テーブルを囲み豪華な料理を用意するが、ネッコだけしか食いつかない。町に初めて来た人たちなら泣きながら美味しい美味いという料理をネッコがすぐにたいらげていく。

 いつもは出さないテンション高めの声でみんなの勝利を祝おうと思ったのに。


「「……」」

「どうしたお前等」

「何か言うことないんですか?」

「そうなのそうなの、フェアたちひどい目にあったの」


 何もないが? めんどくさいな、怒ってんのか?


「はいはい、よく頑張ったな。じゃあキュラにはこれな」


 スライム倒しただけで大げさに勝利を祝ってるのになんなのこいつら? 確かにキュラは神風させたけど。神だけに!

 仕方ないので金貨を置く。

 こいつには金を渡しとけば何とかなる。


「ふん! 受け取りませんよ! こんなことで許されると? 爆発特攻させておいて!」

「そうか、……じゃあ手を離せよ! 言動と行動を一致させろ!」

「! いつの間に!? 引っ込めようとするから勝手に手が!」


 拒否するので戻そうとしたがそれよりキュラが粘る力の方が強かった。なんだろう、こいつ結構力あるな。

 理性を取り戻したのか手を離したようだが。

 心って嘘つかないんだな、ほしいんじゃねぇか。仕方ない、あれをやろう。

 喉に手を当て魔法を発動する。


「おい、なんかこの金の顔動いてないか?」

「え?」


 視線がいったところで。


「俺、これからもずっとお前と一緒に居たいんだ。俺がいればお前は幸せになれるんだろ? お前を満たしてやりたいんだ。いいじゃねぇか、素直になれよ。キュラ、愛してる」

「!? お金が喋った!? ……私も愛しています! もう放しませんよ!」

「また俺のために、体張ってくれるか? そうしたら俺、もっとたくさんの愛をあげられるぜ?」

「はい、あなたはいくらいてもいい人ですからね」


 ……うん、これが本物の愛だな。

 金を抱きしめて涙を流す姿は実にこいつの性格を表してる。


「で、フェアはいつまで拗ねてんの? お前には漫画もゲームもアニメもなんでも与えてるつもりなんだけど」

「……漫画の感想言ってくれる人がほしいの」


 あ? そいやなんかイラストとか書いてたっけ。漫画を描くことにしたわけね。


「それくらいなら別にいつでもいいぞ? でも確かアリスとか趣味合う人見つけたんだろ?」

「アリスとは方向性の違いがあるの! 読んで感想を聞かせてほしいの!」

「ええ……まぁいいけど、……じゃあ今持って来いよ」

「! わかったの!」


 ふくれっ面はすぐに変わり、部屋に行ったのだろうすぐに飛んでいった。

 ちょうど暇になったタイミングで気弱そうな見張りをしていた男が近寄ってきて。


「すいません、これをあなたにと。失礼しました」


 手紙を渡された。


「なんぞこれ」


 委員長からと、クラスメイトたちからだった。

 とりあえず委員長の手紙の内容を読む。

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